意味不明小説集『羊の匣』

黑野羊

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消された側の僕ら

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 マンガとかでさ、よくあるじゃん。

『タイムリープ』

 主人公とか主人公に近しい誰かが、特殊能力で時間を巻き戻すってヤツ。

 ぼくはそれに遭遇したことがあるんだ。

 それはまー、びっくりしたよ。
 キズだらけになったアイツは、病室のベッドで突然
「こんなはずじゃなかった」
「ごめん」
 なんて、中二病かな?って発言したから、頭も検査した方がいいんじゃないと本気で思った。

 でも、アイツは泣きながら銀色のブレスレットを触った。
 すると身体が眩しく光って、ぼくは眩しさに思わず一瞬目を閉じて、
 そしたら、アイツは消えて居なくなってた。

 意味がわからなくて、ぼくは空っぽのベッドを見つめたまま呆然としていた。
 が、
 何が起きたのか、それはすぐに分かった。

 病室の窓から、空の向こうからやってくる大きなブラックホールが見えたからだ。
 遠くに見えていた建物がどんどん吸い込まれていって、世界の消滅が始まった。

 アイツは主人公で、
 ぼくはその脇役にすぎなかった。

 それだけのことだし、
 このなんとも言えない悲しみと辛さも、
 巻き戻った世界のぼくは知らない。

 だから、ぼくらのことは気にしないで欲しい。

 主人公たちへ、
 消された側のぼくらより。
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