こんな仕打ち許せるわけありません。死に戻り令嬢は婚約破棄を所望する

はなまる

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55-1これからの事(ラセッタ辺境伯)

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 俺は緊張を走らせて国王代理に言った。

 「とにかく今後の話もありますので取りあえず失礼します。リンローズも一緒に」

 リンローズの手を取る。

 国王代理は「ああ、そうだな。結界修復も少し遅らせよう」と言ってくれた。 良かった。なのにあいつが余計な事を言う。


 「でも、それは関係ないでしょう?俺もリンローズもすぐにでも行けます。だよなリンローズ?」

 なんだ?あいつ(シュナウト)やる気満々じゃないか。

 リンローズは戸惑いながらも「ええ、まあ、皆さんが困っているんですし‥」

 「ほら。やっぱりリンローズは優しいな。いいか。今日出発するからな。神殿に帰るんだろう?セダ神官に伝えておいてくれ。午後には北の辺境伯領に行くと」

 あいつはすこぶる快活にそう言った。どうだ?俺の事見直したか?みたいなオーラを漂わせて。ばかなやつだ。

 リンローズは俺のものだ。北の辺境伯領でもリンローズはお前のそばにも近付くもんか!って言うか俺がずっとそばにいる。

 すかさず俺はシュナウトに言ってやる。

 「では、俺も行こう。心配するなリンローズ。それまでに段取りを済ませる。では失礼。リンローズ神殿まで送らせる」

 俺はホクス隊長やダニー警務部部長と出て行く。もちろんリンローズも一緒に連れて行く。

 シュナウト殿下が追ってきた。

 「ラセッタ辺境伯。リンローズは俺の婚約者だ。俺が神殿に送る」

 「シュナウト殿下。お言葉ですがお断りします。私は今もあなたが恐いのです。この胸の傷はまだ当分癒えることはなさそうですので。では、失礼します」

 リンローズは伸ばされた手を拒みすかさずそう言った。

 ほっとする。俺はリンローズに手を伸ばしたがその手を取ってはくれなかった。

 まあ、仕方がない。今は。



 リンローズが別れ際にそっと耳打ちしてくれた。

 「ネイト様。私が言った事覚えてます?さっきおじちゃんの考えが流れ込んで来ました。

 【辺境伯のやつらもこれで行き詰るだろう。ベナンさえいなくなれば私との関係は証明することは難しくなる。もう少しで私の血を引く子孫を王に出来るんだ。これは私の悲願なんだ。誰にも邪魔はさせん!】って思ってますよ。

 やっぱりおじいちゃんがベナン伯爵を殺したんですかね?実行犯ではないとしても神宿石の横流しを指示していたのもおじいちゃんなのでしょうか?そのために辺境伯領のみんなは困っているというのに‥それにあんなに嫌だって言ってるのに、人の気持ちなんかどうでもいいんですから!」


 こんな事を知ってリンローズは怖がっているのかと思えば怒っている。

 まったく!

 俺はリンローズが頼もしくさえ思えた。だが、これがどんなに危険な事かすぐに気づいた。

 「いいかリンローズ。この話は誰にもするんじゃないぞ。そんな事を知っていると分かれば命の危険がある。ベナンはあいつに殺されたんだろう。もちろんやったのは影だ。ブルトはそう言う人間を動かせる存在なんだ。邪魔ものがどうなるか。わかったら何も言わずに神殿で待っていてくれるな?北の辺境伯領には一緒に行くから心配するな。いいな?」

 リンローズは言葉を失った。俺の言った事がわかったらしい。そう思ってくれていた方が安心だ。

 「やっぱりネイト様にお話してよかった。私少し時間がありそうなので屋敷に帰って来ますね」

 リンローズは頬を染めた。

 
 ほんの少し離れるだけでも胸が張り裂けそうなほどになる。そしてその想いが強すぎるせいか身体にも高まりが込み上げて来た。

 しばらく吐き出していない欲を吐き出したい衝動に俺はぎしっと歯を噛みしめた。

 「ああ、そうするといい、でも気を付けて。俺も転移して辺境に行って来る。少し用を思い出したんだ。なに、午後には必ず戻るから」

 俺はリンローズをそっと引き寄せその髪にそっと触れた。


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