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7話 洞窟深部の秘密
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初めに視界に入ったのは崩れた天井だった。
どうやら気を失っていたらしい。
ゆっくりと身体を起こし、周囲を確認する。
スライムは一体どこに行った。
辺りは瓦礫だらけ。
どこを見渡してもそれらしき物は居ない。
更にこの空間が全く知らない空間だということに気付いた。
大きさは先程までの部屋と変わりはない。
だが、内装が全く違う。
土や岩で構成されているはずの洞窟とは思えない光景が目の前に広がっていた。
とても自然に出来たとは思えない像、そして、色合いは質素ながらも神々しい貫禄を誇る建物……
「ここは……神殿、みたいな雰囲気……」
「ふむ、やっと目を覚ましたか」
「メア……?無事だったのか!よかった……」
「馬鹿を言え。よく見よ。無事ではあるがここからの脱出は少々困難かもしれぬぞ」
メアはまだ疲れが残っているのか、瓦礫に背を預けたまま動かない。
空太は言われた通りもう一度落ち着いて周りを見回す。
雰囲気以外別段変わった所は無い。
いや、あった。
この空間には出口が無い。
正確には天井の穴以外に。
だが、天井の穴は高すぎて登ることは不可能だろう。
脱出不可能な地下空間。
おまけに食料も無いときた。
詰んでいる。
空太の諦めに勘づいたメアはゆっくりと立ち上がった。
「諦めるのはまだ早いじゃろう。この周囲は余が見て回ったが何も無かった。じゃが、ここにはまだあるじゃろう」
「そうか、あの建物……でもサイズ的には1階建てだろうし……」
「そんなもの、見てみれば分かるじゃろう。行くぞ」
そう言い放ったメアは建物の方へ歩き始めた。
空太は慌ててメアに着いて行く。
恐らくメアの体力は完全に回復していない。
それに、あの黒いスライムがいるかもしれない。
単独行動は自殺行為だ。
あの建物はかなり不気味な感じがする。
まずこんな地下にある時点でおかしいのだ。
深く考えるだけ無駄なのかもしれない。
少し考えていた間にメアは建物の目の前に到着し、その扉に手を掛けていた。
メアは空太に視線で合図を出す。
「準備は出来ているな」と。
空太はその合図に大きく頷き、左腰に右手を伸ばした。
扉が勢い良く開かれる。
そして……
「あれ?メア!雷切置いて来た!」
「何!?馬鹿かお主ッ!扉はもう……」
時既に遅し。
「「うわぁぁッ!」」
空太とメアは引き込まれるように建物の中に入り込んだ。
同時に扉が閉まる。
ゆっくりと立ち上がったメアは尻餅をついたままの空太を睨みつけた。
空太は目覚めた時点で腰に雷切を下げていなかったのだ。
そのまますぐにメアを追いかけたせいで完全に頭から抜けていた。
雷切が未だ瓦礫の山の中にある事を2人は知らない、知る由もない。
しかし、メアが空太に小言を言い始める前に事は動いた。
空太とメアの正面、扉と逆の方向から激しい光の玉が現れる。
それはそのまま地面にぶつかって消える。
次の瞬間、巨大な魔法陣が回転しながら現れた。
2人とも呆気に取られて動けない。
この世界に超能力はあっても魔法は存在しない。
それなのに目の前の現象は魔法そのもの。
これに動揺してしまい、ただ見ているだけしか出来なくなったのだ。
「空太、扉は開くか……」
「いや、開かない……」
「そうか……ならば余1人でやるしかないか……」
「俺、武器無しでも戦えるんだけど……」
「なッ!それを先に言わんか!構えよ、来るぞッ!」
「言う機会無かっただろ……」
一際激しい光と共に魔法陣から現れたのは2体の人型ゴーレム。
一見貧弱そうなゴーレムはそれぞれ形状が違う。
どうも男と女の形を模しているらしい。
空太は違和感を感じた。
このゴーレム達、どこか見覚えがある気が……
いや、このゴーレム達は……ッ!
