25 / 40
なにがでるかな
しおりを挟む
ロルカが左手で支えた筒に刺さっている棒の背を右手で勢いよく押す。
ぽん、と音がして飛び出してきたのは。
「え、まさかのコルク栓?」
予想に反してゆっくりと宙を飛んでいく茶色の物体の残像に、窓辺へ立つオーロラはぼかんと口を開けてしまった。
「ふふふ。今度は何が出るかな♪ おったのしみ~」
やはり、そのままコルク弾じゃないのだなとフェイを見ると、彼女は小さな指をあわせてぱちんと音を立てた。
「いでよ、わんちゃん!」
すると、コルクがパンと弾けて、白煙の中から足の短い犬が出てくる。
「ワン!」
ハチワレのように目元を覆う茶色の毛、そして長い耳がたるんと両頬に垂れて、足と腹は真っ白、背中に焦げ茶を背負い、尻尾の先だけ真っ白。
ただし、大きさは両手に乗る程度なので子犬サイズという感じか。
「ビーグル犬?」
呼ばれたと思ったのか振り返り、真っ黒な瞳をきらきらと輝かせ尻尾をちぎれんばかりに振りながらもう一度「わん」と吠えると、コルク犬は空中から一目散にリンゴの木があった場所めがけて全身の筋肉を使って走り出す。
「うわー。爽快」
この屋敷にはほとんど生き物が寄り付かなかったのだと今更気づく。
久々に、犬が全速力で走る姿を目にした。
「ワワワン、ワン!」
手前に薔薇が植えられているために木の根元あたりは見えないが、多分、目的地にたどり着いたのだろう、盛んに吠えている。
「持ってこーい!」
フェイが両手を口の前に添えて呼びかけると、「ワワンワンワン」と答えた後、しばらく静かになった。
「これは……。けっこう深そうですな」
オーロラの隣に立つフランコが顎に手を当て、先をじっと見る。
「あの犬もどきは、地中深くに埋められている呪いの類を鼻で感知してひたすら追いかけます。見つけたら戻ってきますよ。さきほどまではまだまだ浅い場所だったので鳥でいけたのですが、樹木の根ですから」
「すごいですね…」
麻薬探知犬のようなものだろうか。
「いや、トリュフ犬をヒントにして作った。ちゃんと傷つけずにブツをくわえて来る、おりこうさんだよ」
窓枠につかまり顎を載せ、ふんふんふーんと鼻歌交じりにフェイは犬の帰りを待つ。
「………………あ。見つけたようです」
空気鉄砲を持ったまま見守っていたロルカが静かにつぶやく。
なぜわかるのかと首をかしげると、
「この筒と犬は魔力の縄で繋がっているのです。だから、どういう状態なのか手のひらに伝わってきます」
と、ロルカが丁寧に教えてくれた。
「まあ、鵜飼いみたいな感じね。最初、鵜にしようかなーと思ったけど首掴んで吐き出させるより、わんちゃんが持ってきてくれる方が可愛いから、こっちにした」
窓枠に掴まったままぴょんぴょんと跳ねるフェイを、魔道具師たちは微笑みながらうなずく。
どうやら、フェイの思いつくままねだるままに彼らは何でも作ってくれているようだ。
「…これは、もっと献金しないとな」
いや、慰労金?
