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【本幕・第7章】あねしーくれっとっ
5.姉二人と従姉二人の戦争勃発ですかっ!
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五月二三日、土曜日の午前一〇時過ぎの俺がどんな様相か。
隣人宅で抱腹絶倒している真っ最中だ。目の前にいるこいつ、来栖有紀が原因。
「ぷっ! うくく……うはははっ! クリスティーナだって!?」
「失礼な人ね。本名明かしただけで、大笑いするなんて……」
こうして来栖邸の居間で笑い転げている間、塁姉は勝手口側の駐車場に車を移動させた。これは俺が来栖有紀との関連を、花穂姉ちゃんに知られないための措置らしい。なにかが動き始めている。俺の知らない水面下で……
「クリスティーナ! わははっ!」
来栖有紀ではなく、クリスティーナ・結城。
本来なら俺の従姉にあたる関係になるのだろうか。
奇しくも、ここに青山家の従姉と結城家の従姉が揃ったわけだ。
「蒼太君、ふざけ過ぎっ」
「すまん。来栖としばらく会えないと思ってたから……」
「そうね」
「でも、会えてよかった」
キッチンの方から勝手口を閉会する音と共に、塁姉が美果ちゃんと家に入って来た。来栖有紀と俺の距離感に目を丸くしている。ちょっと、接近し過ぎたようだ。
「お邪魔したか? 蒼太、副社長と突き合ってるのか?」
グリングリンと腰を前後させて聞いてくる。
「塁姉、来栖とは月曜に知り合ったばかりだ。花穂姉ちゃんに内緒でテスト勉強を教えてもらった恩人だ。というか、その下品な動きやめてくれ……」
ついさっきまで自宅のキッチンテーブルを四人で囲んで座っていたというのに、数分後に隣家でキッチンテーブルを囲んでいる。メンバーは花穂姉ちゃんだけが入れ替わっているが……
「塁さん、資料ありがとう」
「いえ、お安い御用です。なんなりと蒼太に申しつけてください!」
「おい、そこで俺の名前を出すんじゃない」
頭の中を整理しようとするが、話がよく飲み込めていない部分がある。
俺の知る限り、結城加奈子さんの家は建設会社だ。
それも、先代から現社長が継いでいる。
「蒼太君、なにか聞きたそうな顔してるわね?」
「加奈子さんにも聞いたことがないぞ。結城社長にお兄さんがいることや、お前が養子でクリスティーナ・結城が本名だってこと」
「あら? 別に言う必要があることではないでしょ?」
確かに加奈子さんの口からは、あの方はとても頭がよい……としか聞いたことがない。
しかし、もうひとつ絶対的におかしな点がある。
「なんで、うちの姉は気づいてないんだ? 加奈子さんが黙ってるからか?」
「黙ってるというか……言う必要がない、取るに足らない、または言いたくない出来事だからでしょ」
「蒼太、副社長から馬鹿姉妹について聞いた。少し言っておきたいことがある」
◇◇◇
午前一〇時半過ぎ。
来栖有紀と青山塁の口から語られた話の内容。
それは、すべて青山姉妹の度が過ぎたブラコンっぷりについてだった。
「つまり、塁姉と来栖は俺をあのブラコン変態姉妹から守ると?」
「仮にも戸籍上の姉弟だぞ。お前も姉から自立しろ、蒼太」
「そうね。昨日言ったように自立を目指して距離を置く、ごく自然体にね」
言ってることはわかるが、あの姉妹を理解していないようだ。
そんな簡単な相手ではない。武勇と英知の姉妹にどう立ち向かえと言うんだ。
「俺も甘え過ぎないようには気を付けるよ」
「副社長、いい考えがあります! 紗月情報では、蒼太は早撃ちガンマンです。数撃たせて既成事実さえ作っちまえばこっちのもんです!」
「いい考えね、一理あるわ。蒼太君、今晩突きなさいっ」
来栖と塁姉が悪い顔をしてニヤニヤしている……
実はこの二人も、うちの姉二人も危険因子じゃないのか。
危ない隣人が増えた次は、危ない横のつながりが増えた。
「だから、やっちゃダメなんだろ? 俺のトラウマがなんとかって……」
「うん、ダメ。今はまだしないよ」
「蒼太、切ないな! 歌にすればあれ、大きなのっぽのフルチン……」
「ソータ、ふるちん」
「塁姉、名曲を汚すんじゃない! 美果ちゃん真似しないように!」
そのあと一一時まで話し込んで、塁姉は帰宅。
俺も花穂姉ちゃんに、コンビニへ行くと言って出て来たので家に戻ることにした。
気が重い。姉二人VS従姉二人が水面下で勃発寸前……
______________________________
あとがき
