溺れるカラダに愛を刻んで【完結】

山葵トロ

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 でもだからって、今更引けやしない。


 「好きに、すればいいでしょ…… 」美花が眦をきつくすれば、少しだけ驚いた表情を見せて「いいね、そうでなきゃ 」と、男が目元を細めた。

 





 「あ、いや……ぁ、んっ 」

 「どうしたの? まだ触ってなかったのに下着がぐしょぐしょだよ」


 プクリと熟れさせた胸の尖りを舌先で弄びながら、長い指が布地の上から敏感なラインを伝う。

 「胸だけでこんなになっちゃってるなんて、美花ちゃんはどれだけ淫乱なの 」


 「違っ……! 」

 言いながら甘く歯を立てられて、反論さえ出来なくなる。
 せめてもと重い頭を緩く振ると「嘘つき」と、浩峨が笑った。


 嘘じゃない……、自分でも分からない。こんなになってしまって、怖いのは自分の方だ。
 けれど、言い返す言葉は全て喘ぎ声に変わってしまう。


 「肌、白いね。綺麗に跡付く 」

 首筋から鎖骨、胸元に掛けて散らされる幾つもの所有の印。


 「これでもう、暫くは他の男の所には行けないね 」

 「アンタに、なんか……」

 「アレ、まだ懲りてないの? 僕んとこ居た方が、美花ちゃんにも色々と都合がいいとおもうけど? ……まぁ、さっきので足りなかったら言って 」


 本当にこの人は、私を買うというのだろうか? ……本当に?

 焦らしていた指がスルリと侵入してきて、美花の身体がビクンと跳ねた。
 人差し指と薬指で開かされた場所は、くちゅくちゅと音を立てて節高な指に容赦なく擦り上げられる。

 待っていた快感は思ったよりも激しくて、だらしなく開けた半開きの口からは切ない吐息が漏れた。

 「あ……、あ…… 」

 「……僕だったら、誰よりも優しくしてあげられるよ? 」

 囁く掠れた声は、まるで痺れ薬のようだ。耳孔から鳩尾に落ちて、あまく広がり、思考能力を奪う。

 どうしていいのか、分からない。見せたくないのに、全てを明け渡してしまいたくなる。

 「もうすぐでしょ? 諦めなって 」

 もうすぐって、何が?


 男の言っている意味が分からない。だけど、得体の知れない怖いものが近付いてきているのは分かる。

 緩やかに、背骨を溶かしながら這い上がってくるあまいもの……。


 「や、いや……、もぉ…… 」

 「もう、出ていくなんて言わないよね?、ここに居るでしょ? 」

 感情とは裏腹、高みまで押し上げられていくどうにもならない感覚に美花はイヤイヤとかぶりを振った。


 「強情だね。 言わないと、ここでやめちゃうよ? 」

 ーーー違う!


 意地悪な言葉に潤んだ瞳を開けば、目の前の艶冶な表情とかち合う。
 重なった視線、気付いた男は艶やかに美花に微笑みかけた。


 「……ここにずっと居るだろう? 」

 答えは分かりきっているというような言い方。
 悔しくてそっぽを向けば、ふっ……と男が笑う声が聞こえた。


 「美花ちゃんは、可愛いね 」

 「…… 。」

 「でもね、君は全部知っているようでいて、実は何にも知らない 」

 「な……! あっ…… 」

 オクターブ低くした声音と含みのある物言いに、美花は言い返そうとする。
 しかし、指が動くのと同じに聞こえる湿った音が段々に速くなり、心の半分がどこかへと飛んだ。

 無意識に空に伸ばしたじんじんと痺れる指先が、未だ着衣を乱していない男の胸元を掴む。


 「やっ、あぁ……っ 」

 「すごく溢れてる……。 そんなに気持ちいいの? 」

 おでこに貼り付いた髪を剥がして、男がやんわりと美花を大きな腕の中に包み込んだ。
 まるで、愛しい者を抱くような優しい温もりに、切ない快感が全身を満たす。


 だめ……。 頭の中、真っ白になる……。


 「あ、あ…… 」

 無理矢理高みに引きずり上げられ、放り出されて、これがどういう情況なのかも分からずに、美花はガクガクと身体を震わせながら、ただただ涙を溢して男の胸に縋りついた。

 そして男は……、浩峨は、途方に暮れた気持ちになりながら吐息して、いつまでも美花の頭を撫でていた。









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