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1何で私が
しおりを挟む「ぐはっ!」
私は苦しさで一気に起き目を覚ました。
ここは…?あれ、私。牢にいたはずなのに…毒を飲んで苦しみもがいて…
辺りを見回すが、どう見てもここはコリー侯爵家の自分の部屋だった場所に見えた。
そう、屋敷の二階。一番北側の寒くてじめじめした屋敷で一番狭い部屋が私の部屋。きっとメイドだってもっといい部屋だと思う。
粗末なベッドの上で…私、眠っていたの?
でも、私は処刑されたはずじゃ…思わず頬を抓る。
「痛い…あれ?わたし生きてるし…」
私はリンローズ・コリー19歳。コリー侯爵家の令嬢だったわよね。
私はもう一度ベッドの横になり自分の記憶を探った。
母は現国王の妹で名前はテリアというが私が15歳の時に病気で儚く逝った。父は元国王の弟で名前はレトリス・コリー。
実はこのブルゲータ国は20年ほど前に国王が変わったと言うか代理の国王が誕生した。
前国王のジャーマン・ブルタニウスが頼りにしていた王妃を亡くしたせいで心の病となり王の座を追われその後病で亡くなった。
その後幼いドーナン王子の後見人として名乗りを上げた当時の宰相だったブルト・ロンドスキー公爵。
ロンドスキー公爵は議会や王子をうまく説得して国王の代わりとして国王代理となった。いわゆる王子が成人するまでの間だけ。だが王子は謎の病になる。
貴族の間からもいくつか不審な声が上がったらしいが遅かった。
(そうだ。これは完全なる王家乗っ取りではないかと思うわよ)
何しろ現国王代理はすでに高位貴族らを取り込み滅多な事は言えないのが実情だったらしい。
そんな中、父はそのロンドスキーの娘で王女となった母テリアと王命によって婚姻した。
母は祖母の侯爵家のコリー家の当主となり父は入り婿としてコリー家に入った。
父から見ればロンドスキー家は王家を裏切って王座を奪った家。言わば仇になる家である。
それなのに王命で母と結婚という耐え難い屈辱を与えられたと思っているのだろう。
そんな事情もあって父は母を憎んでいたし王家にも反感を持っていた。
(だからあんな事をしたのだろうかと思うが…許せない!)
ああ、それから前国王の息子がいると分かったのは今から11年ほど前だった。
平民と一夜を共にして出来た子らしく母親はすでに亡くなっていてシュナウトという子供は孤児院で暮らしていた。
10歳の時、魔力過多になり膨大な魔力を持っていることが分かり持ち物の中に王家の紋章が入った指輪があった。
その頃の事を知っていた証言者も現れてシュナウトが前国王の落とし種と分かったのだ。
シュナウトが王子だと分かるとブルド国王は私を婚約者に指名した。
シュナウトは私より2歳上で王家の色である金色の髪と透き通った紺碧色の瞳を持ったすごく整った顔の少年だった。
母は大層喜んでいた。それにシュナウトの魔力暴走を私が抑える事が出来たのも良かった。
そんな母も私が15歳学園に入る直前に亡くなる。
父は母が亡くなるとすぐに愛人ミシェルを家に引き入れた。愛人には父との間に出来た子供がいてそのせいで私には異母妹が出来た。名前はアシュリー。おまけに同い年だなんて。
もちろん平民だった。
(うそでしょ?誰か嘘だと言って。もぉ!信じられないから)
って言うかそれにしても私への扱いは酷かった。
母が亡くなってすぐに愛人と結婚。
父はそれまでも私に冷たかったしろくに口を利くこともなかった。家にいることも少なかったし母との関係はすさまじいほど冷え切っていた。
だから母が亡くなってあの女が侯爵家に来てから私にはほとんど居場所がなくなった。
それでも学園に入ると学園の寮に入ったから学園が休みの時帰るくらいで、それに学園の寮にはスーザンが付いて来てくれた。彼女はずっと私の味方だった。
でも、家での扱いは酷かった。
使用人もミシェルとの結婚を機会にと彼女の息のかかった人に入れ替わって行った。私は次第に屋敷に帰ると冷遇されるようになった。
父とはほとんど顔を合わせる事もなく、顔を合わせればミシェルや異母妹のアシュリーには意地悪をされたり嫌味を言われた。
だから屋敷にはなるべく帰らないようにしていた。
学園にはアシュリーも一緒に入学した。
私はシュナウト殿下の婚約者なのにいつの間にかアシュリーがシュナウト殿下のそばを離れないようになっていた。
婚約者としてのお茶会もいつの間にかなくなって夜会の同伴もアシュリーに変わって行った。
殿下に苦言を呈すると。
「お前は王妃教育が忙しいんだろう。俺の事は気にせずそっちに専念してろ」
「堅苦しいお前よりアシュリーといる方が楽しいんだ」
「そんなに睨むな。アシュリーが恐がっているだろう。ったく。お前は実家ではアシュリーをいじめているそうだな」
そしていつしか学園でも私がアシュリーを眇めていると言われるようになっていた。
言い返せばそれ以上の罵声が帰って来た。そのうち私は何も言い返さなくなって行った。
学園を卒業するとますますシュナウト殿下から距離を取られて、それでも殿下に嫌われたくなかった。
少しでいい私とお茶でもして欲しいと言うと。
「お前そんな暇があるのか?だったら俺の執務をやれよ」
だから殿下に言われるまま執務も手伝うようになっていた。気づけば殿下の執務の大半をやっていた気がする。
結局、殿下の魔力制御だけは私が必要だから、ただそのためだけに私は存在していて…
(でもそれほど私はシュナウト殿下の事好きだったんだよね。はぁぁぁみじめだなぁ)
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