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 マクシュミリアンは、くららを置いて森に出かけた。どんどん森の奥入って行く。そして前に見た場所で蜂の巣を見つけた。

 蜂の巣はかなり大きくなっていたが、獣人の彼にそんなことは構う事ではなかった。

 棒で巣をつついて、はちを追い出す。怒って彼に向かってくる蜂もいたが、彼は柊の葉っぱをくすぶらせて蜂を追い払う。

 蜂はこの煙が苦手なのだ。

 そして蜂の巣を枝から引きはがして地面に落とした。

 しばらく柊をいぶしながら歩くと、蜂も諦めて追って来なくなった。

 やれやれとマクシュミリアンは蜂の巣を大きな葉っぱにくるんで小屋に帰り始めた。



 くららはマクシュミリアンに言われた通り、まずヤギと鶏に餌をやった。

 ヤギは2頭いた。ピグミーゴートという種類で比較的小さかった。

 くずのトウモロコシは麻袋のようなものに入っていてすぐに分かったし、野菜の切れ端が置いてあったのでそれを混ぜて餌を作った。

 ヤギも鶏もくららの作った餌を喜んで食べてくれたのでくららはすっかり機嫌よくなった。

 それに真っ白いヤギの背中にそっと触ろうとしたが、ヤギは近づこうとすると距離を取ってしまった。

 そうよ。ヤギなんて角はあるし髭もあってあまり可愛いとは思いませんから…‥

 だが、くららは彼に頼まれたことは絶対にやっておきたかった。

 出来なかったなんて、わたしのプライドが許しませんわ。


 くららは、意を決してヤギの乳しぼりをしようと白いヤギに近づく。

 だが、向こうもくららを警戒しているのか、くららがそばに近づくとすっと距離を置いた。そうやってしばらく追いかけっこをしていたが、くららは思い切ってヤギの反対方向に回り込み今度は黒いヤギを追い詰めた。

 「さあ、もう逃げられませんわよ。諦めてわたしに乳しぼりをさせなさい!」

 くららはしゃがみ込むとヤギの乳に触った。

 とたんにヤギはメェーと嘶いて後ろ足でくららを蹴飛ばした。

 「まあ、痛い!何をするんです。ヤギのくせに‥‥もう、許しませんから、さあ、おとなしくなさい!」

 くららとヤギは追いかけっこを始めた。

 だが、完全にヤギを怒らせたらしく、もうどうすることも出来なくなった。

 ヤギは戦闘モードで角を向けてくららの方に走って来る。

 「ちょっと待って下さらない。それは危険でございます~」

 くららは走って柵の外に逃げた。諦めきれず唇を噛んだが、熱が下がったばかりでさすがに疲れた。



 そこにマクシュミリアンが帰って来た。

 くららはヤギの柵にもたれてちょこんと座っていた。

 「くらら?どうした。気分が悪いのか?」

 慌てて蜂の巣を投げ出してマクシュミリアンが走り寄る。

 「マクシュミリアン様、このヤギどうにかしてくださいませんか?わたしの言うことちっとも聞いてくれないんですもの」

 「何だ?ヤギがどうしたんだ?」

 「だって…乳を搾らせてくれないんですもの‥‥わたし疲れました。黒いヤギに蹴飛ばされました」

 マクシュミリアンはクスッと笑った。

 「そうか‥‥あいつはルナだ。白い方がソルって言うんだ。ルナの方が気が荒いんだ」

 「悔しいですわ。わたしにも見せて下さいませんか?その…乳を搾るところを」

 「ああ、僕も悪かった。ヤギも慣れていない人で警戒したんだろう」

 「じゃあ、少しずつ慣れて行かないとだめですの?」

 「まあ、そうかも…今日は後で僕がやっておくから」

 マクシュミリアンは自分もなかなかヤギの乳が絞れなかったことを思い出した。くららに悪いことをしたと思った。

 いや、どうしてそんな事を考える。くららはすぐにいなくなるんだ!


