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6−1 恋される!?
しおりを挟む季節が過ぎ去っていき、太陽の日差しが強い晴れた日。
高校二年生になった私はイチカと買い物に出て、ランチを食べていた。
「外でランチ久々~」
「休日にバイトの休みが被ってもアラタは忙しいからね」
親の代わりに家事を担っていると休日はどうしても妹のアカネの食事や平日に出来なかった掃除をやるせいで出掛ける気力が削がれてしまう。
でも最近になってアカネが自分の食事の用意や洗濯、食器洗いも率先してやってくれるようになり、前より時間に余裕が出来てきた。
「実はさ、宮崎達に今度カラオケ行こうって言われたんだよね」
「私も?」
「当たり前じゃん」
同じクラスの宮崎とその友人の長嶋は中学から一緒で会話することが一番多い男子。
中学時代はよく一緒にカラオケも行っていたような仲だ。
「カラオケかぁ⋯高校に入ってから行ってないな~。てか最近の曲知らない⋯」
「聞き役に徹してもいいんじゃない?」
「それでもいいならいいよ」
その後、カラオケに行く予定を四人で立てるが⋯
「お前ら休日合わなすぎ!」
基本バイト中心の生活をしている私とイチカの予定が全く合わず、長嶋が文句を言う。
「先に日にち決めてくれれば休み取れるけど⋯アラタは厳しくない?」
「いや、午後から行くんでしょ?なら午前中に終わらせるようにお願いできると思うけど⋯今、聞いてみるわ」
LINEでカナトに休日のバイトの時間帯をズラせられるか確認を取っているとしゃがんだ長嶋が私の机に顎を乗せてきた。
「小説家の先生のとこで家政婦してんだっけ?」
「そうだよ。兄ちゃんの友達なの」
「若くてイケメンって聞いたけど、なんかドキドキハプニングとかねぇの?」
普通の人なら同じ空間にいるだけでドキドキハプニングなんだろうなーーと思っているとカナトから【休んでもいい】と返信が届いた。
「やったじゃん!じゃあ次の日曜は和原も休み取っとけよ」
予定が決まって、はしゃぐ男子二人にイチカが「ガキか!」と突っ込む。
「日曜ってイチカちゃんと出掛けるの?」
ダイニングテーブルでノートパソコンを打ち続けるカナトが調理中の私に声をかけてきた。
「ハイ。あと二人いますけど、久々にカラオケに行こうって話になって」
「いいね。楽しんで来たらいいよ」
そして日曜日。
現地に集まり、みんなで入店して各々が好きに歌うが私はジュースを飲みながらひたすら聞き役に徹していた。
「渡仲、歌わねぇの?」
大きな音が響き渡っているので耳元に顔を近付けて長嶋が話しかけてくる。
「歌える曲、全然ないから。聞いてるだけでいいの」
「古いのでもいいから歌えばいいじゃん」
「アラタ、中学の時によく歌ってたの入れたから歌え!」
「は!?そんな勝手に⋯」
マイクを握らされて、結局歌うことになってしまったが私の横にいる長嶋はずっと「上手い、上手い」と楽しそうにしていた。
カラオケが終わった流れで、夕飯を食べていこうという話しになり、みんなが親に確認を取る。
「俺、OK!」
「俺も」
「私も大丈夫。アラタは?」
「母さん、帰って来てたから大丈夫だった」
カラオケから近所のお好み焼き屋に入り、注文をして具材が届くとアラタが慣れた手付きで焼いていく。
「さすが家政婦やってるだけある!めっちゃ上手い」
「ママ~、もうお腹空いた~」
ふざけるイチカにヘラを向けて、「火が通るまで待ってなさい」と言うと膝立ちから腰を下ろした。
「渡仲って小さい頃から家のことしてんだろ?親まだ忙しいの?」
「忙しい時もあるね」
「アラタに家を任せられるから安心して仕事出来るんだよ」
「でもそれでバイトもしてたら遊べねぇじゃん」
「遊べないから困ることもないけど?」
何故か拗ねている長嶋とみんなの皿に焼けたお好み焼きを乗せていく。
熱々のうちに頬張って食べていく。
そしてずっと感じる視線の先に目を向けた。
「お前、彼氏とか作んねぇの?」
お好み焼きを飲み込んだ長嶋からの突然の質問に一瞬固まってしまった。
” 夢の人生 ”で何度か彼氏は作ったが幸せとはかけ離れていた。
浮気を当たり前のようにされ、行動を制限されて監視される。
