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4では、行きます
しおりを挟むリリーシェはすぐに前から目をつけていた宿屋に泊ることにした。
久しぶりにひとりでゆっくり風呂に入り遅めの食事を堪能した。
翌朝には王都から出る馬車に乗り込んだ。
乗合馬車で色々な人が乗る馬車だったが、これも前世の記憶があるせいで気後れすることなく乗ることが出来た。
行き先はもちろんあこがれのリスロート帝国の王都ヴァイアナだった。
ヴァイアナは学園でも1年通っていたので地理も良くわかるし何より賑やかでエイダールシュトールと言う宝石彫刻師が集まる工房が立ち並ぶ通りがあるのだ。
リリーシェは前世の小坂未来のやりたかった宝石デザイナーを目指そうと思っていた。
それにはその工房で働くのが一番の近道だと考えた。
それにレスロート帝国は竜帝が納めているが貴族制度もなく実力さえあればどんな竜人や人間でもチャンスがあると言う夢のような国なのだ。
まるで前世の日本のような国だと今からわくわくしている。
「お嬢さんどこまで行くんだい?」
中年のおばさんが声をかけて来た。
「もちろんリスロートですよ。おばさんは?」
「私もリスロートに嫁いでいる娘の所にね。孫が生まれるんだよ」
「それはおめでとうございます」
「ああ、ありがとう。娘は初産でね。手伝いに来てほしいって言われてね」
おばさんはうれしそうに話をする。
「そうなんですか。頼りにされるってうれしいですよね」
「ああ、そりゃうれしいさ。お嬢さんはどんな用で?」
若い娘が一人で他国に旅をするのは珍しいのだろう。
リリーシェは少し戸惑った。何しろこの世界は女性の自立はおろか働く事さえ偏見があるのだ。
リスロートに行って宝石デザイナーになりたいなんて言えるはずもない。いや、言ってもいいが本気にはされないだろう。
それに詮索されるのも嫌だと思った。
「ええ、私も姉に子供が生まれて会いに行くんです。迎えに来るはずだった人が急病で来られなくなってしまって、心細い思いをしていたんです。どうか私と道連れになってもらえませんか?」
「ああ、そりゃお困りですね。私で良ければ一緒に行きましょう。それでお嬢さんお名前は?あっ、私はアンナだよ」
「アンナさん。私はリリーシェと言います。どうぞよろしくお願いします」
リリーシェは男爵令嬢だとは言わなかった。
(だって万が一国王や神殿長が連れ戻しに来るかもしれないのだ。平民と思われた方が都合がいい)
そうしてアンナさんと一緒に2泊3日の旅をしてリスロート帝国の王都ヴァイアナに着いた。
「ああ、やっと着いたね。リリーシェあんたのおかげで楽しい旅になった。そうだ。もし都合がつけば私の所に来ないかい?帰りも一緒に帰れたらきっと楽しいだろうし…」
アンナさんは住所を書いた紙を渡してくれた。
リリーシェはそれを受け取ると申し訳なさそうに言葉を詰まらせる。
「ええ、そうですね……でも私、姉のところにしばらく厄介になるつもりなんです。あっ、でも、もし時間があればアンナさんの所に伺うかも知れません。本当にお世話になってありがとうございました。元気な赤ちゃんが生まれますように。きっとアンナさんに似て可愛いでしょうね」
リリーシェは手を合わせてアンナさんに加護の祈りを捧げた。
一瞬、アンナさんの身体を淡いピンク色の空気が包み込んだ。
だが、誰にも気づかれなかった。
そしてリリーシェはアンナさんとその場で別れた。
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