ご機嫌ななめなお嬢様は異世界で獣人を振り回す

はなまる

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 しばらくしてマクシュミリアンは起き上がった。

 辺りが暗くなったからだ。

 ベッドから降りるとズボンをはいてランプを点けようとした。

 「ランプの油が切れそうだな」

 くららも急いで起き上がり服を着る。

 「そうですか?油の場所は聞いていませんが‥‥」

 「任せて探してみる」

 マクシュミリアンはすぐに裏に出て行った。


 くららは空腹を覚えた。

 そう言えばヤギの餌もやらなければいけませんでした。それにお腹がすきました。

 昼も食べず心配で持って行った食べ物も口にしていなかった。

 くららの裏に出て行くと、彼がヤギと鶏に餌をやっていた。

 「まあ、マクシュミリアン、よくわかりましたね」

 「ああ、なんとなく自分の事はわからないのに、こんな事は覚えてるなんて」

 彼が呆れたように言った。

 「きっと、すぐに思い出せますわ。あまり心配し過ぎない方がいいですわ」

 「まあ、いくら考えても何の足しにもならないから…そうだ。ルナの乳を搾ろう」

 「まあ、ヤギの名前も覚えておいでですか?」

 「そうみたいだ。くららはソルの乳を搾ってくれないか」

 「わたしまだ乳は絞ったことがないんです」

 「それならちょうどいい。僕のやるのを見て、さあ、こっちに来て…」

 くららは恐る恐るヤギに近づく。

 「ソル。くららだよ。いいかい乳を搾りたいんだ」

 マクシュミリアンは優しくソルに声をかける。背中をさすってやってくららに近づける。

 くららはそっとソルの近くに寄って行くと彼が手を取ってソルの背中を撫ぜさせた。

 「ほらくらら、おとなしいだろう。ここに座って」

 彼が小さな木の椅子を出してくれた。陶器で出来た入れ物を渡されソルのお腹の下に置く。

 
 「そっと握って。驚かさないように声をかけてやるといい。そしてこうやって‥‥」

 マクシュミリアンはルナの乳をそっと握ると下にしごくように絞り始めた。

 くららも真似てソルに優しく声をかけて乳を握った。温かくて柔らかい乳をそっと握ってしごくように下に絞ってみる。

 ピューと勢いよく乳が出て来た。

 「マクシュミリアン見て、わたしにも出来ましたわ」

 「ああ、旨いよ。その調子」

 ふたりで乳を搾り夕食の支度をする。

 マクシュミリアン離れた手つきでかまどでトンを焼き、絞ったミルクをヤギの胃袋で作った入れ物に入れた。

 「こうしておけばチーズが出来るんだ」

 「まあ、すごいですわ。少し出来ているチーズを頂けます。それからジャガイモを…」

 くららはジャガイモでグラタンを作ろうと思った。

 「ああ、こっちだ」

 マクシュミリアンは家の中にチーズとジャガイモを取りに入る。


 くららはジャガイモを切って、鍋に入れるとしばらくしてしぼりたてのミルクを入れてとろみにトウモロコシの粉を入れてみる。

 「あの…お塩はどこでしょう?」

 「ああ。こっちだ…あっ、残りが少ないな…町に買い物に行かないと」

 「ありがとう。町に行くのですか?」

 「ああ。ランプの油もないし塩もだ」

 「あの‥‥マクシュミリアンわたしは‥‥」

 くららはもしや彼が自分を町に置いたままにするのではとぎくりとした。 「くららも一緒に行こう。帰りに何か買うといい。その…櫛とか…どう?」

 マクシュミリアンは照れたように顔を反らした。

 「あっ、いいんですか?あなたは優しいですわ。でも町に行くんですか?」

 くららは彼が町に行くと言った時ドキッとした。

 「ああ、だって困るだろう。油や塩がないと…心配ない。王都にはいろいろな店がある」

 彼は本当になにも覚えていないらしい。

 町に行っても薪が売れなかったことを彼は覚えていないらしい。

 くららは、あらためて彼が何も覚えていないのだと実感した。


 そうだとしたら、このまま知らないふりをして彼と一緒にいたいです。町のお店にはわたしが入ればきっと薪を買い取ってくれるますわ。

 でも、王都に行くのはどうなんでしょうか?

