結局恋しちゃうんです

畑 秋香

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8−1 叔父が来た

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 次の日、久しぶりに遅く起きてブランチをしているとイチカから電話が来た。

『アラタ!昨日はゴメンね。大丈夫?』

「平気だよ。私もゴメンね?」

『アラタが謝ることないって!長嶋がアラタのこと好きなのは知ってたんだけど⋯ああ来るとは思わなかったから⋯。普通に告って普通に振られるだろうと思ってたから⋯助けに入れなくて⋯ほんとゴメン!』

「私と同じだ。宮崎がイチカのこと好きなのずっと知ってたからさ」

 お互いにこんな形で告白されると思わなかったのだから仕方がない。
 イチカが謝ることも罪悪感を抱く必要もないことだ。

『” 夢の人生 ”でもそうだったの?』

「うん。振ってたけどね。だから特に言う必要ないと思って」

『そうだね。振ったけど何とも思わないし』

「でも友達だったのにさぁ⋯終わったって感じしない?」

 それなりに仲が良いと思っていたからこそ、このように終わったのが辛い。
 性別が違う以上はこうなってしまう可能性もあるということは分かっていたが⋯まさか自分に好意を向けてくるとは考えもしなかった。

『暫くは前みたいには無理だろうけど⋯こうゆう事もあるって。本当に友達ならほとぼり冷めてからまた話し掛けてくるよ!』

「そうだね⋯そうだよね!なんか安心した。そうだ!あのさ、ーー」

 本当に友達なら――確かにその通りだ。
 気持ちが少し軽くなって、イチカに宮崎からの告白の話をカナトに話してもいいか確認を取ると電話の向こうから笑い声が響いてきた。

『あんな返事の仕方でもいいなら全然話していいよ』

 電話を切った私は手早く支度を済ませると家を出て、バイトに向かった。
 鍵を開けて中に入っていくと二階からバタバタと慌てた足音が下りてきた。
 ソファーに鞄と上着を置く私の姿を見て、驚くカナトが背後に立つ。

「は?何でバイト来たの?」

「だって今日バイトの日ですよ?」

「そうだけど⋯昨日のこと考えたら今日はゆっくりしたくならない?来ないもんだと思ってたよ」

「無断で休みませんよ。それにテスト期間でやること溜まっちゃってるし」

 カナトが腰に手を添えながら、頭を抱えるので何か間違ったかな?と首を傾げた。

「大丈夫なの?」

「家に居ても一人で暇なんで⋯仕事させて下さい」

「ハァー、しょうがないな⋯」

 溜まった洗濯物と掃除を済ませて、減った冷凍の作り置きを作って補充しているとインターホンが鳴る。

「ちょっと⋯出てもらっていい?」

 真剣にパソコンの画面を見つめるカナトに返事をして、インターホンモニターの通話ボタンを押す。

「ハイ。どちら様ですか?」

 モニターに映った男性がカメラに顔を向けた。

「えっ、タケルさん!?」

「は?タケル!?」

 通話を切って玄関に急ぎ、戸を開ける。

「よぉ、元気にやってるか?」

「お久しぶりです。ビックリしました」

「アポ無しで来たからな」

 中に入って、カナトのいるリビングに通すと不機嫌丸出しでタケルが睨まれた。

「ご機嫌ナナメか⋯どうした?」

「お前が急に来るからだろ。何の用さ」

「アラタちゃん、これお土産な」

 受け取った紙袋の中身を見て、目と口を大きく開く。

「えー、このチョコ高いやつじゃないですか!いいんですか!?」

「いいから買ってきたんだ。食え食え!」

「ありがとうございます!」

「話し聞けよ!」

「んな怒んなって。親父に頼まれて様子見に来たんだよ」

 連絡もしてこないくせによく言うよな――と不貞腐れたような顔をするカナトを見て、タケルの父親とはカナトの祖父だったことを思い出し、少し居づらさを感じてコーヒーを用意する為にキッチンに逃げる。
 ソファーに座るカナトとタケルの前にコーヒーを置いて、キッチンの掃除をしようと立ち上がった。

