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7−1 告白
しおりを挟む次の日、無事にテストが終わり午前中のうちに学校が終わった。
「放課後どうする?」
「私帰ってご飯食べたいから、自分ちで私があげたプリント頑張ってやんな」
「俺、和原いないと絶対解けない自信がある」
「そんな自信は捨てちまえ。教科書があれば出来るから自分でやれ」
宮崎が泣きついてきて、イチカが辟易した顔をしている。
毎度毎度、「出来ない」と言って甘えられて心底嫌になってきているようだ。
「アラタは先生のとこ?」
「うん」
「今日もかよ!」
「てかヘアピン付けてるの珍しいね。いつもは勝手に落ちてくるからって嫌がるのに」
「これ先生がくれたんだよね。全然落ちてこないの!」
ヘアピンがよく見えるようにイチカに向かって顔を傾ける。
「いいじゃん!可愛いよ!」
「何平気で物貰ってんだよ」
「昨日から何?やけに突っかかってくるね」
態度が悪い長嶋と睨み合っていると宮崎が割って入ってきた。
「まぁまぁいいから⋯それより、明日どっか食いに行かね?」
「打ち上げ的な?」
「そうそう!俺、こんなにテスト勉強したの初めてだし」
「それはどうでもいいけど外食はしたいな。アラタは?」
正直、外食はどうでもいい。
でもイチカとは出掛けたいな――と考えながらさっきまで睨み合っていた相手をもう一度睨みつける。
「長嶋が突っかかって来ないなら行く」
「俺かよ」
「長嶋、大丈夫だろ?」
「⋯⋯ああ」
不貞腐れたような顔をして短い返事をする長嶋に対して、無意識に溜め息を吐いてしまった。
「じゃあどこ行くかは任せるから決まったら教えてね。私行くわ」
また明日ね。――と言って手を振ってくれるイチカに手を振り返して、教室を後にした。
「こんにちはー」
挨拶しながらカナトの家に入っていくとソファーで本を読むカナトがいた。
「おかえり。先にお昼食べようか」
カナトが用意しようとするのを止めて、簡単に炒飯とスープを作る。
食べて後片付けをしたら、昨日と同じように教科書とプリントを出して、勉強を始めた。
先に問題のない教科を済ませていき、苦手な英語は一番最後に取り掛かった。
「凄い⋯スペルを全く覚えてないね」
無理やり全部埋めたプリントを見て、カナトが苦笑いする。
「覚えきれません⋯」
「文章も出来てないよ⋯」
「単語の並べる順番が覚えれません⋯」
項垂れる私を見て、どう教えようか考えるカナト。
「ん?読むことは出来てるね」
「ハイ。読んで訳すのは出来ます」
「それが出来るのにどうして⋯じゃあまずスペルの覚え方なんだけど―――」
読めるならこう覚えればいいとコツを教わりながら、何回かカナトに出された問題を解いていく。
英文の作り方も何とか理解して問題を解けるようになる頃にはすっかり夕方になっていた。
「カナトさん⋯ありがとうございました」
「いいえ。明日も休みにしてるし、テスト終わったらゆっくり休みな」
「そうしたいんですけど、打ち上げなんですよ」
「テストの打ち上げ?イチカちゃんと?」
「その他二人もいます」
何故かカナトの目元がピクッと反応したように見えた。
少し雰囲気が怖いような⋯まぁ、気の所為だろう⋯
「⋯⋯イチカちゃんに片思い中の子はどう?進展あった?」
いつも通りの穏やかなカナト。
やっぱり気の所為だったかと安心して、返事を返す。
「あれはダメですね。しっかりしたイチカに必死に甘えようとしてて、イチカが鬱陶しそうにしてます」
「まぁ、失恋もまた青春だ。告白とかあったら聞かせてね?」
「その時はイチカにカナトさんに言っていいか確認取ります」
「お願いね。⋯⋯もう一人の口うるさい子はどうなの?」
「あ゙~、普通にうるさいです。何か昨日からやけに突っかかってくるし」
「⋯⋯何かあったの?」
「知りませんよ。人の行動にいちいち突っ込んできて⋯」
何があったのか詳しく聞かれて、愚痴りたかった私は昨日からの長嶋の行動をカナトに話した。
