裏切りの魔男

takupon

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異世界漂流編

異世界の闘い方2

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カレナが魁斗に武器を投げて、距離を空ける。
今は四戦目だ。リン VS 立夏、マリー Vs 小百合、ラミル VS 肇、カレナ VS 魁斗と行われている。三戦目までは言うまでもなく騎士団の圧勝であった。
一戦目の立夏は炎魔法と水魔法で相性が悪く完敗してしまった。
二戦目の小百合は契約している精霊がいないため、無属性の強化魔法だけで闘ったがマリーが強すぎた。彼女は四属性の魔法が使えるらしい。小百合の必死の攻防もあえなく破れてしまった。
三戦目の肇は剣に魔法を纏わせて操るという奇妙な闘い方をしていたが、異世界に召喚される前から剣で闘ってきたラミルに当然の如く敗北してしまった。ラミルが言うには、魔力の使い方がなってないらしい。
魔力とは人や動物、魔物にだって備わっている魔法の源だ。自分のスキルを使うときも魔力を用いる。魔力は使えば使うほど多くなる。ちなみに彼方の魔力は10000であった。これがすごいかはまた後程わかるであろう。
彼方は気を取り直し前の攻防戦に目を向けると、拳闘士と剣士の闘いが白熱している。カレナと魁斗が何か話しているがここからでは聞き取れない。

「魁斗って自分から団長さんと闘いたいって言ったんでしょ?それなのに、あんな防御だけだと団長さんがっかりなんじゃない?」

敗北してしまい、ぐったりとしている立夏がノロノロと近づいて来る。

「あれはカレナさんが強すぎるんだよ。さすがは最低強者の神憑りの切札トランスジョーカーの団長さんだ」

「やっぱり、王都でもあいつらの素行の悪さは有名なのか?」

「残念だけどね……」

肇も話に入ってくる。小百合はマリーに負けたのが衝撃だったのか、今は彼方の膝で寝込んでいる。よほどのショックだったのか、彼方に悪口を言うまでもなく膝枕を強要された。ここらへんは元彼氏だからなのか動きがスムーズであった。

「小百合ちゃん、私に代わって彼氏さんに泣きついてもいいんですよ」

攻撃魔法が使えず、回復担当の愛梨が口を尖らせながら不満をたれる。丁度、立夏の治療がおわったところであった。

「やめとけ、愛梨。ここで話しかけたらこいつは大抵機嫌が悪いぞ」

「……やっぱり羽倉ちゃんのことよく知っているんだね」

色んな思いが詰まった低い声で、肇が確認を取る。元彼氏と今彼氏が同じグループにいると、嫉妬が起こるのは普通だ、と彼方は考えている。
なので、

「小百合とは魁斗の次に長い付き合いだからな。彼氏さんが気にすることじゃないぜ!」

彼方はあえて煽るスタイルであった。肇が気に障ったのか口を開こうとするが、それを察した立夏が彼方と肇の間に割って入る。

「ほ、ほら試合見ようよ!見てあげないと魁斗が拗ねちゃうよ!」

ナイスタイミングできた立夏の意志を尊重しつつ、厚意に甘えることにする彼方。肇も同意見なのか話しを切り上げるように前を向く。
強化魔法を使った拳で殴りにかかるカレナに、剣で相対していいか悩む魁斗のおもしろい攻守が見える。戸惑っている魁斗に、隙あり!、とばかりにカレナが正拳突きを決める。盾で防ぐが、盾もろとも吹き飛んでいく。
最低騎士団の完勝であった。

「なんや勇者てこんなもんかいな!うちはがっかりやで!」
 
破顔しながらぐったりとしている勇者共に笑いかける。





※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※





「うちの相手は自分やな。名前は魁斗やったな?よろしゅうな」

騎士団の頂点にいる騎士団団長と闘えるという現実に身体が浮きだつ。緊張してないわけがない。握手を求められているのは分かるが、腕が痺れて動かない。 
それに勘づいたカレナが陽気な笑顔を向け、魁斗の肩をバシバシと叩く。

「そんな緊張しんくてええて!これは遊びみたいなもんや!」

大阪のおばちゃんみたいで絡みやすいところに、魁斗は内心で感謝する。

「はい、よろしくお願いします!」

調子を取り戻す魁斗に武器を渡し、距離を取ったところで四戦目が始まる。
審判のラミルの合図と共に、盾を押し付けるように、突進する。カレナはくびれた脚で踏み込むと、魁斗の上を飛び、背後から拳で殴りにかかる。純粋で無垢な一撃は全てを置き去りにする。いち早く気づた魁斗はもう一方の手にある剣で死守する。衝撃に右腕がジンジンと痛むが、お構いなく攻撃の嵐がくる。

「カレナさんは、なんで彼方に執着しているんですか?異世界人だからというわけじゃないでしょ?」

気を紛らわせるためにカレナに話しかける。聞いたのはずっと気になっていた彼方の事情だ。
すると精神的攻撃に弱いのか、顔をあからさまに赤面させる。

「い、いや、ちゃうて!彼方の顔とか仕草に一目惚れした分けちゃうからな!初恋やからて優しくするように団で保護してる分けちゃうしな!ほんまやで!!」

聞いてもいないことまでスラスラと語りだす。彼方の事情を知った魁斗は、凄い人に惚れられたな、と心の中で思いながら彼方を視界に捉える。彼方はこちらの試合を見ず、小百合に膝枕をしながら立夏と楽しそうに話していた。必死にカレナの拳を防いでいるのに、それを応援せずだべっているのだ。
魁斗は彼方達に対する怒りを剣に携えて攻撃をしかける。まさに八つ当たりだ。

「なんや、攻撃できるんや!その調子で来てや!」

態勢を整え、攻撃を防ぐカレナは魁斗の動きに純粋な笑みを浮かべる。

「自分は好きな人いるん?」

次は相手が精神攻撃を仕掛けてくる。

「います。多分、そいつは彼方のことが好きなんですよ。だからカレナさんが彼方を惚れさせたらそれ、俺は万々歳なんですよ」

「それなら、うちらは仲間やな。お互い頑張りまひょ!」

それを最後にカレナは強烈な一撃を咬ます。盾で防ぐが、盾もろとも吹き飛んでしまう。今の今まで手加減をされていたのだ。訓練所に試合のラインを優に越えてはじけ飛ぶさまは滑稽以外のなにものでもない。

「なんや勇者てこんなもんかいな!うちはがっかりやで!」

新しい仲間ができたのを喜ぶように顔をにやけさせる。
そこで、





「よし、ほなら、わいが一戦交わせてもらいまひょか。新人勇者になるか分からないんやけど、勇者代理として、あんさんを打ち負かしたたろやないか」





同じ異世界人をコケにされたのが気に障ったのか、彼方が笑みを見せつけながら大阪弁で声を上げる。絶対に楽しんでやがる、と分かってしまう魁斗達だがみんな黙り込む。彼方がやると決めたらやる男だと知っているからだ。
彼方がカレナを誘う。

「シャル・ウィ・ダンス?」

英語がこちらの世界で通じるのかと疑問に思う異世界人組であったが、それはすぐに解消される。

「エスコートよろしゅうな?!」

彼方の差し出された手を掴む。二人ともノリノリである。
誰かがそっと呟く。





似非勇者エセヒーローの時間だ」
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