盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです

斎藤樹

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ローナ 10歳編

ローナという少女

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 ローナ・リーヴェ。


 シルクのように滑らかな白銀の髪に、トパーズを嵌め込んだような美しい瞳が特徴的な由緒正しき侯爵令嬢。

 家族構成は、娘に甘い外交官の父親と、異国の姫だったこれまた娘に甘い母親。それと、後継としてこの上なく有望である歳の離れた兄がひとり。


 本人はというと、身分の貴賎問わず誰にでも分け隔てなく接し、優しさと聡明さを両立する令嬢の憧れと尊敬を集めてやまない完璧な令嬢。


 ーーしかし、幼少期に幼馴染の王室師団団長の息子によって視力を半永久的に失ってしまった。

 盲目となってしまったが故に、確約と言われていたアルブレヒト・メクレンブルガー王太子との婚約を白紙に戻されてしまった、悲劇の令嬢。


 ……というのが、ローナの表向きの設定。
 ローナの本性を語るには、この設定にはいくつかの添削を必要とするのだ。


 ちなみに、家族構成等に嘘はない。
 今までを思い返してみて、両親や兄はゲームで語られた通りのようだし。


 問題は、彼女の性格の部分である。


 ローナは身分の貴賎を問わないのではない、ある一点以外に興味がないだけだ。

 ローナは優しいとはとても言えない。ゲーム内で彼女がとった行動を見て、優しいと言える人はいないだろう。

 ローナは聡明ではない……わけではないけど、言い方が違う。どちらかというと、狡賢いのだ。


 完璧な令嬢というだけでは、ネットで"ラスボス令嬢"なんてあだ名は付けられない。


 一周目では"完璧令嬢"の肩書きでチラッとしか登場しないローナは、二周目から現れる特定のキャラのハッピーエンドルートにてようやく大々的に登場するーーのだが。


 彼女、やる事なす事とにかく悪どかった。


 周りからの評判が良いことを利用して、ヒロインが悪であると認識させる。

 自分の評判に傷がつかないように、催眠でもかけたのかという程ローナに心酔している悪役令嬢を利用して、ヒロインへの嫌がらせを重ねる。

 ローナを盲目にさせたとして負い目を感じているセシルを利用して、ヒロインへのエゲツない嫌がらせをさせる。

 果ては、自分が盲目であるというのが周知の事実であるのを利用して、ヒロインの立場を全力で貶めるように働く。


 パッケージにいるローナの可愛さに騙された私は、彼女がセシルを従えて車椅子で登場した時こそは、その可憐な声と見た目に喜びの悲鳴をあげた。


 彼女のビジュアル、かなり好きだったんだよね。


 でもその中身は、攻略対象者と良い仲になってきたヒロインの心を、足がつかないよう徹底的に折りにくる性悪令嬢。

 しかも、ハッピーエンドはそんなローナを出し抜かなければ迎えられない超難易度で、彼女はプレイヤーの心をも折りにくる"ラスボス令嬢"だったのだ。


 ……そして私はそのローナに転生しまった、と。


 これからどうしようかと私は唸ったのだが、考えに至るよりも先に片付けなければならない問題が現れた。

 慌ただしく扉が開かれ、セシルが呼びに行った両親が部屋に到着したのだ。


「ローナ!目が覚めたんだね!」
「ああっ、ローナ……!」


 両親は悲痛な声をあげて私の側へとやってきた……たぶん。

 見えないのでハッキリとした事は言えないけど、足音や声が私に近づいたので。


「ローナ……セシルくんから聞いたよ。でも大丈夫、きっと一時的なものだ。お医者さまを呼んだからね、すぐにお前の可愛い目を治してくれるだろう」
「見えないというのは、心細いでしょうね。大丈夫よ。お母様はずっと、あなたの側にいますからね」


 私の右手をゴツゴツとした大きな手で、左手を柔らかで温かみのある手で包まれる。
 それぞれローナの……ううん、私の父と母の手だろう。


「ありがとう、お父様、お母様」


 二人がどこにいるかわからないから、私は焦点の合わない笑顔を向けた。
 それに反応してか、二人の手がピクリと小さく震える。


「っ……うぅっ……」
「クリス、君は泣いてはいけない。ローナがまだ堪えてるのだから……」


 母の娘を思ってすすり泣く悲しげな音が部屋にこだまし、それを痛ましげに父が諫めた。


 ……なんか、大変申し訳ないというか。別に悪い事をしたわけじゃないんだけど、罪悪感があるというか。

 既に私が、自分の目がもう二度と回復しないと知っているのに黙っているからーー話したところで慰められるだけなのでーーだろうか。


 そういえばセシルは今どこにいるのかな、なんて現実逃避をして、医者が来るまで私は、どこに焦点を合わせるわけでもなく遠くを見つめるのだった。

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