なんにせよ、ギルドの皆々様には足を向けて寝られないことは確かだ。
そんなことを考えている最中に、「ふぉん」と少しくぐもった微かな鳴き声が耳に届いた。
「よし。無事ブツを捕獲したね。おいで~!」
指笛を鳴らすと、先ほどの犬が短い足を繰り出しながら宙に飛び出し、屋敷に向かって走ってくる。
「…う…。あれ……。あれは、ちょっと…。グロくないですか」
誇らしげな顔をして犬が戻ってきたのは良いのだか、その可愛らしい口には不気味な青紫色の何かがくわえられていた。
それはスライムのようなミミズの集団のような形容しがたいもので、不気味にもウゴウゴと蠢いている。
「まあ、予想通りですな」
フランコがおにぎりを握るように両手を軽く合わせてぱかりと開くと四角の透明な箱が現れる。
彼がそれを犬に向かって投げると、犬も顎をいったん引いて勢いよく頭を上に上げ、獲物を箱に向かって放った。
「封印」
魔道具師たちとフェイは一斉に唱和する。
すると、不審物は透明な箱の中に収納され、フランコが差し出した両手の上に乗った。
「よし、終わり。わんちゃーん。よくやった! いい子いい子!」
フェイが両手を広げると子犬サイズの探知犬はその胸元に飛び込み全身で喜びを表す。
「あははは。いい子イイ子。ギルドに帰ったらご褒美あげるからね~」
千切れんばかりに尻尾を振り大興奮で手足をめちゃくちゃに繰り出しフェイの顔をぐっしょりとするまで舐めまわした後、満足したのか「わん」と一声鳴き、フランコのもつ筒の中へするりと飲み込まれていった。
「すごいでしょ」
「うん。すごいね」
たかが魔道具されど魔道具。
ここまで犬らしくする必要はどこにもないかもしれない。
でも、フェイは愛らしい子にしたかったのだろう。
魔道具師たちの凄さに驚かされっぱなしだ。
ぽん、と音がして飛び出してきたのは。
「え、まさかのコルク栓?」
予想に反してゆっくりと宙を飛んでいく茶色の物体の残像に、窓辺へ立つオーロラはぼかんと口を開けてしまった。
「ふふふ。今度は何が出るかな♪ おったのしみ~」
やはり、そのままコルク弾じゃないのだなとフェイを見ると、彼女は小さな指をあわせてぱちんと音を立てた。
「いでよ、わんちゃん!」
すると、コルクがパンと弾けて、白煙の中から足の短い犬が出てくる。
「ワン!」
ハチワレのように目元を覆う茶色の毛、そして長い耳がたるんと両頬に垂れて、足と腹は真っ白、背中に焦げ茶を背負い、尻尾の先だけ真っ白。
ただし、大きさは両手に乗る程度なので子犬サイズという感じか。
「ビーグル犬?」
呼ばれたと思ったのか振り返り、真っ黒な瞳をきらきらと輝かせ尻尾をちぎれんばかりに振りながらもう一度「わん」と吠えると、コルク犬は空中から一目散にリンゴの木があった場所めがけて全身の筋肉を使って走り出す。
「うわー。爽快」
この屋敷にはほとんど生き物が寄り付かなかったのだと今更気づく。
久々に、犬が全速力で走る姿を目にした。
「ワワワン、ワン!」
手前に薔薇が植えられているために木の根元あたりは見えないが、多分、目的地にたどり着いたのだろう、盛んに吠えている。
「持ってこーい!」
フェイが両手を口の前に添えて呼びかけると、「ワワンワンワン」と答えた後、しばらく静かになった。
「これは……。けっこう深そうですな」
オーロラの隣に立つフランコが顎に手を当て、先をじっと見る。
「あの犬もどきは、地中深くに埋められている呪いの類を鼻で感知してひたすら追いかけます。見つけたら戻ってきますよ。さきほどまではまだまだ浅い場所だったので鳥でいけたのですが、樹木の根ですから」
「すごいですね…」
麻薬探知犬のようなものだろうか。
「いや、トリュフ犬をヒントにして作った。ちゃんと傷つけずにブツをくわえて来る、おりこうさんだよ」
窓枠につかまり顎を載せ、ふんふんふーんと鼻歌交じりにフェイは犬の帰りを待つ。
「………………あ。見つけたようです」
空気鉄砲を持ったまま見守っていたロルカが静かにつぶやく。
なぜわかるのかと首をかしげると、
「この筒と犬は魔力の縄で繋がっているのです。だから、どういう状態なのか手のひらに伝わってきます」
と、ロルカが丁寧に教えてくれた。
「まあ、鵜飼いみたいな感じね。最初、鵜にしようかなーと思ったけど首掴んで吐き出させるより、わんちゃんが持ってきてくれる方が可愛いから、こっちにした」
窓枠に掴まったままぴょんぴょんと跳ねるフェイを、魔道具師たちは微笑みながらうなずく。
どうやら、フェイの思いつくままねだるままに彼らは何でも作ってくれているようだ。
「…これは、もっと献金しないとな」
いや、慰労金?