それはまるで自分を所有物扱いされているような、とても屈辱的な時間だったのだ。
それに加えて、中学の時の失恋もなかなか堪えている。
それらを思い出すと⋯とてもじゃないが今は彼氏を作ろうとは思えない。
「興味ない」
長嶋は” 夢の人生 ”では存在を知っているだけで関わりがない。
一緒にいる宮崎はイチカに告白して、振られていたことを覚えているが知っているのはその程度。
性格などは実際に関わっていく中で知っていったものしかない。
「それは好きな奴がいないからだろ?誰か好きになったら変わるかもしれねぇじゃん」
「そうかもね。知らんけど」
「冷めてんな。たった一度の高校生活なんだから恋愛楽しみたいじゃん?」
自分がイケメンや恋愛に対して冷めている自覚はあるが興味がないものは仕方がない。
誰でも嫌な経験があることに対しては消極的になるものではないのだろうか⋯
「じゃあ長嶋は楽しめばいいじゃん。私は恋愛しなくても楽しいし」
「高校で恋愛しないなんて青春を謳歌できねぇじゃん!」
「恋に飢え過ぎじゃない?人のこと気にしてないで自分のこと気にしなよ」
長嶋は不満そうだったがイチカが場の空気を読んで話を変えてくれたお陰で明るい会話に花が咲き、何だかんだと賑やかな楽しい時間を過ごしてこの日は解散した。
「昨日は楽しかった?」
翌日のバイトでコーヒーを片手にカナトが聞いてくる。
「ハイ。つるんで遊ぶのも中学以来なんで楽しかったです」
「仲良しメンバー?」
洗濯物を畳みながら首を傾げて考え込む。
「仲良し⋯というか中学の時からイチカのこと好きな奴がいて⋯そのせいでよく話すって感じですね」
「へぇ~、そういう話は是非聞きたいな」
「いや、詳しくは知りませんよ?私はいつも見守っているだけなんで⋯もう一人の奴とずっと話してるだけですし」
カナトが手に持つマグカップをテーブルに置いた。
「ちょっと口うるさい奴なんですけどね。昨日も何か知らないけど彼氏作らないのか?って⋯余計なお世話だっつーの」
「作らないの?好きな子とかは?」
何故か厳しい視線を送られて、洗濯物を畳む手が止まる。
「いませんよ。特に興味もないし。そういうのって自然と恋愛しないと何も始まりませんよ」
私の言葉を聞いたカナトの表情がいつものように穏やかに戻り、ホッとした。
「確かにね。人に言われてすることではないな。イチカちゃんは好きな子いないの?」
「イチカの好みのタイプって⋯周りにいないんですよね⋯だからあいつの恋は険しいですよ」
「どうなるか楽しみだな。何か進展あったら教えてよ」
「いいですよ」
近頃は休み時間の度に私とイチカの席に長嶋と宮崎の二人がやって来るようになった。
「テスト勉強してる?」
「全然やってねぇわ。和原は?」
「日頃からしてますから」
もう少しで期末テストがある。
普段から自宅学習もしっかりこなしているイチカはさすがの余裕だ。
宮崎が「勉強教えてくれ!」と必死に懇願しているが、イチカは面倒臭そうにあしらっている。
「渡仲はしてる?」
「⋯⋯してない⋯ヤバい⋯」
「何でそんなに深刻そうなんだよ。お前の成績普通じゃん?」
確かに私の普段の成績は普通よりちょっと良いくらいだ。
でも今回はある事が原因で本当にヤバい⋯
「先生から借りた本、ずっと読んでて勉強してないんでしょ?」
さすがイチカ。
本を貸してもらっている事を話したのは結構前だが、私のことをよく分かってる。
「その通りです⋯だって面白いんだもん⋯」
真顔でジッと私を見つめてくるイチカの視線が痛い⋯
分かる⋯言いたいことは分かる⋯
でも一度読んでしまったら止められない⋯もっと読みたくなってしまう。
「仕方ない⋯じゃあ、休み時間と放課後使って勉強しよう。教えてあげるから」
「イチカ様~!」
キツめの性格をしているイチカだが私には基本的にいつも甘い。
その甘さにいつも甘えてしまうが、私達はお互いを唯一無二の友人と思っているので遠慮しないのが暗黙のルール。
私に対するイチカの優しさに、じゃあ俺らも――と無遠慮に二人も便乗してくる。
嫌な顔しつつも「仕方ない⋯」と受け入れて、テストまでの期間は勉強三昧になった。
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