 わたしに見えた騎士隊が襲ってくる場面は何だったのでしょうか。

 もし国王が私たちを探していたら王都に行くのは危険ではないでしょうか…‥

 くららはそんなことを思いながらグラタンをかき混ぜる。

 ここにはオーブンもないので深い皿に入れてチーズを上に乗せた。

 とろりと溶けたチーズを見てくららはグラタンの出来栄えに満足した。

 「くらら?これは何?」

 「これはグラタンと言う食べ物です。あなたのお口に合えばいいんですけど…」

 マクシュミリアンが木さじで一口すくうとそれを口に入れる。

 満面の笑みを浮かべて言った。「すごくおいしい。くららは料理上手だ」

 彼がご褒美だとキスしてくる。

 甘い口づけはくららを幸せな気持ちにした。


 甘い感触にうっとりとなっているといきなりくららの脳内に映像が浮かび上がった。

 「マクシュミリアン様‥‥」

 突然名前を呼ばれて彼は振り向いた。 

 そこには女の人が立っている。

 小屋のすぐ前にいて、顔は俯き加減だ。

 ベージュのドレスは薄汚れていたが黒い髪に黒い瞳でどう見てもわたしに見える。

 いいえ、違います。それはわたしではありません。

 くららは声にはならない声で言う。


 だが、マクシュミリアンにはくららにしか見えないようだ。

 「くらら、だめじゃないか、僕が呼びに行くまでは隠れているように言っただろう?」

 「ええ‥‥でも‥‥」

 「安心して、騎士隊は来なかった。今から来ることはもうないだろうから、今呼びに行こうとしてたんだ」

 「まあ、よかった。マクシュミリアン様お疲れでしょう?これを飲んでください」

 くららの偽物は木のカップに入った飲み物を差しだした。

 それは白く濁っていて少しとろみがありそうな液体だった。

 「ありがとうくらら、ちょうど喉が渇いていたんだ」

 マクシュミリアンは疑うこともせず、彼女が差し出した飲み物を受け取ると一気に喉に流し込んだ。

 「くらら?これはなんだ?…‥ウグッ!何だか喉が焼け付くように熱い。もしかして酒か?‥‥いや、違う」

 途端にマクシュミリアンは喉をかきむしり苦しみだした。

 「ど…して…くらら‥‥」

 それっきりマクシュミリアンは小屋の前で意識を失ってしまった。



 ああ‥‥何てことでしょう。

 マクシュミリアンはわたしだと思ってあの液体を飲んだのですわ。

 でもあの液体は何かの毒だったに違いありませんわ。可哀想に彼はあんなに苦しんだのですね。

 でも、あの女性はいったい誰なんでしょうか?

 それにわたしは未来の事は見えていましたが、過去の事まで見えるようになるなんてどういう事でしょう。

 この世界に来て何かがおかしくなっているのでしょうか。

 ひょっとしたらわたしはもうすぐこの世界からもいなくなってしまうのでしょうか…‥

 くららは一人でどうしようもない不安に駆られた。

 でも、今はあの女性が誰か突き止めなければ、でも一体どうすればいいのでしょう…‥



 マクシュミリアンが唇を離すと、くららをじっと見つめていた。

 くららはキスの途中から頭に浮かび上がった映像に気を取られていてキスしたいたことさえも忘れていた。

 「くらら、どうかした?」

 「いいえ、何でもありませんわ。それよりお腹が空きました。夕食にしませんか」

 「ああ、くららが作ったグラタンおいしそうだ」

 マクシュミリアンはグラタンをテーブルに運んでくれた。搾りたてもミルクやトンもある。

 「よかったよ。今夜使うだけのランプの油はありそうだ。こんな料理初めてだ。すごくいい匂いがする」


 そうして二人は夕食を食べると、片づけをしていて蜂の巣を見つけた。

 「そうでした。あなたが蜂の巣を持って帰ったおかげでわたしは蜂に刺されたんですのよ…」

 「くらら蜂に刺されたのか?悪いことをした。僕はきっとロウソクを作るつもりだったのかも知れない。くららは蜂の巣で蜜ろうが出来るって知ってる?」

 「ええ、何かで聞いたことがありますわ」

 「早速明日の朝ロウソクを作ろうか」

 「わたしも手伝いますわ。それは何ですの?」

 蜂の巣を受けていた大きな葉っぱの中に金色の液体がたっぷり溜まっていた。

 「これはハチミツだよ。なめてごらん?」

 マクシュミリアンがその液体を指ですくってくららに差し出す。

 くららは彼の指にチュッと吸い付いた。

 甘い蜜が口いっぱいに広がりくららは幸せそうな顔をした。

 「おいしい?」

 「ええ、すごく。マクシュミリアンもどう?」

 今度はくららがハチミツをすくって彼の口に差し出す。

 彼はその指に吸い付いた。

 彼はくららの指を離そうとはしない。

 「マクシュミリアン‥‥もう、離してください」

 彼はくららの指をくわえたまま彼女を横抱きにして抱え上げた。

 「何をするのです?マクシュミリアン?離して下さい」

 彼は舌を巻き付けてくららの指に吸い付いているので指を引っ張っても離れなかった。

 彼の瞳に見えているのは欲望の炎でしょうか?

 おまけにズボンの股間はぴちぴちに膨らんでいますわ。



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