空太が違和感の正体に気付き、メアに知らせようとするよりも前に、メアは行動を開始していた。
メアの両腕が赤色に発光、地面から幾本もの針が迫り上がる。
それは容易くゴーレム達を貫く。
はずだった。
「メア、そのゴーレム達は……ッ!」
「な……ッ!」
1歩遅かった。
メアの足元から幾本もの針が迫り上がった。
空太は何とかメアを抱えて回避する。
ゴーレム達も全く同じ動きで針を回避している。
もう分かっただろう。
このゴーレムは空太とメア。
正確には2人の能力をコピーし、付与されたゴーレムなのである。
メアも気付いたらしく、表情を曇らせている。
恐らくこの神殿から逃げ出すには、このゴーレム達を倒さなければならないだろう。
戦いばかり、やってられないな……
空太は心の中でそう悪態をつき、拳を握った。
空太をコピーした男型ゴーレムもほぼタイムラグ無しで同じ構えを取る。
勝機は敵が自分の行動をコピーする事で生まれる一瞬のタイムラグ。
「メア、援護は任せる」
「誰に命令しておる。そんな容易な事、とっくに理解しておる」
「頼もしいな……行くぞッ!」
空太の足が地面を抉る。
同時に男型ゴーレムの足も地面を抉る。
恐らく身体能力も同じ。
体力が無くなる前に仕留めなければならない。
空太とゴーレムの距離が一瞬で詰まり、お互いの右腕が衝突する。
あまりの勢いと威力に、地面に放射線状の亀裂が走る。
やはり攻撃力は互角。
続く2撃目は拳の勢いを残した回し蹴り。
もちろんゴーレムも同様の行動で向かい撃つ。
再び激しい衝撃。
地面の亀裂が更に深まる。
だが、次の瞬間には地面の亀裂が再生し始めていた。
やはり壊して脱出も不可能。
空太は一旦ゴーレムと距離を取る。
しかし、ゴーレムはそうしなかった。
「ぐあ……ッ!」
空太が『ゴーレムは自分の行動をコピーして動いている』という勘違いから生まれた油断と隙。
ゴーレムはそれを狙い、空太の鳩尾に強烈な拳を抉り込んだのだ。
紙のように吹き飛んだ空太は壁に激突し、激しく吐血しながらその場に倒れた。
恐らく骨は数本砕け、内臓も破裂もしくは損傷しているだろう。
瀕死状態という言葉が最も正しい表現だ。
メアはその一連の流れを全て呆然と見ていた。
見覚えのある光景だ。
かつてヤツがメアの国を滅ぼした時と同じ光景だ。
消さなければ……こいつを消さなければ……!
地獄の炎のように燃え上がる復讐心がメアを操作する。
「消してやる……貴様だけはァッ!」
メアは無言で右手を突き出した。
能力が発動し、男型ゴーレムを一瞬で串刺しにし破壊した。
メアの行動と同時に右腕を輝かせていた女型ゴーレムの能力は発動しなかった。
なぜなら、メアの能力は左手でも発動していたからだ。
右手で男型ゴーレムを攻撃、左手で自分の周囲の空間を固定した。
空間固定を行えば、メアと同等もしくはそれ以上の力が無ければ空間操作は行えない。
復讐心に燃えるメアは覚醒状態。
この建物に入った時と全くと言って良いほど戦闘力が違う。
再び振るわれたメアの右手により、女型ゴーレムの首が飛んだ。
「はぁ……はぁ……そうだ、空太……」
ようやく落ち着きを取り戻したメアは空太の元へ向かった。
空太は虚ろな瞳で天井を見つめており、急いで手当をしなければ絶命は確実だ。
だがメアに治療のノウハウは無い。
メアは焦りを感じていた。
元々この男は目的の為の駒でしかない。
それなのになんだこの気持ちは……
馬鹿で間抜けで戦いしか役に立たぬこんな人間に……
結局余の『呪い』の餌食なるのか、この男も……
一体どうしてしまったというのだ。
余はずっとあの場所で駒を待っていただけのはずだったのに……
余は……寂しかったのか……?