※「あねしーくれっとっ」はこの話で終了です。
※次回はショートストーリーになります。
隣人宅で抱腹絶倒している真っ最中だ。目の前にいるこいつ、来栖有紀が原因。
「ぷっ! うくく……うはははっ! クリスティーナだって!?」
「失礼な人ね。本名明かしただけで、大笑いするなんて……」
こうして来栖邸の居間で笑い転げている間、塁姉は勝手口側の駐車場に車を移動させた。これは俺が来栖有紀との関連を、花穂姉ちゃんに知られないための措置らしい。なにかが動き始めている。俺の知らない水面下で……
「クリスティーナ! わははっ!」
来栖有紀ではなく、クリスティーナ・結城。
本来なら俺の従姉にあたる関係になるのだろうか。
奇しくも、ここに青山家の従姉と結城家の従姉が揃ったわけだ。
「蒼太君、ふざけ過ぎっ」
「すまん。来栖としばらく会えないと思ってたから……」
「そうね」
「でも、会えてよかった」
キッチンの方から勝手口を閉会する音と共に、塁姉が美果ちゃんと家に入って来た。来栖有紀と俺の距離感に目を丸くしている。ちょっと、接近し過ぎたようだ。
「お邪魔したか? 蒼太、副社長と突き合ってるのか?」
グリングリンと腰を前後させて聞いてくる。
「塁姉、来栖とは月曜に知り合ったばかりだ。花穂姉ちゃんに内緒でテスト勉強を教えてもらった恩人だ。というか、その下品な動きやめてくれ……」
ついさっきまで自宅のキッチンテーブルを四人で囲んで座っていたというのに、数分後に隣家でキッチンテーブルを囲んでいる。メンバーは花穂姉ちゃんだけが入れ替わっているが……
「塁さん、資料ありがとう」
「いえ、お安い御用です。なんなりと蒼太に申しつけてください!」
「おい、そこで俺の名前を出すんじゃない」
頭の中を整理しようとするが、話がよく飲み込めていない部分がある。
俺の知る限り、結城加奈子さんの家は建設会社だ。
それも、先代から現社長が継いでいる。
「蒼太君、なにか聞きたそうな顔してるわね?」
「加奈子さんにも聞いたことがないぞ。結城社長にお兄さんがいることや、お前が養子でクリスティーナ・結城が本名だってこと」
「あら? 別に言う必要があることではないでしょ?」
確かに加奈子さんの口からは、あの方はとても頭がよい……としか聞いたことがない。
しかし、もうひとつ絶対的におかしな点がある。
「なんで、うちの姉は気づいてないんだ? 加奈子さんが黙ってるからか?」
「黙ってるというか……言う必要がない、取るに足らない、または言いたくない出来事だからでしょ」
「蒼太、副社長から馬鹿姉妹について聞いた。少し言っておきたいことがある」
◇◇◇
午前一〇時半過ぎ。
来栖有紀と青山塁の口から語られた話の内容。
それは、すべて青山姉妹の度が過ぎたブラコンっぷりについてだった。
「つまり、塁姉と来栖は俺をあのブラコン変態姉妹から守ると?」
「仮にも戸籍上の姉弟だぞ。お前も姉から自立しろ、蒼太」
「そうね。昨日言ったように自立を目指して距離を置く、ごく自然体にね」
言ってることはわかるが、あの姉妹を理解していないようだ。
そんな簡単な相手ではない。武勇と英知の姉妹にどう立ち向かえと言うんだ。
「俺も甘え過ぎないようには気を付けるよ」
「副社長、いい考えがあります! 紗月情報では、蒼太は早撃ちガンマンです。数撃たせて既成事実さえ作っちまえばこっちのもんです!」
「いい考えね、一理あるわ。蒼太君、今晩突きなさいっ」
来栖と塁姉が悪い顔をしてニヤニヤしている……
実はこの二人も、うちの姉二人も危険因子じゃないのか。
危ない隣人が増えた次は、危ない横のつながりが増えた。
「だから、やっちゃダメなんだろ? 俺のトラウマがなんとかって……」
「うん、ダメ。今はまだしないよ」
「蒼太、切ないな! 歌にすればあれ、大きなのっぽのフルチン……」
「ソータ、ふるちん」
「塁姉、名曲を汚すんじゃない! 美果ちゃん真似しないように!」
そのあと一一時まで話し込んで、塁姉は帰宅。
俺も花穂姉ちゃんに、コンビニへ行くと言って出て来たので家に戻ることにした。
気が重い。姉二人VS従姉二人が水面下で勃発寸前……
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あとがき
※「あねしーくれっとっ」はこの話で終了です。
※次回はショートストーリーになります。
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