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  そして国王はすぐにディミトリーの王位継承権をはく奪したことを宰相に報告させた。

 宰相リカルドは大慌てで国王のところに来て事情を聴いた。

 宰相はガスティーヌ家の当主でもあるリカルドであった。

 「ディミトリーは王太子としてあるまじき行為をしたので王位継承権をはく奪する。リカルド、議会では次期国王となるものにはルヴィアナ嬢と結婚することが条件だと伝えてくれ、この約束は絶対に反故には出来ない」

 「陛下約束を守っていただきありがとうございます。ですが国王いいんでしょうか?ご子息をそのようにしてしまっては…」

 「国王たるもの皆の信頼を裏切ってはやって行けない事がある。それはわかっているはずだ。約束も守れん王太子などこの国には必要ない!」

 「ではそのように、すぐに議会の招集を致します」

 「ああ、頼んだ」

 ニコライはリカルドが出て行くと深々と体をデスクの椅子に横たえた。

 色々な感情が押し寄せてニコライの頭は激しい頭痛に襲われる。

 もう、疲れた。それがニコライが一番に思ったことだった。

 

 この知らせはすぐにクーベリーシェ家にも伝えられた。

 ルヴィアナの事もあり一刻も早く知らせるようにと国王からの要請だった。

 ミシェルは大喜びだった。リカルドは彼女の兄。きっとルヴィアナに似合う人物を選んでくれるに違いない。

 すぐに部屋にいるルヴィアナに知らせる。



 「ルヴィアナ…喜びなさい。国王がディミトリーに責任取らせると知らせが来ましたよ」

 「どういうことですか母上?」

 「ディミトリーはもう王太子ではありません。彼はどうしてもステイシーと結婚したいらしいんですの。だからあなたは別の方と結婚することになりましてよ」

 「別の方?どなたです?」

 「それはまだわかりませんが、心配いりませんよ。お兄様が動いてくださいます。きっと素晴らしい方に決まっています」

 「それのどこが心配ないのです?誰かもわからない人と結婚だなんて…」

 「それからヘンリーとは離婚しました。これからはあのステイシーとも何の関係もありませんから安心しなさい」

 「ですが、お母様。ウィリアムはどうするのです?」

 「もちろんクーベリーシェ伯爵家の子供として育てますよ。それにあなたは王妃になるのですから、何の心配もないでしょう」

 お母様は平然とそう言って笑った。



 ルヴィアナはもう嫌だった。こんな結婚おかしいですから…誰と結婚するかもわからないのに、結婚は決まったですって?

 私、この世界の結婚観念について行けませんから!

 もう、いい加減にして頂けませんか?



 ルヴィアナはどうすれば結婚から逃れることが出来るのか考えた。

 ラノベでは、よく修道院に入るなんて設定があったことを思い出す。

 そうだ!修道院に入ればいいのでは。

 残りの人生はひとりで楽しくやって行きたいですから。それならば修道院に入り、恵まれない子供のお世話でもする方がまだいいです。

 前世でも保育士になりたかったんですから。

 そうと決まれば…って言うか修道院ってどこにあるのかしら?

 前世なら、携帯とかで調べればすぐに場所とかどんな感じの施設だとかわかるがここにそんな便利なものはない。



 そうだわ。マーサなら知ってるかも…

 ルヴィアナはマーサを呼んだ。

 「お嬢様、どうなさいました?お茶をお持ちしました」

 「ありがとうマーサ。ごめんなさい。今はお茶を飲む気にはなれないわ。お母様が…」

 すっかりしょげて元気のないふりをする。

 「元気を出してください。ご結婚はきっとうまく行きます。お嬢様は素晴らしい方です。きっと幸せになれます」

 「でも、結婚する相手のお名前もわからないのよ。私…そうだマーサ。街の事でも話してくれない。少し気を紛らわしたいの」

 「ええ、いいですとも…もうすぐ寒くなりますから今は何処も冬支度で大忙しです。暖炉用の薪を切りに森に出かけるものや、石炭ストーブを使うため煙突掃除をする人。新しいコートや靴を新調する人。冬に備えてスモークハムを作ったりチーズを作ったりする人。どこもみんな大忙しです。特に年の終わりのシュターツのお祭りに向けて今から出し物の稽古や衣装を支度したりと、それは街はにぎやかですよ」

  そしてシュターツの事を色々聞く。すぐに修道院の事を尋ねたら怪しまれるかも知れないと思い、市場の事や街の名所や教会などを聞く。ついでに修道院があるかも聞いた。

 マーサは教会とは別に丘の上に修道院があることを教えてくれた。

 だが、そこに行く手立てをどうすればいいか…

 ルヴィアナはいいことを思いつく。



 「そうだ。マーサ、私、こんなことが続いてすごく気持ちが落ち込むの…」

 「まあ、お嬢様お可哀想に。何か楽しい事があればいいのですが…」

 「楽しい事ねぇ…」

 ルヴィアナは思案顔で言う。

 「そうだお嬢様。買い物にでも出かけてはいかがです?さっきも言いましたように、街はにぎやかですよ」

 「買い物ねぇ…そうだ。お菓子でも作ろうかしら」

 「ええ、いいですね。お嬢様が元気になられるのでしたら何でもなさったらいいです」

 マーサはすごく親切に親身に話を聞いてくれる。



 ルヴィアナは心苦しいがやっと本題に入ったと…

 「そうですわ、私、施設の子供たちにお菓子でも作って持って行きたいわ。前に騎士隊の方にクッキーを持って行ったらすごく喜ばれたの。何か人の役に立つ事でもしたらきっと気分が良くなると思うの…どうかしらマーサ?」

 「ええ、いいお考えです。それでその子供たちと言いますのはどちらの?」

 「いえ、私もよくは知らないのですけれど…」



 「聞いたところでは、そのような子供の施設があると聞きました。マーサは知っていますか?」

 「…ええ、聞いたことはありますがどこにあるのかはよく存じません」

 「誰かよく知っているものはいないかしら?」

 「きっと庭師のガロークなどが知っていると思いますが…あちこちに仕事に行っていたと聞きましたので」

 「そう、マーサ悪いけど話を聞いてきてくれないかしら?私これからクッキーを焼くわ」

 ルヴィアナは元気が出たとばかりに満面の笑顔をマーサに向けた。



 「ええ、でしたらキッチンにガロークを行かせましょう。お嬢様はそこで聞きたいことを尋ねてみてください」

 「そうね。いい考えだわ。じゃあ、私、着替えてキッチンに行きますから」

 「私はガロークに聞いてみますね」

 「ええ、お願いマーサ」

 作戦成功です。ルヴィアナの思わず顔がほころんだ。



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