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24 愛を深めて
しおりを挟むガタガタガタ
強風で窓が音を立てる。
「今年は大きな台風がきたね」
「そうだね。確かにこれじゃ外に出られないわ」
外に出られないほどの台風の日に私はカナトの家にいる。
昨日の朝のことだった⋯
「アラタ、明日台風直撃だって」
朝食を食べながら母が声をかけてきた。
「仕事もあるでしょ?明日そのままカナト君の家、泊まらせてもらったら?」
「っ!?――ゲホっ、ゲホっ、」
スープが変なとこに入って、盛大にむせる。
父が私にティッシュを取ってくれた。
「驚くことか?付き合ってるくせに。今まで外泊してないほうが不思議だ」
父親がそんなこと言うものなのだろうか。
結局母が下手に外に出ると危険だ――ということで、カナトに話しをすると⋯
「好きなだけ泊まってよ。いつでも大歓迎」
いや、一泊でいいけど――と答えながら、大喜びするカナトにギューギューに抱き締められた。
そして翌日の今日、泊まる用意をして仕事にやって来た。
間もなくして強風が吹き始め、砂埃が舞い上がっている。
確かに帰るのは厳しいな――と実感したのだった。
「今日の夕飯は何にしよっかなぁ」
独り言を口走りながら冷蔵庫を漁る。
お互いの仕事をしていたら、あっという間に時間が過ぎていった。
食材を出して、お腹を空かせてやって来るであろうカナトの為に夕飯を作る。
「終わったよ~」
仕事を終えたカナトと食卓について、一緒に食事をする。
後片付けを済ませているとカナトが先にお風呂に入るように言ってきた。
「ハイ、これ」
カナトに渡されたパジャマ。
前に一緒に買い物に行った時、買った物だ。
「え⋯これ着るの?」
ワンピースタイプの薄手のパジャマだ。
肩も丸出しで⋯丈もそんなに長くない⋯
「うん。着てほしくて買ったんだけど」
「⋯⋯恥ずかしい」
頬を染めて俯く私の顔をカナトが覗き込んできた。
「っ!?」
「ダメ?」
眉を下げて、頬を桜色に染めながら照れ臭そうに笑うカナトが可愛らしく⋯
私は「いいよ」としか言えなくなってしまった。
やっぱりカナトには甘くなってしまう。
あの人を甘やかしたい⋯
あの人の望みを聞いてあげたい⋯
そんな思いに埋め尽くされて、愛しすぎて⋯
本当におかしくなりそうだ。
カナトが用意したパジャマを着ながら思う。
(今日が⋯タイミングの日なんだろうな⋯)
なんだかドキドキする。
不安なのか、期待なのか⋯
リビングに行くとこちらを見たカナトが近寄ってきた。
曝け出された肩に触れて、頬に唇を押し付けてくる。
「可愛い⋯」
キスした頬を擦りながら、堪らない声で囁いてくる。
お風呂から上がったカナトが「髪を乾かしてほしい」とドライヤーを持ってきた。
ソファーの下に座るように促すと向い合せで、私の膝に顔を乗せる。
乾かしている間ずっと人の膝に顔を擦り付けきて、少し擽ったい。
カナトに促されるがままに寝支度を整えて、二人で寝室に向かう。
手を引かれる寝室までの道のりが何故かいつもと違うように感じて、更に緊張が走る。
暗い寝室に入って、真っ直ぐベットに座ったカナトが手を引いて、私を膝に乗せた。
「何かずーっと緊張してるでしょ?」
恥ずかしくてカナトの肩に顔を埋める。
「きっと⋯俺と同じこと考えてるんだよね」
私の髪に指を通す。
髪にも神経があるのかと錯覚してしまうほど熱を感じた。
「アラタ⋯」
頬に手を添えて、私の顔を自分に向かせる。
熱っぽい瞳が私を捕らえて離さない。
桜色に染まる白い肌が⋯艶めかしくて、見てるだけでのぼせてしまいそうだ。
「あんまり、こうゆう事に意欲的ではないでしょ?」
こうゆう事とは⋯これからするであろう事だろう⋯
なんて答えたらいいのだろうか――と悩んでいるとカナトが先に口を開いた。
「夢で見た人生での経験のせい?」
やっぱりこの人は私を理解してる。
ゆっくり頷くと「話しを聞かせて?」と言われ、私は重い口を動かした。
経験人数などは関係ない。
その内容が全て変わらないのだから⋯
触りたいだけ触られて、あとは自分の欲を吐き出すだけの為に叩きつけられる。
女性の体の防衛本能で溢れるものを私が満足していると勘違いされる情事。
痛みと圧迫感に耐え続け⋯
そして拭いきれない孤独感がいつも相手の欲と一緒に溢れ出した。
その行為に愛なんてものは一切感じない。
だが仕方のないことだったと今なら思える。
だって私も相手に愛を持って接していなかったのだから⋯
話しを聞き終えたカナトが額にキスをする。
「前に嫌じゃないって言ってくれたけど⋯無理することはないんだよ?」
穏やかな笑顔を浮かべて、カナトは私の顔を包み込んだ。
「俺はアラタのタイミングを待つ」
そのまま布団に入り、カナトに抱えられて頭を撫でられる。
「今日はこのまま寝ようね」
私のことを第一に考えてくれたんだろう。
