姉らぶるっ!!

此葉菜咲夜

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【序幕・第5章】四条先輩爆乳初撃っ

1.頭に競泳水着を被せないでくださいっ!

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「姫咲スポーツクラブのワンデイチケット?」

 五月一日の朝一〇時半。
花穂姉ちゃんから、チケットを一枚受け取った。
高校の近くにある姫咲スポーツクラブのチケット。

 紗月姉さつきねえが小学生の頃から柔道と水泳を習っていた場所だ。
大浴場、ジム、体育館、各種習い事の設備が充実している。

「うん、五〇〇円のプールのみのワンデイチケット。今日は平日で人も少ないから行こうと思ってね」
「確かあそこは指定水着じゃないと温水プール入れないよな?」
「ビキニ禁止。競泳水着しかダメだから、紗月姉のお古を借りるの」

 花穂姉ちゃんの今の服装は、トップスにミニスカ……ノーパン。
なるほど、パンツを穿いてないのは水着を着るためだったのか。




 家を出て通学路を歩くこと一五分、スポーツクラブに到着した。
広い駐車スペースがあるが、平日ということもあって車は少ない。

「俺、水着レンタルしてくるよ。姉ちゃんはプールで待っててくれ」
「了解っ! じゃあ、着替えて来るね!」

花穂姉ちゃんが走り去った後、受付でチケットを見せて水着をレンタルした。

「面倒だな。トイレで着替えるか……」

 個室で用を足し、ナイロンで個装されたレンタル水着を取り出すと……
サイズが小さめの競泳パンツが出現した。
持参したインナーの上に競泳パンツを着用する。








◆◆◆◆◆◆








 プールサイドへ行くと、花穂姉ちゃんが誰かと話をしている。

「あっ、蒼太! こっちこっち! 四条先輩も泳ぎに来たんだって」

 四条春香、同じ高校の三年で生徒会の会計だ。
紗月姉の後輩で、花穂姉ちゃんと俺の先輩である。
家はこの近くで剣道場を営んでおり、紗月姉は大学に籍を置きながら門下生扱いとなっている。

「蒼太郎、久しぶりだな。入学おめでとう。数ヶ月前に見たときより、ずいぶんと立派になったな」
「お久しぶりですね。高校生になってもって呼ぶんですね……」
蒼郎そうろうのほうがいいのか?」
「それは胸にグサっと来るんで却下です!」
「その競パン、サイズ合ってないな」

 四条先輩は、俺の小さな競泳パンツを指差しながら微笑んだ。
姉たちと仲が良いこの先輩からは、蒼太郎そうたろうというあだ名で呼ばれている。

「うん、蒼太は立派になった。先輩の胸元を見ても反応しないとは……」

 花穂姉ちゃんはしゃがみ込んで、競泳パンツの膨らみを確認している。
四条先輩は大和撫子に相応しいきれいな顔立ちで、そのスタイルは紗月姉を凌駕する。湿った長めの黒髪をトップにまとめ、首筋や太ももに滴る水。垂涎ものの色っぽさだ。

「からかうのやめてくれよっ! これ小さ過ぎるんだよ……」

 中学時代、一時的に水泳部に所属していたおかげで泳ぎは得意だ。
水泳を始めたきっかけは、ただ女子の水着姿が見たいという単純な動機だった。

「ねえ、蒼太。お姉ちゃんの水着姿どう?」
「うん、すごくいい。似合ってる」
「蒼太水着フェチだもんねっ!」

 こうして芸術的な健康美を、姉妹で水着フェチだのマニアだの揶揄してくる。
先日の紗月姉と花穂姉ちゃんのお土産が水着だったのは、俺が水着好きなのを知っているからだ。

「蒼太郎、わたしと競争してみないか?」
「え? 先輩泳ぐの得意でしっけ……」

 プールへ向かう四条先輩のあとに続く。
目線が爆乳に突き刺さりそうだが、ここは気を紛らわさねば……
そんなことを考えていると、妙な点に気付いた。

「ん? どうした? 蒼太郎」
「先輩、首筋の絆創膏……」
「ああ、これか。蚊に刺されたんだ」
「そうなんですか……」

 理由はわからないが、それ以上聞かないほうがいい気がした。
先輩もすぐに目線を外して、聞かないでくれという感じだ。

 その後、四条先輩と五本ほど泳ぎの競争をしたが、一度も勝てなかった。
泳いでいる最中はまだいいとして、水からあがった瞬間の水着の張りつき具合や、バチンとお尻の食い込みを直す仕草に魅せられては集中を欠く。

 花穂姉ちゃんは、少し離れた場所でお風呂に浸かるようにプカプカ浮いているだけだ。学校で行うスポーツは全般的に得意だが、優等生ぶりっこをする必要がない場所では実力を見せない。特に四条先輩とは幼い頃から姉妹あねたちの友人でもあり、生徒会内で加奈子さんとこの人だけには気を許しているようだ。




「姉ちゃん、そろそろ着替えて昼御飯食べに行くか?」

 時間は正午を過ぎている。腹の虫も鳴り出した。

「先に着替えてて! 更衣室はこっち、ついて来て!」

 案内されるまま広い更衣室に入ると、花穂姉ちゃんはプールに戻って行った。
着替えようとしたときだった……
入口から女性集団が入って来たのだ。そして、水着を脱ぎ出した。
若い女性の乳房や陰毛が水着から連続して飛び出す状況だ。

「あれ……ここ女子更衣室じゃないか!?」

 入口付近に女性集団がいるため、出るに出られない。
音を殺しながら目の前にあるロッカーに入ってやり過ごすことにした。

(なんなんだ、この状況は……)

 ロッカーの中で女性集団が去るのを待っているが、まったくその気配がない。
小窓から少しだが外の様子が見える。
入口付近からここは死角になっているから、ひとまず安心だろう。

「……蒼太、ごめん。更衣室間違えた」

 バタンとロッカーを開いたのは、水着を脱いだ全裸の花穂姉ちゃんだった。
お手頃サイズの乳房、陰毛は少ない。

「いきなり裸かよ! どうすんの!? 出られないぞ!」
「これかぶって! いざってときに顔バレしないからっ!」

 スポッとかぶせられたのは……花穂姉ちゃんが着ていた競泳水着だった。
目の前には水着の白い裏地が見える。塩素と汗と香水の匂いがロッカーに漂った。

「これは……某マンガの変態ヒーロー状態だな……」
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