なんにせよ、ギルドの皆々様には足を向けて寝られないことは確かだ。
そんなことを考えている最中に、「ふぉん」と少しくぐもった微かな鳴き声が耳に届いた。
「よし。無事ブツを捕獲したね。おいで~!」
指笛を鳴らすと、先ほどの犬が短い足を繰り出しながら宙に飛び出し、屋敷に向かって走ってくる。
「…う…。あれ……。あれは、ちょっと…。グロくないですか」
誇らしげな顔をして犬が戻ってきたのは良いのだか、その可愛らしい口には不気味な青紫色の何かがくわえられていた。
それはスライムのようなミミズの集団のような形容しがたいもので、不気味にもウゴウゴと蠢いている。
「まあ、予想通りですな」
フランコがおにぎりを握るように両手を軽く合わせてぱかりと開くと四角の透明な箱が現れる。
彼がそれを犬に向かって投げると、犬も顎をいったん引いて勢いよく頭を上に上げ、獲物を箱に向かって放った。
「封印」
魔道具師たちとフェイは一斉に唱和する。
すると、不審物は透明な箱の中に収納され、フランコが差し出した両手の上に乗った。
「よし、終わり。わんちゃーん。よくやった! いい子いい子!」
フェイが両手を広げると子犬サイズの探知犬はその胸元に飛び込み全身で喜びを表す。
「あははは。いい子イイ子。ギルドに帰ったらご褒美あげるからね~」
千切れんばかりに尻尾を振り大興奮で手足をめちゃくちゃに繰り出しフェイの顔をぐっしょりとするまで舐めまわした後、満足したのか「わん」と一声鳴き、フランコのもつ筒の中へするりと飲み込まれていった。
「すごいでしょ」
「うん。すごいね」
たかが魔道具されど魔道具。
ここまで犬らしくする必要はどこにもないかもしれない。
でも、フェイは愛らしい子にしたかったのだろう。
魔道具師たちの凄さに驚かされっぱなしだ。
12
あなたにおすすめの小説
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
【完結】王子と結婚するには本人も家族も覚悟が必要です
宇水涼麻
ファンタジー
王城の素晴らしい庭園でお茶をする五人。
若い二人と壮年のおデブ紳士と気品あふれる夫妻は、若い二人の未来について話している。
若い二人のうち一人は王子、一人は男爵令嬢である。
王子に見初められた男爵令嬢はこれから王子妃になるべく勉強していくことになる。
そして、男爵一家は王子妃の家族として振る舞えるようにならなくてはならない。
これまでそのような行動をしてこなかった男爵家の人たちでもできるものなのだろうか。
国王陛下夫妻と王宮総務局が総力を挙げて協力していく。
男爵令嬢の教育はいかに!
中世ヨーロッパ風のお話です。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ
猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。
当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。
それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。
そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。
美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。
「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」
『・・・・オメエの嫁だよ』
執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?
愛しの第一王子殿下
みつまめ つぼみ
恋愛
公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。
そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。
クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。
そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
【完結】王宮内は安定したらしいので、第二王子と国内の視察に行ってきます!(呼ばれたみたいなので、異世界でも生きてみます。の続編です)
まりぃべる
恋愛
異世界に呼ばれた佐川マリア。マリア・サガワとしてこの世界で生きて行く事に決め、第二王子殿下のルークウェスト=ヴァン=ケルンベルトと一緒に、この国をより良くしていきます!って、実際は2人で旅行がしたかっただけ?
呼ばれたみたいなので、異世界でも生きてみます。の続編です。
長くなりましたので、前作の続きでは無く新しくしました。前作でしおりを挟んでくれた方ありがとうございました。
読んでなくても分かるようにしております。けれど、分かりにくかったらすみません。
前作も読んで下さると嬉しいです。
まだまだ未熟なので、稚拙ではありますが、読んでいただけると嬉しいです。
☆前作で読者様よりご指摘が有りましたのでこちらにも記載しておきます。
主人公の年齢は設定としてありますが、読者様が主人公になれたらな(もしくは好きな年齢に当てはめて読めたら)という思いを込めて敢えて年齢を記載していません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる