147 / 217
【本幕・第9章】あねあにみっくす双撃っ 後編 !
2.変人と天才の祝勝会に混ざりますねっ!
しおりを挟む
五月二七日、午後四時。放課後に中間テストの順位が発表された。
各学年約二四〇名のうち、上位五〇名だけが掲示される。
掲示されると言っても、昔のように模造紙に張り出される様式ではない。
各々が所持する学内既定のタブレット端末内に配信されるのだ。
下からざっと名前を見ていくと、スズや里志の名前がないのを確認。
「あいつら……今回、勉強したのか?」
授業が終わり、自分の順位を確認している生徒が周りに何人かいる。
里志はガクリと肩を落として静かに教室を去って行った。
様子から察するに、結果が芳しくなかったようだ。
五〇位から上を順番に見るが、二〇位まで名前なし。
本当に二〇位以内に入ってしまったのか。それとも、見落としたのか。
「ご、五位!?」
青山蒼太の名前の前に、五と書かれている。中間テスト学年五位の快挙だ。
二年の一位は来栖有紀。花穂姉ちゃんは二位、加奈子さんが三位。三年の一位は御子柴龍司と書かれている。毎回一位というのは本当らしい。
(――来栖からメール……)
腕の端末が光り出した。来栖の名前は姉たちが端末を盗み見したときのことを考えて、男の名前に変えてある。名前は適当な名字と名前を合わせて登録した。
『五位おめでとう。わたしと御子柴君の首位防衛祝いも兼ねて、今夜うちで祝勝会を行います。御子柴君は部活に少し顔を出してから来るので、蒼太君はいったん家に帰って、花穂さんの顔色を見てから来てください』
なるほど、先週はテスト後の慰労会、今週は祝勝会というわけか。
そして、花穂姉ちゃんの顔色を見てから、要はうまく言い訳して出て来いと……
午後六時、花穂姉ちゃんから電話が入った。
順位が発表されて緊張がほぐれたのか、外食したい気分になったそうだ。
家に迎えに来た加奈子さんの家の車で出掛けてしまった。
『ごめん、蒼太。夕飯なんだけど、お弁当代置いてるから』
「うん、大丈夫だ。適当に弁当買って食べる」
キッチンテーブルに千円札が一枚置かれている。
それを手に取って、すぐに来栖邸の勝手口に向かった。
「――おっと、施錠だ」
鍵を閉めて、東側の小道から自宅の裏側を通って来栖邸西側の勝手口へ到着。
歩きながら、今から向かうと来栖に連絡した。間もなく姿を現すだろう。
「蒼太君、こんばんは。さ、早く入って」
珍しく白地のカットソーと、淡いグリーンのスカートを穿いた私服姿の来栖がいる。眼鏡をかけず、髪型も後ろで一本に束ねるスタイルだ。
「制服以外でお前の普通の格好見るの初だな」
「ご褒美要求しておいて忘れた? 普通の服着ろって」
そういえば、こいつがあまりにもおかしなコスプレばかりするから、言葉の弾みで『ご褒美に普通の服を着ろ』なんて言ってしまったのだ。
「もっとエロい要求すればよかった!」
「残念ね。また次頑張りなさい。御子柴君がもうすぐ来るわ」
◇◇◇
午後七時過ぎ、勝手口からミコ先輩が入って来た。
制服ではなく、上下黒のジャージを着ている。いったん家に帰ったようだ。
「いやあ、家から突っ走って来たぞ! クリス、飲み物くれ!」
「ミコ先輩の家ってどこですか?」
「あれ? 蒼太君知らなかったの? 四条春香さんの家のずっと向こう側よ」
トクトクとコップに麦茶を注ぎながら来栖が答える。
注がれた麦茶をゴクゴクと喉を鳴らしながら飲むミコ先輩。
いろんな意味で豪快な人間だ。どこか紗月姉に通じるところがある。
「義弟は五位だな。次はお前も一位奪取しろ!」
「それは無理でしょ……今回はまぐれみたいなもんだし」
「そうでもないわね。御子柴君とわたしが教えれば可能性あるかも?」
来栖邸の食卓には、オードブルのセットが用意してある。
和食と洋食が入り混じったような感じのメニューだ。
「クリス、もう腹ペコだ。食っていいか?」
「俺も花穂姉ちゃん出掛けちゃって……夕飯なしだから」
「手料理じゃなくて申し訳ないけど。そうね、食べましょう」
目の前で食事にがっつくミコ先輩、いや御子柴龍司は大した人物だ。
こんな男がなぜ四条春香とくっつかなかったのか……
同じ剣道家で幼馴染で、どちらも成績優秀。阿吽の呼吸とまで言わないが、公園で見た二人のやり取りは夫婦漫才のそれに近い。
「ミコ先輩は四条先輩と合いそうな気がするんですけど?」
「義弟、四条の家は親父も祖父も家柄にうるさいんだ」
「蒼太君、彼の本名は司馬劉。父母は帰化人なの……」
各学年約二四〇名のうち、上位五〇名だけが掲示される。
掲示されると言っても、昔のように模造紙に張り出される様式ではない。
各々が所持する学内既定のタブレット端末内に配信されるのだ。
下からざっと名前を見ていくと、スズや里志の名前がないのを確認。
「あいつら……今回、勉強したのか?」
授業が終わり、自分の順位を確認している生徒が周りに何人かいる。
里志はガクリと肩を落として静かに教室を去って行った。
様子から察するに、結果が芳しくなかったようだ。
五〇位から上を順番に見るが、二〇位まで名前なし。
本当に二〇位以内に入ってしまったのか。それとも、見落としたのか。
「ご、五位!?」
青山蒼太の名前の前に、五と書かれている。中間テスト学年五位の快挙だ。
二年の一位は来栖有紀。花穂姉ちゃんは二位、加奈子さんが三位。三年の一位は御子柴龍司と書かれている。毎回一位というのは本当らしい。
(――来栖からメール……)
腕の端末が光り出した。来栖の名前は姉たちが端末を盗み見したときのことを考えて、男の名前に変えてある。名前は適当な名字と名前を合わせて登録した。
『五位おめでとう。わたしと御子柴君の首位防衛祝いも兼ねて、今夜うちで祝勝会を行います。御子柴君は部活に少し顔を出してから来るので、蒼太君はいったん家に帰って、花穂さんの顔色を見てから来てください』
なるほど、先週はテスト後の慰労会、今週は祝勝会というわけか。
そして、花穂姉ちゃんの顔色を見てから、要はうまく言い訳して出て来いと……
午後六時、花穂姉ちゃんから電話が入った。
順位が発表されて緊張がほぐれたのか、外食したい気分になったそうだ。
家に迎えに来た加奈子さんの家の車で出掛けてしまった。
『ごめん、蒼太。夕飯なんだけど、お弁当代置いてるから』
「うん、大丈夫だ。適当に弁当買って食べる」
キッチンテーブルに千円札が一枚置かれている。
それを手に取って、すぐに来栖邸の勝手口に向かった。
「――おっと、施錠だ」
鍵を閉めて、東側の小道から自宅の裏側を通って来栖邸西側の勝手口へ到着。
歩きながら、今から向かうと来栖に連絡した。間もなく姿を現すだろう。
「蒼太君、こんばんは。さ、早く入って」
珍しく白地のカットソーと、淡いグリーンのスカートを穿いた私服姿の来栖がいる。眼鏡をかけず、髪型も後ろで一本に束ねるスタイルだ。
「制服以外でお前の普通の格好見るの初だな」
「ご褒美要求しておいて忘れた? 普通の服着ろって」
そういえば、こいつがあまりにもおかしなコスプレばかりするから、言葉の弾みで『ご褒美に普通の服を着ろ』なんて言ってしまったのだ。
「もっとエロい要求すればよかった!」
「残念ね。また次頑張りなさい。御子柴君がもうすぐ来るわ」
◇◇◇
午後七時過ぎ、勝手口からミコ先輩が入って来た。
制服ではなく、上下黒のジャージを着ている。いったん家に帰ったようだ。
「いやあ、家から突っ走って来たぞ! クリス、飲み物くれ!」
「ミコ先輩の家ってどこですか?」
「あれ? 蒼太君知らなかったの? 四条春香さんの家のずっと向こう側よ」
トクトクとコップに麦茶を注ぎながら来栖が答える。
注がれた麦茶をゴクゴクと喉を鳴らしながら飲むミコ先輩。
いろんな意味で豪快な人間だ。どこか紗月姉に通じるところがある。
「義弟は五位だな。次はお前も一位奪取しろ!」
「それは無理でしょ……今回はまぐれみたいなもんだし」
「そうでもないわね。御子柴君とわたしが教えれば可能性あるかも?」
来栖邸の食卓には、オードブルのセットが用意してある。
和食と洋食が入り混じったような感じのメニューだ。
「クリス、もう腹ペコだ。食っていいか?」
「俺も花穂姉ちゃん出掛けちゃって……夕飯なしだから」
「手料理じゃなくて申し訳ないけど。そうね、食べましょう」
目の前で食事にがっつくミコ先輩、いや御子柴龍司は大した人物だ。
こんな男がなぜ四条春香とくっつかなかったのか……
同じ剣道家で幼馴染で、どちらも成績優秀。阿吽の呼吸とまで言わないが、公園で見た二人のやり取りは夫婦漫才のそれに近い。
「ミコ先輩は四条先輩と合いそうな気がするんですけど?」
「義弟、四条の家は親父も祖父も家柄にうるさいんだ」
「蒼太君、彼の本名は司馬劉。父母は帰化人なの……」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
878
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる