十七歳の春、不本意ながら魔法使いの妻になる

さくらぎしょう

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7. 強引な魔法使い④

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 こいつは魔法使いではなく吸血鬼の類だったのではないだろうか。

 そう思えるほどに、セラはキスをするたび体力が回復しているようで、いつの間にか私の上にまたがり覆い被さった状態で私の唇を食べつくしていて、私の両手は逃れられないようにセラに拘束されていた。

 うっすらと目を開ければ、彫刻のように美しい造形の美青年が、頬を赤く染めていた。
 
 思わず胸がドキッと跳ねた。

 まさか……セラも緊張してる?

 セラが息を漏らしながら私を求める様が、魅入るほど美しく、目が離せなくなった。

 これは……ラッキーかも…………。

 と、頭をよぎってしまう。

 いやいや、よぎるな。この顔にほだされるな。

 満足いくまでキスをし終えたセラが、私の唇からゆっくりと離れていった。

 だけど、まだ私にまたがったまま、上がり切った息を整えながら、艶っぽい視線で私を見降ろしていた。 
 
 その瞳の色は、出会った時以上にみずみずしさを増した新緑の色に輝いていた。

「ありがとう……助かった……」

「ど……どういうことか……説明して……回復方法って、毎回これ?」

 お互いにまだ言葉の合間合間に息継ぎが必要だった。

「毎回じゃない。今は緊急だったんだ。こっちにも人工呼吸ってあるかな?」

「海で溺れた人にマウストゥマウスで肺に息を送るあれなら」

「そう、それ。今回も、魔法使いを救う人工呼吸をしたと思ってくれたら的確。
 キスがなかったら死んでた」

「魔法使いは魔力が無くなるたびに誰彼構わずキスをするの?」

「するわけないよ。誰でもいいわけじゃないから」

「誰でもいいわけじゃない?」

「だから、トーコに僕の奥さんに、聖配になってもらったんだ。聖なる配偶者で聖配ね。
 魔法使いは魔力が生命力と直結してるみたいで、無くなると死んじゃうんだけど、独身の魔法使いは魔力が減れば、ポーションを飲むか、教会で聖女様に魔力を回復してもらうんだ。

 聖配と結ばれたあとは、その聖配と肌を重ね合うことでも魔力回復出来るようになる。愛の力は偉大で、一番強力だから。
 この世界にポーションも聖女もいないなら、聖配しか僕を救えなかった」

「肌を重ねる!? でっ、出来ないからね、それは!! そもそも私達愛し合ってないし!!」

「体裁があるだけで効力発揮するんだよね。それは婚姻届も一緒でしょ?
 それと、今回はポーションがないことを知らずに力が無くなるまで使っちゃったけど、少しの回復なら手を重ねてくれるだけで十分だから安心して」

 セラはにっこりと微笑み、左手の薬指を見せてきた。そこにはうっすらと青白く光るリングが見えた。
 嫌な予感がして、自分の左手を見れば、同じものが薬指で輝いていた。慌てて何度も指輪に触れようとするが、実体がなく透かすばかりで触ることができない。

「あ、念のため、カイリ様には僕たちが結婚したことは内緒にしておこう」

「それには大賛成」

「だから、指輪は隠した方がいいね」

 セラがパチンと指を鳴らせば、私達の薬指に輝いていた指輪は消えた。

 そしてセラは、私の頭をくしゃりと撫でた。

「回復完了」

 セラは天使の微笑みをみせてから、部屋を出て行った。

 目が覚めたら、これが夢でありますように……。


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