でも私だって、ちゃんと決心してた。
それに⋯十分カナトを求めている⋯
私から意思表示をしないと何も進まない。
体を起こして、目を瞑るカナトの上に覆い被さると驚いたカナトが目を見開いた。
「私は⋯そのつもりでいたの⋯仕方なくそう思ってたわけじゃない。私も、その⋯望んでた⋯から⋯」
顔を近付けていき、軽く唇を合わせる。
「カナトさんが⋯大好きだから⋯」
恥ずかしくて死にそうになっていると突如ぐるっと世界が回って、仰向けになったと思ったらがっつくようなキスが降ってきた。
貪るように⋯深く、深く⋯
「そんなこと言ったら、止まらないよ?」
私は返事の代わりにカナトの顔を掴んで、自分の唇に誘導した。
暗い寝室に二人の息遣いが響く。
徐々に熱を帯びていくアラタの声がカナトの脳を麻痺させる。
初めてのアラタを気遣いながら、優しく⋯ゆっくりと⋯指を這わせていく。
響き渡る水音⋯キスのせいなのか、違うのか⋯
瞳に涙を溜めながらカナトを求めるアラタに愛しさが募っていく。
痛みすら甘く痺れるように感じてしまうほどアラタの心は歓喜していた。
お互いの肌が触れ合い、温かく心地が良い⋯
次第に何も考えられなくなるほど思考が回らなくなり、目の前の快感を拾い始めた。
「愛してるよ」
カナトから囁かれる沢山の愛の言葉に酔いながら、二人の愛はまた深まったのだった。。
翌朝、目を覚ますと視界には素肌の胸板⋯
私をしっかり抱えて、頭に顔をつけて眠っているカナト。
お互いに何も身に付けていない状態で寝ていたことで一気に昨晩の記憶が蘇り、恥ずかしさで逃げ出したくなる。
何とかここから抜け出して、ベットの下に放った下着を着たい。
静かにもぞもぞと動きながら態勢を変えようとすると⋯ギューっと強く抱き締められて一瞬息が止まった。
「なーにしてるの?」
素肌で抱き締められて、顔から火が吹きそうになる。
「体、辛くない?」
カナトの手が優しく腰を撫でてきた。
体が反射的にビクッと跳ねる。
「大丈夫⋯少し重いけど、痛くない⋯から」
良かった――と呟いたカナトに口を塞がれて、深くなるキスに身を捩る。
「アラタ⋯」
「っ!?」
足の間に何か熱い物を感じる。
これは⋯朝だからだろう⋯仕方がない。
しかしカナトのキスはどんどん深くなっていく。
手が体を撫で始め、私の頭の中で警報が鳴った。
「ちょっ、⋯朝ご飯は⋯」
「んー⋯あとで」
少しずつ私の興奮も高められていき、脳が蕩けていく。
「やっぱり辛い?」
ここまでしといて、それを言いますか⋯
少し呆れながら顔を横に振る。
「中途半端は⋯嫌だ」
嬉しそうに笑ったカナトとまた愛を深め、二人はお互いの体温を感じながら幸せを噛み締めた。
「カナトさんのバカ⋯」
昨夜よりハードだったせいでアラタは腰が立たなくなってしまった。
うつ伏せで枕に顔を押し付ける。
そんな私にカナトが謝りながら下着を着せてくれた。
本当に恥ずかしい⋯
「ほんとゴメンね?」
「お腹空いたのに⋯」
「俺が作ってくるから、待ってて?」
カナトのTシャツを着せられて、私はベットで一人横たわって戻るのを待った。
「おまたせ」
トーストと目玉焼きにカリカリのベーコン。
昨日の残りの野菜スープも一緒にお盆に乗せて持ってきたカナト。
「起き上がれる?」
「ん゙~~⋯無理⋯」
試しに体を起こそうと試みたが⋯力が入らない上に重くて痛い。
「食べるの手伝うよ」
カナトも自分の分を食べながら私にも食べさせてくれる。
起き上がれなくなったのがカナトのせいだとしても、やはり罪悪感を感じてくる⋯
しかしカナトはとても嬉しそうに私の口に食べ物を運んでくれていた。
「何でそんなに嬉しそうなの?」
「ん?そりゃあ愛する人と結ばれて、愛する人と朝を迎えて、一緒に朝食を食べてるんだ。俺は世界一幸せだと胸を張って言えるね」
ダメだ⋯そんな頬を染めて満面の笑み⋯
可愛すぎる。
(今度から定期的に泊まろうかな⋯)
本当に私は自分で認められるほどカナト限定でチョロい女だ。
日が暮れて着た頃にやっと体が起き上がった。
結局ずっとベットの上でカナトと過ごした。
腰が故障中なのに危うくまた襲われるとこだったのは言うまでもない⋯
「帰るまでに落ち着いて良かった」
「もう一泊して構わないよ?」
ベットに座る私の膝に頭を乗せているカナト。
「このままじゃ腰がおかしくなるから帰るよ⋯」
あからさまにしょげた顔をされるが、仕事に支障が出る為これに関しては引かない。
ただ黙ってカナトの頭を撫でる。
「また泊まってくれる?」
心配そうに聞いてくるカナトに私は笑顔で答えた。
「うん」
カナトと同じことを言うことになるが、私は世界で一番自分が幸せなんじゃないかと思ってしまう。
素敵な彼氏と素敵な時間を過ごした。
きっとこれ以上の幸せはこの世にはないんじゃないかと思ってしまう。
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