いや、違う。
余はこいつを駒としか思っていない。
まだ目的を果たしていないから惜しいと思っているだけ。
そうに決まっている。
ならばこいつを助けなければ。
少々、いや、かなり嫌だが仕方ない。
「奥の手を使ってやるか……」
メアはそう言って目を瞑り……
そして空太の唇に自分の唇を重ねた。
すると、空太の身体が紫色に輝き始める。
傷が癒え、血が浄化されて体内に戻っていく。
回復と表現するには生易しい。
これはれっきとした再生だ。
メアは唇を離すと、自分の指で自分の唇に触れた。
その頬は微かに赤色に染っていた。
----------------------------------------------------------
空太は深く微睡んでいた。
最後の記憶はゴーレムに吹き飛ばされた所。
そうか俺、死んだのか……
ぬるま湯に揺蕩っている様な不思議な感覚に包まれながら、空太は考えを巡らせた。
結局何1つ成せずに終わってしまった。
俺は一体何の為に……何の為に強くなったんだろう。
『そんなの簡単だろ~?復讐する為さ。お前は復讐する為に力を得た。今までお前を苦しめてきた奴らにな~』
『何か』が空太に口を挟んだ。
違う、俺は復讐する為に強くなったわけじゃない。
俺は誰かを救いたくて強くなったんだ。
無能力でも平和に、幸せに暮らせる世界を作る為に。
『いや、違うなぁ。それは建前だろ~?本当はお前を無能と罵ってきた奴ら、世界が憎くて憎くて堪らないんだろ~?』
違うって言ってるだろッ!
俺はあいつらを恨んでなんかッ!
恨んで……なんて……
『奴らがお前にしてきた仕打ちを忘れたわけじゃないんだろ~?嫌がらせの数々、暴力だってなかったわけじゃないしな~?』
そんな事関係無い……ッ!
俺はこの世界を……この世界のルールを作り直すんだッ!
平等な世界にッ!
『イヒヒッ!圧政者を倒して世界を革命した人間も圧政者に成り代わるって話、知らねぇわけじゃないだろ~?平等を歌うお前も、今の世界の支配者と同じに成り果てるぜ~?』
じゃあどうしろって言うんだ!
どうしようもないじゃないか!
俺達無能力者は差別され続けろと言うのか!
『俺様と手を組め~。そしたらお前が望む世界に導いてやるぜ~?おっと、話はここまでみたいだな~。お前のお迎えが来たみたいだぜ~?』
お迎え……?
お前は一体何者なんだ……!
『名は無いさ~。また会おうぜ~?』
ジェットコースターの急降下に似た浮遊感が空太を襲う。
目の前が真っ白に染まる。
そして、空太は現実世界で目を覚ました。
どうやら気を失っていたらしい。
ゆっくりと身体を起こし、周囲を確認する。
スライムは一体どこに行った。
辺りは瓦礫だらけ。
どこを見渡してもそれらしき物は居ない。
更にこの空間が全く知らない空間だということに気付いた。
大きさは先程までの部屋と変わりはない。
だが、内装が全く違う。
土や岩で構成されているはずの洞窟とは思えない光景が目の前に広がっていた。
とても自然に出来たとは思えない像、そして、色合いは質素ながらも神々しい貫禄を誇る建物……
「ここは……神殿、みたいな雰囲気……」
「ふむ、やっと目を覚ましたか」
「メア……?無事だったのか!よかった……」
「馬鹿を言え。よく見よ。無事ではあるがここからの脱出は少々困難かもしれぬぞ」
メアはまだ疲れが残っているのか、瓦礫に背を預けたまま動かない。
空太は言われた通りもう一度落ち着いて周りを見回す。
雰囲気以外別段変わった所は無い。
いや、あった。
この空間には出口が無い。
正確には天井の穴以外に。
だが、天井の穴は高すぎて登ることは不可能だろう。
脱出不可能な地下空間。
おまけに食料も無いときた。
詰んでいる。
空太の諦めに勘づいたメアはゆっくりと立ち上がった。
「諦めるのはまだ早いじゃろう。この周囲は余が見て回ったが何も無かった。じゃが、ここにはまだあるじゃろう」
「そうか、あの建物……でもサイズ的には1階建てだろうし……」
「そんなもの、見てみれば分かるじゃろう。行くぞ」
そう言い放ったメアは建物の方へ歩き始めた。
空太は慌ててメアに着いて行く。
恐らくメアの体力は完全に回復していない。
それに、あの黒いスライムがいるかもしれない。
単独行動は自殺行為だ。