「―――って感じで。何がなんなのか⋯」
「ふーん。青春だね」
「は?」
「でも、その子は選んだ相手が間違いだったな。可哀想だけど」
「何の話ですか?」
「恋愛は難しいって話だよ。ところで明日はどこに食べに行くの?」
「どこだろ?連絡来てるかな⋯」
スカートのポケットからスマホを出して確認する。
「あ、来てた⋯⋯〇〇焼肉店らしいです」
「送り迎えしてもらえるの?」
「そこまで遅くならないし、そんな遠くないんで歩きですよ」
「そう⋯」
最終日のテストが終わって、夕方に集合した四人は店内に入り、ジュースで乾杯していた。
「俺、今回は赤点ない気がする」
「俺も!いつもより答え書けたもん」
「アラタはどうだった?」
「いつも以上かもしれない」
得意気に笑って見せるとイチカが驚いたように私に身を寄せてきた。
「理科と英語いけたの!?」
「頭良い人は教え方が上手いわ。自分でもビックリするほど理解できたもん」
結果が楽しみだとはしゃいでいると注文した物がどんどん運ばれてきて、私と宮崎が率先して焼いていく。
「和原、焼けたけど何食う?」
「カルビと野菜!」
「長嶋は?」
「適当にくれ」
食べながら談笑して楽しい時間を過ごしていたが店を出る時間が近付いてきて、宮崎が動き出した。
「和原⋯お前今、好きな奴いる?」
「いないけど?」
ヤベー、今ここでか!?――と驚いたがジュースを飲みながら黙って眺めることにした。
長嶋も居た堪れない顔付きでコップに口を付けて、宮崎を見ている。
「なら⋯俺と付き合ってみない?」
「ヤダ」
「「「⋯⋯⋯」」」
即答で振られるとは誰も思わず、数秒の間沈黙がその場を支配した。
「申し訳ないけど無理だよ。全く好みじゃないし、そういう対象で見たことがない」
「和原の好みってどんなんだよ」
「ガタイが良くて硬派な人が好き」
身長も体格も並で、どちらかといえば軟弱な性格の宮崎はショックのあまりその場に項垂れた。
長嶋が無言で背中に手を置いて励まそうとする。
「まぁ⋯一人でイチカに立ち向かうよりは⋯気不味くない、かな?」
「私ってそんな怖い?」
「怖くはないよ。キツいけど⋯」
居心地の悪い空気に包まれながら会計を済ませて、外に出る。
「アラタ、歩いて帰るの?」
「うん。遠くもないからね。⋯⋯てか、あいつら何やってんの?」
宮崎が何やら長嶋に「お前もいけや!」と詰め寄って、背中を押している。
押されながら長嶋が近付いてくると何故かイチカはどんどん離れていった。
「あ~⋯お前どうやって帰んの?」
「歩きだけど」
「じゃあ送ってくわ」
「要らん」
「⋯⋯⋯(怒)」
怒って私を睨みつけてくるが⋯その顔はどんどん赤く染まっていき、苦しそうに私を見つめてくる。
「どうしていつも俺を拒絶すんだよ」
「してるっけ?」
「⋯⋯俺は嫌われてんのか?」
「嫌ってはいないけど⋯何?」
暗くても店から漏れる明かりに照らされて、赤く染まった長嶋の顔がよく見える。
あっ⋯これは⋯――察してしまい、逃げるように後退りすると勢い良く腕を掴まれて、引き戻された。
両腕を掴まれて、顔を覗き込んできた長嶋が真剣な眼差しで口を開く。
「中学の時からお前が好きだ。ずっと⋯好きだったんだ⋯」
目を見れば真剣なのは分かる。
だが、まだ恋愛をする気になれない上に長嶋をそういう風に見たこともない。
「⋯⋯ゴメン」
「好きな奴、いないんだよな。ならチャンスくれよ。俺、頑張るから⋯」
気楽な男友達だった関係が今この時を持って終わってしまったことがショックで上手く言葉が出せない。
心が痛いのか⋯ 掴まれた腕が痛いのか⋯
ズキズキと感じる痛みに涙が出てくる。
「⋯ゴメっ⋯私⋯」
どう断ればいいのか⋯どういう言葉を選べば相手の真剣な思いに誠意を示せるのか⋯
感情が渦巻いて、ちゃんと考えられない。
涙が止まらなくなった私の腕を強く掴んで離そうとしない長嶋を止める為にイチカが前に出たが⋯⋯その足が止まった。
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