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しおりを挟む「変な奴……?」
『そ、そうなんだ。下に車停めてたら、邪魔だからどかせってイチャモン付けてきやがって、うるせぇって言ってやったらいきなり……っ! 』
突然、電話の向こう側から聞こえるドカンッ!という、破壊音。
『おまっ! 何してくれてやがるっ! うわ、わ……、凹んじまったじゃねぇかぁ!! 』
続く市之宮の絶叫に、美花は唖然とする。
けれど、止める市之宮の声に反して、ドカドカという激しい音は途切れない。
『やっ、やめろっ! 聞こえないのか!! 』
市之宮自慢のぴかぴかに光った真っ赤なボディのスポーツカー。
悲壮な声に、今、宝物の車がどうなっているのか頭に浮かんだ。
『お前……っ! こんなことしてどうなるか分かって……っ?!えっ、お、おいっ 』
『この電話、少し貸してね 』
突然、耳に響く聞き慣れたふんわりとした声に、美花はビクン……と身体を震わせる。
『もしもし、美花ちゃん? 今、家? 』
『あ、はい…… 』
『良かった……。 じゃあ今からすぐに帰るよ、そのまま家で待っててね。ついでにお客さんも連れていくから、お茶の用意もしておいて……、ほら、君はそこの駐車場にこのボロ車とっとと入れる 』
『……っ!? ボロって、お前が言う…… 』
聞こえる市之宮の声が途中で、通話が切れる。
ツーツーツー……と耳元で聞こえるビジートーンに、美花は茫然とした。
何? 何が起こったの? どうして、浩峨さんが市之宮と一緒にいるの……?
いくつものクエスチョンに、美花は頭がぐちゃぐちゃになる。分かるのは……。
そして次の瞬間、美花は、サァッ……と自分の血の気の引く音を聞いた。
あの人、なんてことしてるの!? 自分が何してるか分かってるの? こんな、取り返しがつかなくなるようなこと……。
うろうろと部屋の中を無意味に歩き回る。噛んだ指の背に、きつく歯の跡がついた。
「どうしよう、どうしたらいい……。 あっ 」
美花は、さっき浩峨の言ったことを思い出す。
「お茶の用意しといてって、言ってた…… 」
浩峨はこの部屋に、市之宮を連れて来る気なのだろう。
話をするのだろうけれど、浩峨がこれからどうするつもりなのかも、何をするつもりなのかも、美花には見当もつかない。
一体どうなってしまうのか、市之宮の手から浩峨さんを守るのに自分が出来ることは何か……。
とにかく心を落ち着かせる為にも、今するべきことをするべく、美花はキッチンへと向かった。
電気ケトルはあるのに、あまり好きではない浩峨に合わせて、使い込まれたヤカンに火にかける。
ポットには、ティースプーンで茶葉を人数分プラス1。 浩峨に教わったお茶の淹れ方。
けれど、カップを用意しようとして、ここには浩峨と自分の物のマグカップが二つしかないことを思い出す。
どうしたものかと思案していると、インターフォンの大きな音が静かな部屋に響いた。
思っていたよりも彼らが着くのが早くて、美花はその場から飛び上がった。
どくどくと鳴る胸を、上からぎゅっと押さえる。
しかし、お茶を淹れることで、あんなにがくがくと揺れ動いていた気持ちは、どうにか先程よりはおさまっていた。
まさかとは思うが、もしかしたら浩峨はそこまで考えていたのかも知れない。
『美花ちゃん、開けてー 』
「は、はぁー……いっ 」
外から声が聞こえる声に、美花は慌てて玄関に走って行くと、ドアノブに飛び付く。
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