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26−1 真相
しおりを挟む「そういえば、まだ私の夢見るの?」
今更思った疑問を投げかける。
週一以上で見ていたという私の夢⋯
今はどうなっているのだろうか。
「実はここに引っ越して来てから殆ど見てないんだよね。付き合ってからは全く」
ノートパソコンとにらめっこしていたカナトが目線を上げて小さく笑う。
眉と視線を伏せたその表情はどこか哀愁が漂う。
「もっと見たかった?」
「そうだね。君が目の前にいるけど⋯俺は君の夢で辛い時期を乗り越えたから少し寂しいかな」
悲しそうに微笑むカナト。
私は持っていた洗濯物を置いて、そっと抱き締めた。
「毎日一緒だから大丈夫だよ」
「せめてもう少し泊まりの頻度増やしてほしい⋯」
「毎週じゃ足りないってか⋯」
呆れて笑う私の頬を撫でるカナト。
優しいキスが降り注ぎ、幸せな時間に心が満ちていく。
今の私には毎日がかけがえのない物になっていた。
「そうだ!式の日取りって決まったのかな?」
「それはまだみたい。でも新居は決まったって」
気付けばイチカが東京に住み始めて、月が何度か変わった。
いつも近くにいたイチカが遠くに行ってしまい、正直寂しくないと言えば嘘になる。
しかしこの度タケルがイチカへのプロポーズを成功させ、二人はめでたく婚約した。
イチカの両親に挨拶に来た時に私とカナトは家に訪れた二人から直接その報告を受けた。
嬉しくて涙が止まらず、タケルとイチカをまとめて抱き締めた。
「アラタのお陰でタケルと出会えたんだよ。アラタが私達を繋げてくれた」
「そうだ。お前らの運命が俺達を導いてくれたんだ。どんなに感謝しても足りないな」
私だって二人にどれだけ感謝しても足りない⋯
そんな二人のこれからの未来が明るく幸せでありますようにと願わずにはいられなかった。
「お祝いどうしよっかな~」
「いっそ連名で出す?」
「いや、畏まったのは要らないって言われたから良いと思ったものをひたすら買って、段ボールに詰めて送ってやろうかな?って」
「面白そう。俺も一緒にやる」
「何買うの?」
「YES・NO枕」
「あー⋯そう⋯」
カナトと大きな段ボールに沢山の贈り物を詰め込んでイチカ達の新居へ送った。
一緒に買い物に行って選んだ物。
ネットで買った物。
あとイチカが欲しがっていた私の料理のレシピをまとめたノート。
カナトが入れたおふざけの物もあるので目の前で反応が見られないのが残念だ。
――――――――――――――――――――
『贈り物ありがとな。イチカがレシピノート喜んでたぞ』
婚約祝いのお礼を伝える為にオンライン呑みをする二人。
「それだけ?」
『あとマグカップだな。お前らのと色違いなんだろ?』
レシピノートも青と水色のマグカップもアラタが選んだ物だ。
『お前⋯あの枕はさすがに笑って終わったぞ?使えねーよ』
アラタにも指摘されてはいたが一度贈ってみたかったカナトの夢は叶ったので、それで満足だった。
カナトは日取りはまだ決めないのかと問いただした。
その問いにタケルは呆れた表情を浮かべた。
「その顔は何?」
『まだ決められねーんだよ』
「何で?アラタ楽しみにしてるんだけど?」
心底疑問がるカナトの耳にタケルの溜め息が響いた。
『俺等も楽しみに待ってるんだけどな』
「何を⋯―――!?」
言葉の意味を理解したカナトが顔を赤く染めた。
「⋯⋯そういうことか」
――――――――――――――――――――
昼休憩で一度家に帰宅した私は掃除の際に汚してしまった服を急いで着替えていた。
汚れた服を脱衣場に持っていくとリビングで家族が何やら楽しそうにしている。
「何してるの?」
「おっ、いたのか」
「服汚したから着替えにね。それ、昔の写真?」
テーブルに広げられた自分達兄妹の幼い頃の写真。
正直、赤ん坊だと三人の区別がつかないほど似ている。
「忙しくて全然アルバムに出来てなかったから、今やってるの」
思い出を振り返りながら一枚一枚の写真を大事そうにアルバムに収めていく母。
父は込み上げてくるものがあるのか半泣きだ⋯
自分の幼い頃の変顔写真に笑っているアカネに父を頼むと私は仕事に戻った。
寝室で洗濯物を仕舞っているとポケットに入ったスマホが鳴った。
「ハイハイ、何?」
『姉ちゃん!?ちょっと大変だって!』
「何が?」
尋常じゃないほど慌てたアカネが『カナトと一緒に来い』と喚いていた。
理由は分からないがカナトに声をかけて、二人で私の実家に向かった。
慌てて家に入ると走ってきたアカネが私とカナトの手を掴んでリビングに引っ張っていく。
手を引かれなくても普通に行くのに⋯
その判断が出来ないほどアカネはテンパっているようだった。
「どうしたの?」
リビングには難しい顔をした両親。
先程帰った時のあの楽しそうな空気はどこにいったのか⋯
父の手には一枚の写真があった。
「カナト君⋯これは君だよな?」
ソファーに座った私達に父が手に持った写真を渡してきた。
そこには透き通った茶髪に白い肌、クリっとした垂れ目⋯
一際愛らしい男の子が小さなハルキと肩を組んで楽しそうに笑っていた。
「俺⋯です⋯」
「何で!?兄ちゃんと知り合ったの大学からでしょ?」
カナトからもハルキからも、そう聞いていた。
でも目の前の写真には幼い二人が一緒に写った写真。
「それはね、ハルキが六歳の時の旅行で撮った写真なんだけど」
当時、私の妊娠が発覚した母は酷い悪阻に悩まされて毎日寝て過ごしていた。
ハルキは幼いながらも母を心配し、率先して手伝いをして「寂しい」とは口にしなかった。
そんなハルキの為に安定期に入って、悪阻が落ち着いてから近場ではあるが旅行に行ったという。
「その時期⋯俺も両親とそこへ旅行に行きました⋯」
動物園を見て回っているとハルキが突如指さした。
その先には嫌がる男の子の手を無理矢理引っ張っていこうとする二人組の成人女性。
ハルキは一目散に走っていき、女性の手を全力で叩き落した。
そして男の子の前に立ちはだかり、「大人が子供をイジメるな!」と叫んだ。
女性達はハルキに手を上げようとしたが駆け寄ってきた強面の父を見て、慌てて逃げた。
男の子は迷子だという。
迷子センターに連れて行こうとしたが嫌がって動かない。
だが一人にしておくには不安なほど整った容姿をしていた為、両親はそこで一緒に男の子の両親を待つことにした。
「何だかんだハルキと楽しそうに遊んでたな。暫くしたらその子の両親がやって来て、必死に謝罪とお礼をされて⋯その時に思い出として撮ったんだ」
父の話しを聞くカナトは震えながら動揺していた。
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