あの建物はかなり不気味な感じがする。
まずこんな地下にある時点でおかしいのだ。
深く考えるだけ無駄なのかもしれない。
少し考えていた間にメアは建物の目の前に到着し、その扉に手を掛けていた。
メアは空太に視線で合図を出す。
「準備は出来ているな」と。
空太はその合図に大きく頷き、左腰に右手を伸ばした。
扉が勢い良く開かれる。
そして……
「あれ?メア!雷切置いて来た!」
「何!?馬鹿かお主ッ!扉はもう……」
時既に遅し。
「「うわぁぁッ!」」
空太とメアは引き込まれるように建物の中に入り込んだ。
同時に扉が閉まる。
ゆっくりと立ち上がったメアは尻餅をついたままの空太を睨みつけた。
空太は目覚めた時点で腰に雷切を下げていなかったのだ。
そのまますぐにメアを追いかけたせいで完全に頭から抜けていた。
雷切が未だ瓦礫の山の中にある事を2人は知らない、知る由もない。
しかし、メアが空太に小言を言い始める前に事は動いた。
空太とメアの正面、扉と逆の方向から激しい光の玉が現れる。
それはそのまま地面にぶつかって消える。
次の瞬間、巨大な魔法陣が回転しながら現れた。
2人とも呆気に取られて動けない。
この世界に超能力はあっても魔法は存在しない。
それなのに目の前の現象は魔法そのもの。
これに動揺してしまい、ただ見ているだけしか出来なくなったのだ。
「空太、扉は開くか……」
「いや、開かない……」
「そうか……ならば余1人でやるしかないか……」
「俺、武器無しでも戦えるんだけど……」
「なッ!それを先に言わんか!構えよ、来るぞッ!」
「言う機会無かっただろ……」
一際激しい光と共に魔法陣から現れたのは2体の人型ゴーレム。
一見貧弱そうなゴーレムはそれぞれ形状が違う。
どうも男と女の形を模しているらしい。
空太は違和感を感じた。
このゴーレム達、どこか見覚えがある気が……
いや、このゴーレム達は……ッ!
空太が違和感の正体に気付き、メアに知らせようとするよりも前に、メアは行動を開始していた。
メアの両腕が赤色に発光、地面から幾本もの針が迫り上がる。
それは容易くゴーレム達を貫く。
はずだった。
「メア、そのゴーレム達は……ッ!」
「な……ッ!」
1歩遅かった。
メアの足元から幾本もの針が迫り上がった。
空太は何とかメアを抱えて回避する。
ゴーレム達も全く同じ動きで針を回避している。
もう分かっただろう。
このゴーレムは空太とメア。
正確には2人の能力をコピーし、付与されたゴーレムなのである。
メアも気付いたらしく、表情を曇らせている。
恐らくこの神殿から逃げ出すには、このゴーレム達を倒さなければならないだろう。
戦いばかり、やってられないな……
空太は心の中でそう悪態をつき、拳を握った。
空太をコピーした男型ゴーレムもほぼタイムラグ無しで同じ構えを取る。
勝機は敵が自分の行動をコピーする事で生まれる一瞬のタイムラグ。
「メア、援護は任せる」
「誰に命令しておる。そんな容易な事、とっくに理解しておる」
「頼もしいな……行くぞッ!」
空太の足が地面を抉る。
同時に男型ゴーレムの足も地面を抉る。
恐らく身体能力も同じ。
体力が無くなる前に仕留めなければならない。
空太とゴーレムの距離が一瞬で詰まり、お互いの右腕が衝突する。
あまりの勢いと威力に、地面に放射線状の亀裂が走る。
やはり攻撃力は互角。
続く2撃目は拳の勢いを残した回し蹴り。
もちろんゴーレムも同様の行動で向かい撃つ。
再び激しい衝撃。
地面の亀裂が更に深まる。
だが、次の瞬間には地面の亀裂が再生し始めていた。
やはり壊して脱出も不可能。
空太は一旦ゴーレムと距離を取る。
しかし、ゴーレムはそうしなかった。
「ぐあ……ッ!」
空太が『ゴーレムは自分の行動をコピーして動いている』という勘違いから生まれた油断と隙。
ゴーレムはそれを狙い、空太の鳩尾に強烈な拳を抉り込んだのだ。
紙のように吹き飛んだ空太は壁に激突し、激しく吐血しながらその場に倒れた。
恐らく骨は数本砕け、内臓も破裂もしくは損傷しているだろう。
瀕死状態という言葉が最も正しい表現だ。
メアはその一連の流れを全て呆然と見ていた。
見覚えのある光景だ。
かつてヤツがメアの国を滅ぼした時と同じ光景だ。
消さなければ……こいつを消さなければ……!
