いきなり騎士隊長の前にアナザーダイブなんて…これって病んでるの?もしかして運命とか言わないですよね?

はなまる

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 そして議会が開かれた。

 レオナルドは最初に国王になる意志はないとはっきり言い切った。

 ジャミル宰相がレオナルドに詰め寄る。

 「ですが、あなたは言い伝えの通りに生き返った。それを国民が見ていたんです。わたしはもうあなたを国王にすると宣言したのですよ。それなのに…どうか考え直していただけませんか?」

 「では宰相イエルク国王はどうするおつもりです?」

 「イエルク国王は国民の前であのような醜態をさらしたのです。引退が妥当でしょう。だからレオナルド何も心配することはないのです。イエルク国王には世継ぎもいらっしゃらない、どうせ跡取りを誰にするか王族の間でもめ事が起きるでしょう。あなたが国王になるのはアディドラ国のためでもあるんです」

 「お気持ちはうれしく思います。でも私は瑠衣とひっそり暮らして行ければいいんです。だからやっぱり国王になることは考えられません」

 「ここまで頼んでも‥‥そうですか、ではあなたにはそれなりの対処をさせていただきます。皆さん、お聞きの通りだ。レオナルドの処分を話し合ってくれ!」

 それで審議の結果、エルドラを追放されることになった。どんな理由があろうと国王に逆らった反逆者という汚点は、やはりただではすまされないと言うことになった。処刑が執り行われて生き帰ったのでもう処罰は免れた。レオナルドはこのまま貴族、そして騎士隊の隊長としてやっていけることになった。


 ロンダは乱心した国王に見事な対処したとして、勲章を与えられることになった。そして近衛隊の隊長に昇格することに決まった。


 ロンダが退室した後、議会でイエルク国王をこのまま存続させればいいという話も出たが、ジャミル宰相が大変な事実を発表した。聖女がレオナルドの子を妊娠したと…本来ならレオナルドも国王になれる権利があるはずだが、レオナルドが国王にならないと言っているのであればレオナルドの子供は次の王位継承者と言うことになるではないかと。この件はもう少し話し合いをすることになる。


 そして最後に瑠衣が議会に呼ばれた。

 彼女の衣装を見て議員たちはため息をついた。

 瑠衣はそれはもう美しく、黒髪が淡いグリーンのドレスによく似合い、それをはるかに上回った宝石のようなグリーンの瞳は誰もを魅了した。美しい金糸のカモダールと呼ばれる羽織ものも瑠衣の美しさを引き立てていた。


 ジャミルが声を上げる。

 「皆さん。聖女を正式にこの王宮にお迎えしませんか?」

 「ジャミル宰相、いい考えだ。賛成…賛成する」あちらこちらで議員が賛成の声を上げた。

 驚いたのは瑠衣だった。

 「待ってください。何度も申し上げている通りわたしはレオナルドの妻です。それにわたしには彼の…」

 ジャミルがみんなに会議は解散と告げる。

 すぐに議員たちは部屋を出て行き始めた。

 「待ってください。まだお話は終わっていません」

 瑠衣は議員たちに言うが誰も聞こうとしなかった。


 議員たちが出て行ってしまうとジャミルがやっと口を開いた。

 「聖女様、決してあなたに悪いようにはしません。この話はまたゆっくりしましょう。今日はとにかく…レオナルドも今ご両親と会ってお話されている所です。ふたりともさぞお疲れでしょうから今夜は一緒にゆっくりしてください。これからあなたはゆっくり支度をしてレオナルドのところに行けばいいでしょう?いけませんか?」

 「ええ、そう言うことなら…ありがとうございます。でも王宮に迎えるとか?」

 「わたしは一刻も早く国を安定させなければいけません。わたしにはその責任があるんです。もしかしたら一時的に王宮にとどまることをお願いするかもしれませんが、悪いようにはしませんから安心して下さい」

 「はい、あの…ジャミル宰相あなたを信じていいんですね?」

 「もちろんです。あなたは聖女なんですよ。もっと自信を持ってください」

 「はぁ…」

 もうどうしたらいいの。わたしは聖女じゃなくなったらしいのに‥‥でも先にレオナルドに話をした方が良さそう…


 ジャミルはため息をつく瑠衣を見て彼女は疲れていると思った。

 「瑠衣さん、心配ばかりしているとしわが増えますよ。安心して今夜はレオナルドと一緒に過ごしてください。話はまた明日にでもゆっくりしましょう。ではわたしはこれで」

 ジャミルはすぐに聖女様をお部屋にお連れするようにと兵士に言いつけた。

 そこは王宮に最初に来た時通された豪華な部屋だった。

 外にはしっかりと鍵がかけられ、見張りが付いた。

 だが、瑠衣は今夜はレオナルドと一緒だと思うと、うれしい反面気が重くもなった。何しろ聖女でなくなったわたしをレオナルドは愛してくれるのだろうか…ううん、彼はそんなことを気にするはずない。

 レオナルド愛してる…彼もわたしを愛してくれてるもの。もう、これからはもうずっと一緒にいられるんだもの…‥何も心配いらない。



 レオナルドは議会から事情を聞かれ、そして自分の審判を素直に受け入れた。後は瑠衣が議会で話を聞かれるのが終わるのを待って、ここから立ち去るつもりだった。取りあえずエルドラにいる両親のところに行って事情を話して別れを言わなければならない。そして新たに再出発するつもりだった。

 だが、レオナルドは会議室から出ると、すぐに王宮から連れ出された。あっという間に馬車に乗せられた。いくらまだ瑠衣を待つと言っても近衛兵たちは聞こうともせず、馬車に無理やり押し込まれて、隣にはしっかりと近衛兵が付き添っていた。

 馬車は見る見るうちにエルドラから遠ざかって行く。

 「待ってくれ!一体どういうことなんだ?俺は瑠衣を待たなきゃいけないんだ。勝手に俺だけ連れ去るなんて訳を話してくれ!」

 レオナルドが近衛兵に怒鳴る。

 「わたしたちはあなたをエルドラから連れ出して次の街のアムマインにある宿にお連れするように言われました。そこで聖女を待つようにとジャミル宰相から言付かっています。心配ありません。アムマインで待っているようにとのことでしたから、もうしばらくの辛抱ですよ」

 近衛兵は理路整然と言った。


 レオナルドはどうも話が旨いと思ったが、そこまでジャミルが言っているのだからと引き下がった。とにかく早く瑠衣に会いたい。心の中は瑠衣の事でいっぱいだった。だが、今は辛抱するしかない。レオナルドはじっと口を引き結んで馬車に揺られた。


 馬車は近衛兵の言った通りエルドラを過ぎて森を抜けてアムマインの街に入った。

 宿にの入り口で馬車から降ろされた。

 「ここでお待ちください。ではわたしたちはこれで失礼します」

 近衛兵が挨拶をした。

 「わかりました。どうもありがとうございました。あの、それでいつ頃彼女は来るんですか?」

 「そこまではきいていませんが、議会の聞き取りが終わればじきにお送りしてくると思いますので、では…」

 近衛兵たちは帰って行った。


 馬車が引き返すのを見送るとレオナルドは、宿に入ると部屋に案内された。彼はそこで瑠衣が来るのを待つことにした。



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