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しおりを挟むその頃瑠衣は、部屋に使用人たちが訪れてお風呂に入らされていた。
使用人たちは湯船にばらをたっぷりと浮かべ、瑠衣をそこに入らせると体中を現れた。そして湯船から出されると。今度は身体中に香油のようなものを塗り付け、腕から足からお腹や背中まで隅々までマッサージされた。
まるでエステでも受けているみたいだ。
瑠衣は次第に気持ちよくなってうとうとし始めた。あまりにも疲れていた。
しばらくそうやって気持ちよいマッサージを受けると、今度は髪をくしできれいにとかされて結い上げられた。
そしてあれよあれよという間に、透けるような薄いガウンのようなものを着せられると、ドア伝いに隣の部屋に連れて行かれた。
すでに窓からは太陽が沈んで、月が顔を出し始めていた。
部屋の真ん中には大きな四中式のベッドがあり、赤いベルベットのような天蓋が下がっていた。
これって…まるで新婚さんの部屋みたいじゃない。何だかこれから何をするかみんなに知られているようで急に恥ずかしくなる。それにこの格好…透けたガウンの下は、下履きだけで…
レオナルドが見たらめちゃくちゃ喜ぶだろうけど…これって超恥ずかしいじゃない。
もう、みんな余計なお世話よって言いたくなった。
使用人が食事を運んできて、食前にどうかとズーラで作った飲み物アマンを用意してくれた。
「あの…レオナルドはどこかしら?まだご両親との話が終わらないの?」
「申し訳ありません。それは存じ上げませんので…先にお食事を持って行くようにと言われてだけですので、さあ、冷めないうちにお召し上がりください」
「ええ、そうね。ありがとう」
もう、レオナルドったら、一体何してるのかしら…そう思いながら瑠衣は、寝室に会った肘掛椅子に座ると先にアマンを飲み始めた。それはフルーティーで甘くて飲みやすかった。
食事はパイで包んだ肉料理やソーセージ、豆のスープにトマトやトウモロコシまであった。
瑠衣はお腹が空いていたがレオナルドが来るまでと思って我慢した。だが、しばらくすると空腹には勝てず豆のスープやパイ包みやソーセージなどを食べんがらアマンを飲んだ。
瑠衣は何だか酔った様な気分になった。
もしかして、アマンってお酒だったの?どうしよう…妊娠したらお酒はいけなかったんじゃ‥‥
その辺りから、あまり物事を深刻に考えなくなっていた。体は火照ってくるし、何がどうしたのか下半身が熱くて疼いてくる。
はぁ…レオナルド早く来てよ…
そこにイエルク国王が入って来た。
「えっ?どうして国王がここに?それに怪我をしたんじゃ?」
「ああ、わたしを心配してくれるのか。けがは擦り傷程度だ心配ない。聖女よ。今宵こそわたしのものになってもらおう」
「いやよ!わたしに、近寄らないで!」
瑠衣は透け透けのガウンの前をしっかり合わせて腕で胸を隠した。だが、あまり意味はなかった。
「いいから、こっちに来ないでよ。わたしはレオナルドのものなんだから」
「でも、彼は国王を辞退したんだ。知ってるのか?」
イエルクが自信たっぷりに言う。
「そんなの分かってるわ。レオナルドは国王になんかならないって言ったもの」
「それでもまだあいつがいいのか?」
「いいに決まってるから!」
「信じられん…」
イエルク国王は呆れた顔をして瑠衣との距離を詰めてくる。
瑠衣は危険を感じてじりじりと後ずさる。
「わしはこの国の国王なんだぞ!」
「だから、わたしはあなたの物になれって事なの?教えてあげる。わたしのお腹にはレオナルドの赤ちゃんがいるわ。それでもいいの?」
「聞いておる。そんなことは構わん。さあ、わしのところに来るんだ」
瑠衣は追い詰められていく。
イエルクが飛び掛かってきて瑠衣はとうとうベッドに押し倒された。
「さあ、諦めろ。いい思いをさせてやるんだ…」
イエルクが上にのしかかり瑠衣は押しつぶされそうになる。彼は彼女のガウンの上から乳房に吸い付いた。
途端に乳首がぎゅっとして甘い声が漏れた。
「あっ、‥‥はぁぁん‥‥」
ぬるりとした舌が肌を伝う感覚にぞくぞくとして瑠衣は怯えた。どうして?こんな嫌な奴にされてるのに、ああ…どうして感じてしまうのよ?