地獄の炎のように燃え上がる復讐心がメアを操作する。
「消してやる……貴様だけはァッ!」
メアは無言で右手を突き出した。
能力が発動し、男型ゴーレムを一瞬で串刺しにし破壊した。
メアの行動と同時に右腕を輝かせていた女型ゴーレムの能力は発動しなかった。
なぜなら、メアの能力は左手でも発動していたからだ。
右手で男型ゴーレムを攻撃、左手で自分の周囲の空間を固定した。
空間固定を行えば、メアと同等もしくはそれ以上の力が無ければ空間操作は行えない。
復讐心に燃えるメアは覚醒状態。
この建物に入った時と全くと言って良いほど戦闘力が違う。
再び振るわれたメアの右手により、女型ゴーレムの首が飛んだ。
「はぁ……はぁ……そうだ、空太……」
ようやく落ち着きを取り戻したメアは空太の元へ向かった。
空太は虚ろな瞳で天井を見つめており、急いで手当をしなければ絶命は確実だ。
だがメアに治療のノウハウは無い。
メアは焦りを感じていた。
元々この男は目的の為の駒でしかない。
それなのになんだこの気持ちは……
馬鹿で間抜けで戦いしか役に立たぬこんな人間に……
結局余の『呪い』の餌食なるのか、この男も……
一体どうしてしまったというのだ。
余はずっとあの場所で駒を待っていただけのはずだったのに……
余は……寂しかったのか……?
いや、違う。
余はこいつを駒としか思っていない。
まだ目的を果たしていないから惜しいと思っているだけ。
そうに決まっている。
ならばこいつを助けなければ。
少々、いや、かなり嫌だが仕方ない。
「奥の手を使ってやるか……」
メアはそう言って目を瞑り……
そして空太の唇に自分の唇を重ねた。
すると、空太の身体が紫色に輝き始める。
傷が癒え、血が浄化されて体内に戻っていく。
回復と表現するには生易しい。
これはれっきとした再生だ。
メアは唇を離すと、自分の指で自分の唇に触れた。
その頬は微かに赤色に染っていた。
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空太は深く微睡んでいた。
最後の記憶はゴーレムに吹き飛ばされた所。
そうか俺、死んだのか……
ぬるま湯に揺蕩っている様な不思議な感覚に包まれながら、空太は考えを巡らせた。
結局何1つ成せずに終わってしまった。
俺は一体何の為に……何の為に強くなったんだろう。
『そんなの簡単だろ~?復讐する為さ。お前は復讐する為に力を得た。今までお前を苦しめてきた奴らにな~』
『何か』が空太に口を挟んだ。
違う、俺は復讐する為に強くなったわけじゃない。
俺は誰かを救いたくて強くなったんだ。
無能力でも平和に、幸せに暮らせる世界を作る為に。
『いや、違うなぁ。それは建前だろ~?本当はお前を無能と罵ってきた奴ら、世界が憎くて憎くて堪らないんだろ~?』
違うって言ってるだろッ!
俺はあいつらを恨んでなんかッ!
恨んで……なんて……
『奴らがお前にしてきた仕打ちを忘れたわけじゃないんだろ~?嫌がらせの数々、暴力だってなかったわけじゃないしな~?』
そんな事関係無い……ッ!
俺はこの世界を……この世界のルールを作り直すんだッ!
平等な世界にッ!
『イヒヒッ!圧政者を倒して世界を革命した人間も圧政者に成り代わるって話、知らねぇわけじゃないだろ~?平等を歌うお前も、今の世界の支配者と同じに成り果てるぜ~?』
じゃあどうしろって言うんだ!
どうしようもないじゃないか!
俺達無能力者は差別され続けろと言うのか!
『俺様と手を組め~。そしたらお前が望む世界に導いてやるぜ~?おっと、話はここまでみたいだな~。お前のお迎えが来たみたいだぜ~?』
お迎え……?
お前は一体何者なんだ……!
『名は無いさ~。また会おうぜ~?』
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目の前が真っ白に染まる。
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