溺れるカラダに愛を刻んで【完結】

山葵トロ

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 「あのね、僕が聞きたいのは、ここ数か月間、本当に君がそんな生活をしてきたのかっていうこと 」

 「……お説教だったら、聞かないわよ? 」


 口唇の端を持ち上げて歪んだ微笑みを浮かべると、浩峨が眉を顰めた。



 「それで、貴方はどうするの? 私を抱く? 」


 挑むように顎を杓れば、まっすぐな浩峨の視線とかち合う。


 「……抱かないって僕が言ったら、君はここから出て行く気だね? 」

 「そうね、そうなるわね 」

 「出て行ってどこへ行くの? 」

 「お金が無いから、先ず今夜泊めてくれる人を探すわ 」

 「泊めて貰って、そいつにも身体を許すの? 」


 どうしてそんな当たり前のことを聞くのだろう? そして、私はどうしてこんなに苛々しているんだろう。


 「何んなの、一体! どうせ貴方には私を抱く気なんて無いんでしょう? だったら関係ないじゃない! 」

 やけに腹が立って怒鳴れば、眉を顰めたままの浩峨が大仰にため息を吐いた。


 「何よ…… 」

 「全く君って子は…… 」言いながら、自分の頭をぐしゃぐしゃと掻き回す。


 ハラリと落ちた前髪の間から覗く漆黒の瞳が、飴色に色を変えるのが見えた。


 「折角優しくしてやってんのに、何が気に入らないんだかさっぱり分かんねぇよ 」


 初めて聞く低音に、ゾクリ……と、美花の背中を冷たいものが走る。


 「たち…… 」

 「……分かった 」


 分かった……?


 そう言うと、つかつかと美花に近寄り、ドンと肩を押す。
 呆気に取られていた美花は、よろめいてそのまま後ろのソファーに倒れこんだ。


 「な、何する…… 」

 「何するって、セックスだろうが。美花ちゃんが自分で言ったんだろう? 」


 部屋のライトの逆光の中、浩峨の瞳が冷たく光る。呆れたような浩峨の声を、美花は怖いと感じた。


 もしかしたら私はこの男を見くびっていたのではないだろうか。

 優しそうな容姿と、柔らかい物腰に高を括って……。


 「あ…… 」

 美花が何か言おうとした時だった、浩峨が何故かキッチンへと足を向ける。
 けれど、ホッと息をしたのも束の間、直ぐに何かを取って戻って来ると、それを大きな身振りでブワッ……と美花の上にバラ蒔いた。


 「……っ?! 」

 「それで、美花ちゃんを買ってやるよ 」


 ヒラヒラと舞い降るそれは、何枚もの紙幣。


 「どうせ、全部お前にやっていいと思っていた金だ 」


 ギシ……とソファーの音を立てて、男が自分にのし掛かってくる。
 ふっと耳に掛かる吐息。 ぶるっと全身が震えた。


 「一度抱いたら離れられなくなるくらい、いい身体してんだろ? どれだけ楽しませてくれるんだろうね 」

 手に残っていた一枚を美花の手に握らせ、スライドさせた手で手首を拘束する。

 「ちょっと、待っ……っ?!」


 身動き出来ない状態まで追い込まれていると気付いて慌ててもがけば、首筋に突然鋭い痛みが走った。


 「く、……んっ! 」

 「ごめんね、痛かった? でもね、……これからだから 」


 美花が涙の滲む瞳で見上げると、浩峨がペロリと見せ付けるように口唇を舐める。
 冷たい微笑みにゾクリとして、美花は青くなりながら息を詰めた。


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