こんな仕打ち許せるわけありません。死に戻り令嬢は婚約破棄を所望する

はなまる

文字の大きさ
2 / 85

1何で私が

しおりを挟む

 
 「ぐはっ!」

 私は苦しさで一気に起き目を覚ました。

 ここは…?あれ、私。牢にいたはずなのに…毒を飲んで苦しみもがいて…

 辺りを見回すが、どう見てもここはコリー侯爵家の自分の部屋だった場所に見えた。

 そう、屋敷の二階。一番北側の寒くてじめじめした屋敷で一番狭い部屋が私の部屋。きっとメイドだってもっといい部屋だと思う。

 粗末なベッドの上で…私、眠っていたの?

 でも、私は処刑されたはずじゃ…思わず頬を抓る。

 「痛い…あれ?わたし生きてるし…」


 私はリンローズ・コリー19歳。コリー侯爵家の令嬢だったわよね。

 私はもう一度ベッドの横になり自分の記憶を探った。


 母は現国王の妹で名前はテリアというが私が15歳の時に病気で儚く逝った。父は元国王の弟で名前はレトリス・コリー。

 実はこのブルゲータ国は20年ほど前に国王が変わったと言うか代理の国王が誕生した。

 前国王のジャーマン・ブルタニウスが頼りにしていた王妃を亡くしたせいで心の病となり王の座を追われその後病で亡くなった。

 その後幼いドーナン王子の後見人として名乗りを上げた当時の宰相だったブルト・ロンドスキー公爵。

 ロンドスキー公爵は議会や王子をうまく説得して国王の代わりとして国王代理となった。いわゆる王子が成人するまでの間だけ。だが王子は謎の病になる。

 貴族の間からもいくつか不審な声が上がったらしいが遅かった。

 (そうだ。これは完全なる王家乗っ取りではないかと思うわよ)

 何しろ現国王代理はすでに高位貴族らを取り込み滅多な事は言えないのが実情だったらしい。

 そんな中、父はそのロンドスキーの娘で王女となった母テリアと王命によって婚姻した。

 母は祖母の侯爵家のコリー家の当主となり父は入り婿としてコリー家に入った。

 父から見ればロンドスキー家は王家を裏切って王座を奪った家。言わば仇になる家である。

 それなのに王命で母と結婚という耐え難い屈辱を与えられたと思っているのだろう。

 そんな事情もあって父は母を憎んでいたし王家にも反感を持っていた。

 (だからあんな事をしたのだろうかと思うが…許せない!)

 ああ、それから前国王の息子がいると分かったのは今から11年ほど前だった。

 平民と一夜を共にして出来た子らしく母親はすでに亡くなっていてシュナウトという子供は孤児院で暮らしていた。

 10歳の時、魔力過多になり膨大な魔力を持っていることが分かり持ち物の中に王家の紋章が入った指輪があった。

 その頃の事を知っていた証言者も現れてシュナウトが前国王の落とし種と分かったのだ。

 シュナウトが王子だと分かるとブルド国王は私を婚約者に指名した。

 シュナウトは私より2歳上で王家の色である金色の髪と透き通った紺碧色の瞳を持ったすごく整った顔の少年だった。

 母は大層喜んでいた。それにシュナウトの魔力暴走を私が抑える事が出来たのも良かった。

 そんな母も私が15歳学園に入る直前に亡くなる。


 父は母が亡くなるとすぐに愛人ミシェルを家に引き入れた。愛人には父との間に出来た子供がいてそのせいで私には異母妹が出来た。名前はアシュリー。おまけに同い年だなんて。

 もちろん平民だった。

 (うそでしょ?誰か嘘だと言って。もぉ!信じられないから)

 って言うかそれにしても私への扱いは酷かった。

 母が亡くなってすぐに愛人と結婚。

 父はそれまでも私に冷たかったしろくに口を利くこともなかった。家にいることも少なかったし母との関係はすさまじいほど冷え切っていた。

 だから母が亡くなってあの女が侯爵家に来てから私にはほとんど居場所がなくなった。

 それでも学園に入ると学園の寮に入ったから学園が休みの時帰るくらいで、それに学園の寮にはスーザンが付いて来てくれた。彼女はずっと私の味方だった。

 でも、家での扱いは酷かった。

 使用人もミシェルとの結婚を機会にと彼女の息のかかった人に入れ替わって行った。私は次第に屋敷に帰ると冷遇されるようになった。

 父とはほとんど顔を合わせる事もなく、顔を合わせればミシェルや異母妹のアシュリーには意地悪をされたり嫌味を言われた。

 だから屋敷にはなるべく帰らないようにしていた。

 学園にはアシュリーも一緒に入学した。

 私はシュナウト殿下の婚約者なのにいつの間にかアシュリーがシュナウト殿下のそばを離れないようになっていた。

 婚約者としてのお茶会もいつの間にかなくなって夜会の同伴もアシュリーに変わって行った。

 殿下に苦言を呈すると。

 「お前は王妃教育が忙しいんだろう。俺の事は気にせずそっちに専念してろ」

 「堅苦しいお前よりアシュリーといる方が楽しいんだ」

 「そんなに睨むな。アシュリーが恐がっているだろう。ったく。お前は実家ではアシュリーをいじめているそうだな」

 そしていつしか学園でも私がアシュリーを眇めていると言われるようになっていた。

 言い返せばそれ以上の罵声が帰って来た。そのうち私は何も言い返さなくなって行った。

 学園を卒業するとますますシュナウト殿下から距離を取られて、それでも殿下に嫌われたくなかった。

 少しでいい私とお茶でもして欲しいと言うと。

 「お前そんな暇があるのか?だったら俺の執務をやれよ」

 だから殿下に言われるまま執務も手伝うようになっていた。気づけば殿下の執務の大半をやっていた気がする。

 結局、殿下の魔力制御だけは私が必要だから、ただそのためだけに私は存在していて…

 (でもそれほど私はシュナウト殿下の事好きだったんだよね。はぁぁぁみじめだなぁ)




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。 冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。 全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。 巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...