結局恋しちゃうんです

畑 秋香

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23−1 幸せな日常

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 季節は夏。まぁそれは関係ないが⋯
 今、私は⋯自分の陥った状況にどう対処したらいいのか盛大にテンパっている。

 ダブルサイズのベットの上でカナトに抱えられて横になっている私。

 どうしてこうなったのか⋯それは今朝に遡る⋯



 いつも通り仕事にやって来た私はいつも通りにカナトを起こした。

「お、はよ」

 寝惚けたカナトから顔中にキスを受け、ベットから引っ張り出すと支度をさせて朝食を済ます。
 お互いに仕事に集中して、日中を過ごした。

 昼食と休憩を一緒に取り、引き続き仕事をしていると窓掃除をしていた私の背中にカナトがくっついてきた。

 疲れたのかな?――と思ったが、妙に体が熱い⋯ような⋯

「どうしたの?」

 腕の中で振り返って、顔を見上げるとじんわりと汗をかいた赤い顔が目の前に⋯
 嫌な予感がして、頬に触れると⋯⋯

「熱い⋯熱あるよ」

「⋯⋯ん⋯なんか、急に⋯ダルくなって⋯」

 掃除を中断して、ソファーに座らせると離してくれないカナトを何とか言い聞かせて、すぐ近くの棚に仕舞ってある体温計を取りに行く。
 計り終わって渡された体温計には高い熱が表示されていた。

「最近忙しかったからかな?頭痛い?」

 うん――と言いながら正面に立つ私にしがみつく。

「さっき昼食べたし、解熱剤飲もう」

 薬を用意して、口に入れてあげると渡した水で素直に飲み込む。
 部屋で寝かせようと背中にくっついたカナトと一緒に寝室に向かうと以前より大きくなったベットのせいで部屋が少し狭く感じた。

 カナトのパジャマを出して、着替えるように言うと躊躇いなく私の目の前で服を脱ぎだした。

「部屋出ていくまで待ってよ!」

 パンイチ姿はハルキで見慣れてはいるがだからといってカナトも平気なわけではない。
 なんなら今は世界で一番そういう姿に動揺してしまう存在だ。

 部屋を出ていこうとドアノブに手をかけると後ろからドアを押さえられて、ドアノブを握っている手を掴まれた。

「行かないでよ⋯」

 そうでした⋯熱が出たら甘えレベルが上がる人でした。

「じゃあ早く着替えて!」

 カナトに背中を向けたまま必死に耐っ⋯いや、待った。

 着替え終わったカナトに手を引かれたので、ベットに横にさせ布団を被せようとすると⋯

「⋯⋯ちょっと、寒い⋯」

「じゃあ毛布持ってくるから待っ――」

 不意打ちだった。
 腕を引っ張られて、ベットに倒れ込むとそのままカナトに抱き締められる。
 私を抱き締めたまま腕を伸ばして、しっかりと布団を被った。

「あったかい⋯」



 そして冒頭に戻る。

 一緒の布団に入って、こんなに密着して⋯
 頭が沸騰状態でどうしたらいいのか盛大にテンパっていた。

「⋯⋯アラタ⋯」

 額にキスをしてきたカナトに顔を上に向かせられて、熱い唇が私の口を塞いだ。

(熱があるんだから安静にしててよ!)

 そう思っても、このキスから逃れられない。
 深くて熱い⋯熱を出していない私もこのせいで頭が熱くなってきているようだ。
 たまに口元にかかるカナトの吐息にクラクラする。

「カ、ナトさっ⋯」

 何とか名前を呼ぶが、止める気配はない。

「ちょっ、⋯ちゃんと寝てっ⋯っ、」

 止まないキスに頭がボーっとしてきた。
 横向きだった体が気付けば仰向けになっていて、上からカナトが覆い被さっている。
 私の額と頭に手を置きながら、無我夢中でキスするカナト。

 まさか熱のせいでタガが外れてる?

 口が離れた一瞬の隙にカナトの口を手で塞いだ。

「カナトさん⋯落ち着いて⋯⋯っ!?」

 私に口を塞がれたまま、潤んだ瞳で見つめてくるカナトの熱い手が私のTシャツの中に入ってきて、お腹周りを擦っている。

「ちょっ――」

 驚いて手を離した瞬間、またキスの雨が降ってくる。
 キスを受けながら、服の中に侵入している手を掴んで何とか離そうとした。

 すると、カナトが口を離して切なそうに私を見る。

「⋯ダメ?」

 ダメとは何か⋯そういうことなのは分かっている。
 確かに付き合ってから数ヶ月経って、まだキスまでしかしていない。
 ” 夢の人生 ”での経験は良かったものではなく、私に不快さしか残していない。
 だからか私はそれに関して特に気にしていないが⋯
 健康な二〇代男性からしたらキツイのかもしれない。

 いやいや、健康?カナトは今熱を出してる!
 悩む必要なく、今は安静第一だ!

「熱出てるのに何言ってるの!ちゃんと寝てよ!」

「⋯⋯下がった」

 んな訳あるか!――と額に触れる。
 確かにさっきより下がっているようだが、解熱剤が効いてきたのだろう。
 今のうちに眠らないと回復するものもしない。

「薬効いたんでしょ!今のうちに休んでよ!」

 とても不服そうな顔で見下ろしてくる。
 だが、熱を出している彼氏と初めての行為をしたいとも思わない。

「隣にいるから⋯ちゃんと寝て、元気になんなきゃ⋯」

 逃げているわけではないと分かってくれたのか、カナトは私の横に転がった。
 また抱きかかえられて、頭に顔を埋められる。
 手を回して、カナトの背中をゆっくり擦ると次第に規則的な呼吸が聞こえてきた。

 やっと寝た⋯

 今まで何度キスを交わしてもそれ以上に発展するような雰囲気はなかった。
 きっとカナトなりに気を遣ってくれていたのだろう。
 それを今まで気にしなかった私も私だが⋯そろそろ⋯覚悟をしないといけないのかもしれない。





 次の日にはカナトは回復した。
 やはり、疲労が溜まっていたようだ。
 たっぷり寝て、元気になったのなら良かった――と安心し、今日は昨日の窓掃除の続きをした。

「あの⋯アラタ⋯」

 申し訳なさそうな顔をしたカナトが話しかけてきた。
 どうしたのかと返事をすると目線を逸らされた。

「昨日⋯俺、ガッツイちゃって⋯」

 そのことか――と思って、大丈夫だと答えたが気は晴れていないようだ。

「でも⋯その⋯」

 私を気にかけながら言葉を探しているのだろう。
 その優しさが嬉しくて、私は自ら口を開いた。

「正直⋯キス以上のことを気にしてなかったから、昨日のことで意識するキッカケになったよ」

 不安そうなのは無くならないが真剣に私の話しを聞いてくれている。
 私は恥ずかしさを誤魔化す為に思いっきり笑顔になった。

「全く嫌じゃないよ。次にタイミングがあれば⋯私はそれでも⋯へへっ」

 頬を掻く私を強く抱き締めるカナト。
 瞼にキスされた後、口を塞がれる。

「タイミング⋯作らなきゃね」

 色っぽい表情に当てられて、一気に顔が熱くなる。
 そのタイミングはいつになるだろうか⋯
 私達は今からソワソワして落ち着かなかった。
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