こんな仕打ち許せるわけありません。死に戻り令嬢は婚約破棄を所望する

はなまる

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54シュナウト殿下と対面

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 そこにシュナウト殿下が入って来た。

 「シュナウト。ちょうど良かった。リンローズとも話していたんだが婚約はこのままで北の辺境伯領での仕事が片付いたらお前たちの結婚を許すつもりだ。それでいいかふたりとも」

 おじいちゃんはにこにこしながらそう話すがシュナウト殿下の表情は強張り思いつめた様子に見えた。

 彼は私の目の前まで近づくと。

 「待ってくれ!リンローズは納得したのか?いや、先にこの間の事は謝る。俺が悪かった。その‥お前が他の奴のものになるかもって思ったらつい、焦って。でも、結婚までは二度とあんな事はしない。約束する。だから‥」

 真摯な態度。見つめる瞳にはすがるような思いがひしひしと見えているが。


 ちょっとなに言ってんのよ!そんな顔したからって許せるわけないじゃない!

 シュナウト殿下。それはあまりに都合よすぎです。

 私はすかさずしゃべり始めようとしたが。後ろにいたネイト様の方が早かった。

 「殿下。それはあまりに都合がよすぎるんじゃありませんか?ずっと彼女に見向きもしなかったそうじゃないですか。アシュリーが薬を使ったせいだったとしても、それ以外の時もリンローズに対する態度は酷かったと聞いています。それなのに今更許せと言うんですか?」

 「ネイト様。落ち着いて下さい。これは私と殿下との問題ですから‥私に話をさせて下さい」

 私はすごくうれしかったが私を庇ってネイト様に迷惑が掛かるのは嫌だった。

 「ああ、すまない。そうだったな。でも大丈夫か?」

 「ええ、私の気持ちは決まっていますから」

 ネイト様は振り返った私を気遣いそっと顔を覗く。くすりと微笑んで安心してと頷いた。

 くるりと向きを変えてシュナウト殿下と向き合う。


 「シュナウト殿下!いう事が都合よすぎです。あなたはいつだってそうでしたよね。私との婚約も自分の立ち位置をよくするため。もし、私がドーナン殿下と婚約したらどうなると思います?病弱で次期国王は無理だと噂もあったドーナン殿下は元気になりつつある。そうなれば正当な王位はドーナン殿下ですよね?私との婚約がなくなればあなたにとってそれは困ることになりますよね?そしてそれはおじい様あなたも同じですよね?」

 シュナウト殿下とおじいちゃんの眉が寄せられる。

 「俺はそんなつもりじゃ!「お前はそんなに私が信じられんのか?」

 「もちろんです。あなた達の道具になんかなるつもりはありません。でも、北の辺境伯領には行きます。国の安全を守るのはみんなのためですから」

 「ああ、リンローズの言う通りだな。今はこの話は止めよう。リンローズの言う通り結界の修復が最大優先だからな」

 こういう変わり身はさすが国王代理(狸じいちゃん)だと思ってしまう。

 さらに驚くことに。

 「リンローズ。俺も同感だ。とにかく婚約の話は後にしよう。俺も結界の修復の事は同じ気持ちだ。君の信頼を得られるように頑張るつもりだから。リンローズは絶対に守るから安心してくれ!」

 シュナウト殿下の態度がやっぱりおかしい。今までならふてくされてもうこんな仕事はしないなどと言っていたくせに。

 さっと気持ちを切り替えやるべきことに集中しようとしている。おまけに私の心配まで。いくらアシュリーの事から解放されたとはいえこんなのおかしくない?

 いや、マジ、怪しい。まあ、この人に裏があるとは思えないが…


 そこにホクス騎士隊長と警務部のダニー・トマーソン部長が入って来た。彼はあの薬物研究室所長のリンハル・トマーソンの兄でもある。

 「失礼します。ラセッタ辺境伯大変です」

 「なんだ?」

 ダニー・トマーソンがネイト様の近くによって小声で話を告げる。

 「なんだって?ベナン伯爵が死んだだと?」

 ネイト様は声を張り上げた。

 それを聞いたおじいちゃんも驚いて問いただす。

 「なんだと?ベナンが死んだ?どういうことだ詳しく説明しろ!」

 「ラセッタ辺境伯どうします?」

 「事の状況を説明しろ」

 「はい、今朝ベナン伯爵の屋敷の使用人から騎士隊に連絡が入りました。主人が起きて来ないので呼びに行ったら亡くなっていると」

 「すぐに騎士隊が向かいベナン伯爵は毒薬で亡くなったと判明。自殺か他殺かはまだわかっておりません」ホクス様

 「そうか‥」ネイト様

 「そう言えばベナンにはこう直轄領の神宿石の横流し疑惑があったのではなかったか?」そう聞いたのはおじいちゃん。

 そう言えばおじいちゃんあくどい事をしているって噂があった。

 「はい、調査中でしたが、彼がこの一軒に関わっているのはほぼ間違いないかと思われます」ダニー警務部長が言う。

 「捜査の手が及ぶと分かって自殺したのかもしれんな」

 おじいちゃんは難しい顔をしてそう呟いた。


 私はおじいちゃんの顔をじっと見つめた。脳内におじちゃんの考えが流れ込んで来る。

 【辺境伯のやつらもこれで行き詰るだろう。ベナンさえいなくなれば私との関係は証明することは難しくなる。もう少しで私の血を引く子孫を王に出来るんだ。これは私の悲願なんだ。誰にも邪魔はさせん!】

 やっぱりおじいちゃんがベナン伯爵を殺したの?実行犯ではないとしても神宿石の横流しを指示していたのもおじいちゃん?そのために辺境伯領のみんなは困っているというのに?

 こんなの許せない。でも、私がおじいちゃんはこんな事を思っていると言ったところでそれを証明することは出来ないし‥何か証拠があればいいんだけど。

 

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