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2.つかめない宰相補佐
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シリル・リーツ・パスコヴィラダ。
その名が結婚相手として伝えられて、私は耳を疑った。
「それって……!」
「そうだ。先日爵位を継いだばかりの、パスコヴィラダ公爵だ」
信じられない。
最近、有能だって噂を耳にしたわ。
星の精霊系列の……叡星、だったかしら? その加護を受けている家系の、特別な才能の持ち主。
なんでも、その加護を国政に活かして、宰相補佐の座にあるって。
能力だけなら国内の結婚相手の有望株も有望株よ……それが、恋愛市場で余っている私と?
しかも、自分から申し込みに来たわけでもなく、婚約期間を置くわけでもなく、いきなり結婚!?
「お断りします」
私の拒絶に、居間の空気が一気に冷え込んだ。
お母様はわなわなと震え、ヒステリックに喚きだす。
「ダリア……! こんなまたとないお話を、あなたは!!」
「だって、突然結婚!? 貴族の振る舞いではないわ!!」
婚約期間もない結婚は、私を軽んじているとしか思えない。
会ったこともない公爵が私と結婚するなんて……。
これは、血筋目当てよ!!
建国の祖王と水精霊の末裔の血。
パスコヴィラダ公爵ほど家柄のいい家なら、それを取り込むことで血の正当性をかさ上げできる。
ゆくゆくは、王家にとって代われるほど。
私の気持ちなんて、誰も考えていない。
こんな、血筋目当ての形でしか結婚できないって、恋愛に対する憧れを砕かれたこと、誰も気づいていない。親でさえ。
鼻息を荒くした私に、お父様はゆっくり首を横にした。
「この結婚は、王家の推奨も受けている」
……なんですって?
王家まで出張ってくる……私の結婚に?
「王家が……?」
「我が家の血は、由緒正しく貴族の中でも一線を画するものだ。本来、王家が取り込むべきもの……しかし未だ為されていないもの。そこで、パスコヴィラダ公爵家がお前を受け入れることになったのだ」
「……なんだ、いよいよ目当てがはっきりしてきたわね」
血を利用する気を捨てていないのね。
王家は、祖王の血統が欲しい、けど、『反逆のレミントンの娘』をそのまま王妃にできない。
だから、私をパスコヴィラダ公爵に押し付けて、『レミントンではない祖王の血を持つ子』をつくらせるつもりなんだ。
「私を欲しい条件の人間をつくるための、駒にする気なのね」
「ダリア!」
お父様の一喝に、お母様がさめざめと続く。
「……我が家は困窮しているのよ。もう、借金の期限も近いの。今回の結婚話を受けるなら、王家から支援を受けられるし、パスコヴィラダ家から莫大な資金をいただけるのよ」
「娘をお金で売るの!」
「一家全員路頭に迷うのどちらがいいのよ!」
正直、私は路頭に迷っても結婚でも、どっちも最悪よ。
でも、お母様もお父様も、お兄様まで、私の結婚で借金から解放されたいみたい。
私の意思なんて無視して、公爵と顔を合わせる日が伝えられた。
˚˙༓࿇༓˙˚
王家に推されたからって、個としては魅力のない娘を結婚相手に迎える男。
どんな野心満々の冷徹男かしら。
温かみのない瞳をした策略家?
それとも権力欲に果てのない打算的な冷血漢。
そんな想像をしていたのだけど。
公爵邸に訪れて対面したパスコヴィラダ公爵は、柔和な物腰の持ち主だった。
それどころか。
その名が結婚相手として伝えられて、私は耳を疑った。
「それって……!」
「そうだ。先日爵位を継いだばかりの、パスコヴィラダ公爵だ」
信じられない。
最近、有能だって噂を耳にしたわ。
星の精霊系列の……叡星、だったかしら? その加護を受けている家系の、特別な才能の持ち主。
なんでも、その加護を国政に活かして、宰相補佐の座にあるって。
能力だけなら国内の結婚相手の有望株も有望株よ……それが、恋愛市場で余っている私と?
しかも、自分から申し込みに来たわけでもなく、婚約期間を置くわけでもなく、いきなり結婚!?
「お断りします」
私の拒絶に、居間の空気が一気に冷え込んだ。
お母様はわなわなと震え、ヒステリックに喚きだす。
「ダリア……! こんなまたとないお話を、あなたは!!」
「だって、突然結婚!? 貴族の振る舞いではないわ!!」
婚約期間もない結婚は、私を軽んじているとしか思えない。
会ったこともない公爵が私と結婚するなんて……。
これは、血筋目当てよ!!
建国の祖王と水精霊の末裔の血。
パスコヴィラダ公爵ほど家柄のいい家なら、それを取り込むことで血の正当性をかさ上げできる。
ゆくゆくは、王家にとって代われるほど。
私の気持ちなんて、誰も考えていない。
こんな、血筋目当ての形でしか結婚できないって、恋愛に対する憧れを砕かれたこと、誰も気づいていない。親でさえ。
鼻息を荒くした私に、お父様はゆっくり首を横にした。
「この結婚は、王家の推奨も受けている」
……なんですって?
王家まで出張ってくる……私の結婚に?
「王家が……?」
「我が家の血は、由緒正しく貴族の中でも一線を画するものだ。本来、王家が取り込むべきもの……しかし未だ為されていないもの。そこで、パスコヴィラダ公爵家がお前を受け入れることになったのだ」
「……なんだ、いよいよ目当てがはっきりしてきたわね」
血を利用する気を捨てていないのね。
王家は、祖王の血統が欲しい、けど、『反逆のレミントンの娘』をそのまま王妃にできない。
だから、私をパスコヴィラダ公爵に押し付けて、『レミントンではない祖王の血を持つ子』をつくらせるつもりなんだ。
「私を欲しい条件の人間をつくるための、駒にする気なのね」
「ダリア!」
お父様の一喝に、お母様がさめざめと続く。
「……我が家は困窮しているのよ。もう、借金の期限も近いの。今回の結婚話を受けるなら、王家から支援を受けられるし、パスコヴィラダ家から莫大な資金をいただけるのよ」
「娘をお金で売るの!」
「一家全員路頭に迷うのどちらがいいのよ!」
正直、私は路頭に迷っても結婚でも、どっちも最悪よ。
でも、お母様もお父様も、お兄様まで、私の結婚で借金から解放されたいみたい。
私の意思なんて無視して、公爵と顔を合わせる日が伝えられた。
˚˙༓࿇༓˙˚
王家に推されたからって、個としては魅力のない娘を結婚相手に迎える男。
どんな野心満々の冷徹男かしら。
温かみのない瞳をした策略家?
それとも権力欲に果てのない打算的な冷血漢。
そんな想像をしていたのだけど。
公爵邸に訪れて対面したパスコヴィラダ公爵は、柔和な物腰の持ち主だった。
それどころか。
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