 くららはため息をつくと、立ちあがろうとして体を起こした。

 その拍子にくららのドレスの中に何かが入った。

 「ブーン…ブーン…」

 羽音がくららの耳に届く。何やらドレスの中に‥‥

 「マ、マクシュミリアン様…何かいます。きゃースカートの中…あっ、嫌だ!い、痛い!」

 くららはドレスの裾をめくり上げた。

 中から蜂が飛び出してきた。

 「嫌だ…蜂が…ああ、痛い!もう、刺されましたわ」

 「しまった。まだ蜂が巣の中に残っていたんだ。くらら大丈夫か?」

 マクシュミリアンはくららの脚を見た。

 くららはドレスをめくったままで…‥太腿の内側が赤く腫れて行く。

 「ああ…刺されてるな。すぐに針を抜いたほうがいい。それに毒も吸い出した方がいい。中に入って見せて」

 痛がるくららを抱きかかえるとマクシュミリアンは急いで中に連れて入った。


 「じっとしてて…」

 くららはベッドに端に座らされると、ドレスの裾をめくり上げて脚を開かれた。

 あられもない格好だが、今のくららはそれどころではなかった。

 蜂が‥‥蜂が…刺しました。もうどうすればいいんですの?

 マクシュミリアンは、くららの開かれた脚の間に入ると内腿にいきなり吸い付いた。

 「あっ!」

 くららは一声悲鳴を上げた途端バランスを崩してベッドに寝転んでしまったが、すぐにおとなしくなった。


 マクシュミリアンは、蜂の針をまず尖った歯で抜くと、毒を吸い出すため彼女の柔らかな肌に吸い付いた。

 唇で肌を吸い上げると、くららのふくよかな太腿が目の前にあって思わず喉がごくりとなった。

 何を考えてるんだ。

 蜂の毒を吸い出すだけだ。何も考えるんじゃない!

 マクシュミリアンは、その事に神経を集中させようとする。



 一方国王のブリュッケンは、火事のあった後、別室に避難するとすぐにクリスティーナが様子を見に来た。

 「陛下御無事ですか?」

 「ああ、クリスティーナか、この通り無事だ。安心しなさい」

 「本当に良かったですわ。ところでどうして火事に?」

 「どうやら工事でかがり火を着けていた火が木に燃え移って風にあおられたらしい。だがちょうど工事をしている獣人が助に入ってくれて助かったんだ。そう言えばあの獣人の名前は?すぐに確認してくれ」

 ブリュッケンは家来に言いつけた。

 「とにかく安心しました。ではわたしはこれで、おやすみなさい」

 クリスティーナは彼の無事を確認するとほっとして自分の部屋に戻っていった。


 次にローザとスタンリー王子がやって来た。ふたりは国王の無事な顔を見てを喜び安心して部屋に戻っていった。


 翌朝になって、くららとその獣人がいないことが分かって大騒ぎになった。

 ブリュッケン国王はすぐに調べを頼んだ。

 王宮の工事を請け負っているタンクス親方は、彼の名前はマクシュとしか知らず、人買いの店主、そして奴隷商人にまで調べは及び、そこで薪を売りに行って断られたと言うことが分かり、薪を買い取る店をしらみつぶしに当たり、やっと木こりの獣人ラーシュのところにいるもう一人の虎獣人だと言うことが分かった。だが、虎獣人の名前まではそこの店主も知らなかった。


 ブリュッケンは、くららと連れ去った大罪の獣人として彼を探すように騎士隊に命令を下した。

 「その獣人は最初からくららを連れ去るつもりだったのかもしれない。わたしはそいつがわが身も呈さず助けてくれたのだと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。もしかすると火事もその獣人が企てたことかも知れない。いいかロドルフ騎士隊長必ずそいつを捕まえるんだ。もし逆らえば殺してもいい。ただしくららは必ず連れてまいれ。くららには確かめたいことがある」

 「わかりました。すぐに一個部隊を連れて捜索に行きます。お任せください必ずその女性を連れて帰ります」

 「ああ、くれぐれも頼んだぞ!」

 ブリュッケンは、ロドルフ騎士隊長を見送った。

 クリスティーナは、それを部屋の隣で聞き耳を立てて聞いていた。

 「困ったことになりましたわ」

 彼女は小声でつぶやいた。

 


 
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