「アラタちゃんもコーヒー持っておいで。休憩ついでに一緒に話そ?」

「私が聞いてもいい話しなんですか?」

「構わないよ」

「あぁ、ちょっと複雑だが聞いといてくれ」

 二人がそう言うならば――と砂糖とミルクをたっぷり入れたコーヒーを持って、カナトの横に座る。

「俺がカナトの爺さんの養子だってことは聞いてんだよな?」

「ハイ」

 タケルの父親はカナトの母方の祖父の秘書をしていた。
 一三年前に久々の連休に浮かれたタケルの両親は仲の良かったカナトの両親と旅行の計画を立て、学校のあるカナトとタケルを祖父の家に預けて出発した。
 だが⋯数時間後、高速で居眠り運転のトラックが突っ込んでくる事故に巻き込まれ、病院に搬送されたと連絡が入った。
 祖父と三人で急いで病院に向かったが⋯病院に着いた時には四人共、息を引き取っていた。
 その後カナトは自宅の近所に住む父方の祖父に引き取られ、タケルは他に親戚もいないことから母方の祖父が養子として迎え入れたという。

「それで俺は大学卒業してすぐに親父の会社に入社したんだ」

 話し終えて満足したタケルが固まっている私を見て、首を傾げた。

「どうした?」

「あの⋯色々と困惑してしまって⋯」

「好きに質問していいよ?」

「えーっと⋯秘書とかお爺さんの会社ってどういう事ですか?」

「そのままだろ。大手出版社の〇〇社はカナトの爺さんの会社だ」

 カナトの本を出している出版社はカナトの祖父の会社。
 本来はカナトも入社させたかったらしいのだがカナトは自ら選んで作家側になったという。

「作家になるのは反対されてたんだけど、無理やり最初の作品を読ませたらデビュー出来たのさ」

「親父は身内だからって甘やかさない人だが⋯そんな人がカナトの作品に文句を言えなかった。実際売れたしな」

 将来は会社を継ぐのかと聞くと心底面倒臭そうな顔をする。

「嫌だね。経営なんて真っ平ゴメンだよ。沢山の人と顔合わせなきゃいけないし」

「血縁者はお前しかいないのに薄情じゃないか?」

「知るか」

 どうやらカナトの祖父は豪快で明るい性格であるようだが” 孫だから ” ” 義理の息子だから ”という理由で甘やかすような人ではないらしい。
 タイミングが合えば食事やお茶をしたりするようだが歳を感じさせない気迫や豪快さに当てられて、一緒にいるだけで疲れると二人は言う。

「まぁ、そんな親父がカナトがちゃんとやってるか見てこいって言うから来たんだ」

「連絡入れろよな」

 あんまり似てないんだな――と思いながらカナトに視線を向けるとその視線に気付いたカナトがニコッと笑った。

「似てないしょ?俺は顔も中身も父方のほうに似たんだよ」

 どうして考えてたことが分かったんだろう⋯
 カナトは妙に勘の良い所があるような⋯

「父方の爺さんが外人ってのは聞いたか?」

「え!?⋯あ~、だから色素薄いんですね」

「どうして色素薄いか気にならなかったのか?」

「薄くても濃くても別にカナトさんには変わらないし⋯まぁ、今知って納得はしましたけど」

 その後も二人の子供時代の話を聞き、漫画に出てきそうなカナトのイケメン苦労話には言葉が出なかった。
 何だかんだ楽しく話をしているとふと思い出した。

「そうだ。カナトさん、イチカから許可もらったんですけど」

「え?まさか昨日イチカちゃんのほうも!?」

「ハイ」

「なんの話だよ」

 タケルに「中学から仲の良い男子が昨日イチカに告白した」ことと今までのイチカへのアタック方法などを簡単に説明すると次第に顔をニヤつかせていった。

「青春じゃねぇか。で、どう振られたんだ?」

「即答で「ヤダ」でした」

 二人がほぼ同時に声を出して笑った。

「さすがイチカちゃん。清々しい」

「ここまでの過程は青春感じたのに一気に幕が降りた感じがヤベーな!」

 イチカ、お気に召してもらえたよ――と心で側にいないイチカに話し掛けながらカフェオレを飲む。

「アラタちゃんのほうは?」

「え?」

「いや、さっきカナトが「イチカちゃんのほうも」って言ってたから、アラタちゃんも告られたんだろ?」

「あー⋯ハイ」

 少し俯いてマグカップの中身を見つめた。

「アラタちゃんの話はいいの。これ以上突っ込むな」

 カナトが言い放ったがアラタは首を横に振った。
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