もう、こんなのって…わたしどうなってるの?
イエルクの手はおへそをくだり、恥毛に伸ばされる。乳首はびちゃびちゃ音を立てて吸われ荒い息が肌にかかる。
うぎゃ…気持ち悪い。なのに…膣がギュッと疼いてしまう。
こんなの変よ…
「いや…助けてレオナルド…レオナルド…‥どこなの。レオナルド…」
上にはイエルクが覆いかぶさってくる。
瑠衣は力の限り彼を切り飛ばした。
だが、豚のような重さの体はびくともしなかった。
「いやー!助けて…レオナルド!どこなの‥‥きゃー!」
レオナルドはその頃いつになっても現れない瑠衣にイライラしていた。
「もう日が暮れるじゃないか…いくらなんでもおかしい。もしもジャミルに騙されていたらどうする」
レオナルドがひとり部屋でぶつぶつ言っている。
隣の部屋にも客が数人入って来た。
「おい、最近このあたりじゃ盗賊が出るって噂だぜ。これ以上暗くなったらやばかったな」
「ああ、近頃じゃ近衛兵だって、夜は街道を通らないらしいからな」
そんな話が聞こえてきて、レオナルドはやっと自分が騙されたと確信した。
クッソ!ジャミルの奴!やっぱりそうだったのか。おかしいと思ったんだ。瑠衣と離れ離れになるんじゃなかった
レオナルドは宿を出ると、狼になって一目散に森を駆け抜けていた。王宮に近づくと瑠衣の匂いが嗅ぎ取れた。
レオナルドは夜の闇に紛れてじりじりと瑠衣の匂いをたどり彼女のいる場所に近づいていた。
今度は牢獄のある東の塔ではなく、国王の部屋や客室がある場所らしかった。
そしてこの上から彼女の匂いがすると判断すると、いきなり壁をよじ登り始めた。
爪を上手に煉瓦と煉瓦の間に突き立てて、力を振り絞って垂直な壁をよじ登っていく。
時折、興奮と力の入れ過ぎで,「ガルゥー…ミシミシ」うなり声と歯ぎしりの音が暗闇に響いた。
やっと瑠衣の匂いがする部屋の窓の縁にたどり着くと、そっと中を伺った。
瑠衣が見えた。
彼女はベッドの上にいて裸同然のような姿で震えている。そしてその横にイエルクの姿が見えた。
レオナルドの野生の本能は一気に解き放たれた。
すぐにジャミルの裏切られたと気づいた。
窓からぱっと翻る(ひるがえ)ように部屋の中に飛び込んだ。薄暗い部屋に一瞬銀色の光が輝いたかと思うと、瑠衣の前に狼が舞い降りた。
いきなり現れた狼に驚いてイエルク国王はひっくり返った。
「誰だお前は?」イエルクの声が強張る。
「ガルゥ、グゥルー」レオナルドは興奮のあまりイエルクに牙をむきうなり声をあげて、すぐに瑠衣を守るように前に立ちはだかった。
「瑠衣、大丈夫か?」
「レオナルドなの?良かった‥‥」
「すまん瑠衣。驚かせて…もう大丈夫だ」
「お前は誰だ?わたしが国王と知っての事か?おい、誰か、誰か」
イエルクは起き上がると狼を見て驚いた。
「それはこっちのセリフだ。わが番にこのような真似をするとはいくら国王とはいえ許せん!」
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