18 / 74
2.
3-3
しおりを挟むどうして、この人の為と認めてしまったのか……。
きっと、この人があんな失敗作を躊躇いなく口にするから、驚いてしまっただけ。
あの後も、普通にあの焦げたシチューを夕食にしようとしようとした浩峨を美花は怒りながら、必死に止めた。
「えー、美花ちゃんが折角作ってくれたのに勿体ないよ。 これはこれで…… 」
「馬鹿言わないでよっ! こんなの食べたら、お腹を壊すわよっ! 」
ガリガリに固いのは、人参だけではない。 それに、ビーフシチューのような色合いになってしまったクリームシチューなんて、見るからに人間の食べ物ではない。
出来るなら、鍋の中のどんよりとした物体を、今すぐに目の前から消去してしまいたかったのだ。
……これだけは、絶対に引けない。
結局、暫しの言い争いの後、「しょうがないなぁ 」と、最後に折れたのは浩峨の方だった。
けれど、安心したのも束の間、交換条件を提示される。
「……じゃあさ、明日また作ってくれる? 」
「明日? 」
さっき、教えてくれるって言ったくせに……、不安な気持ちが表情に出ていたのか、直ぐ様、浩峨が美花の頭を撫でてきた。
「僕ね、明日は仕事が一応、休み 」
「休み? 貴方の仕事、休みがあるの? 」
本気で驚けば、浩峨がぶっ……と吹いた。
「ひどいなぁ。僕の勤めてるとこ、どんだけブラックなの? 」
「だって、仕事に行かない日なんてないじゃない 」
「いや、今までも休みはあったんだよ? 呼び出されて出て行ってただけで…… 」
ポリポリと頭を掻くと、体裁が悪いのか段々に語尾が小さくなる。
「だから、明日も《一応》ね 」
「それのどこがブラックじゃないっていうの? そもそも、貴方の仕事って何? 」
ずっと、持っていた疑問。きっと、こちらから聞かなければ、この人はずっと言わないに違いない。
「アレェ? 言ってなかったっけ? 」
「言ってないわよ 」
トボけたフリをした後、浩峨はニヤリと笑いながら片目を閉じる。
そして、言いたくないのかと思っていたのに、美花が想像していたよりもアッサリと白状した。
「……橘 浩峨、探偵さっ 」
◆◆◆◆◆◆
探偵……。
昨夜から幾ら考えても、モヤモヤとしたイメージしか湧かない。
あの独特な形の帽子と二重になったマントを着ている人物。
「ねぇ、やっぱりよく分からない。 探偵の仕事って、どんなことをするの? 私、シャーロック・ホームズくらいしか思いつかないわ 」
「うーん……、まだそんなこと考えてるの? 」
「だって、気になるのよ 」
「……あのね、美花ちゃん。 日本には小さな子どもも知ってる、ホームズさんよりも有名な名探偵がいるんだけど 」
「そうなの? 」
手に取ったじゃがいもを吟味しながら、浩峨が苦笑いする。
これから改めてシチューを作る為に、二人で近くのスーパーに買い出しに来ているのだ。
「そうか、美花ちゃんも深窓の令嬢だったんだよね 」
『も』という語句が引っ掛かって、ムッ……とする。
誰のことを言っているのか、直ぐに分かってしまったから。
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる