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13.父のほほえみに七斗エンドを決意するも、まだ見ぬ最推しに心をはせる……くっ!皆に幸せになって欲しい!!!

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 私がカタカタしながら中腰でそのまま硬直していると、

「ほら!彩衣!帰るよ!!もー!」

 と、鈴ちゃんが引っ張ってくれた、しかし足がうまく動かない。
 足がもつれ……あ、ごめん、鈴ちゃん。

「きゃあ!」
「へぶっ!」

 私は変な声を出して、階段の上から鈴ちゃんに乗りかかる形で鈴ちゃんもろとも階段から落ちた。

「いった~!」
「いたた……。」

 私たち二人は階段から落ち、賽銭箱の横で重なり合いながら苦痛の声を上げていた。
 賽銭箱の横に何か縁あるな。
 と、思っていたら……・

「おやおや、パンツ見えるのはおじさん嬉しいけど、かわいいお嬢さんたちが怪我して傷残るのはおじさん悲しいかな。怪我ない?」

 頭上から……攻略したい!!!なんで攻略不可なの!!!
 と、思っていたイケオジの声がして……私はうつむいたまま黙っていた。
 すると、

「ちょっと!彩衣!いつまで乗ってんのよ!早くどいてよ!」

 鈴ちゃんが怒りの頂点で起き上がろうとしている……。
 私はしぶしぶ……


 いや、見たいんだけど!見たいし話したいんだけどね!


 無理じゃん!無理じゃね?そうでしょ!?


 体を起こし、顔を上げ、九五さん……神薙くんのお父さんで、攻略不可キャラのイケオジキャラを見た。


「あららー、血出てるね二人共。救急箱持ってくるから待っててね。」


 そう言うと、九五さんは笑顔で家の中へとゆったりと去って行った……。


「ひーーーー!!!!!!九五っさん!!!!!イケオジに出会えた!!!!しかも手当!!!手当してもらうとか!!!!!!無理!!!」


 私が立ったまま顔面に手を当て、仰け反りながら叫んでいると。


「ちょっとあんたね!!!わけわかんないこと叫んでないで謝んなさいよ!!!!」


 おっと鈴ちゃんの怒りがMAXだ。やべぇ。
 立ち上がりながらスカートや服の砂をはらいつつ鞄を持ち直して髪を整えている。

 あ、膝から血出てる。


「ごめん!ごめんね、鈴!」


 私はさすがに血を見て申し訳ないことをしたと謝る。

「まったく!おかしいおかしいと思ってたけど、最近のあんたほんとおかしいわ!」
「あ、あはは……まぁ、前からほら、テンション高めのキャラだし……」
「それとこれとは別!」
「すみません……」
「って!あんたも血出てんじゃない!」
「え?両膝と左手の手のひら!あたしより酷いのに何元気にしてんのよ!」
「あー……いや、多分、アドレナリンが大量放出されて……」
「はぁ?」
「まぁ、ほんと……ごめんね……」

 私がしゅんとすると、

「……まぁ、いいけど。あんたがバカやるのは前からだし」

 鈴ちゃんはどうやら許してくれたらしい。

 これに懲りて、もうあまりゲームのことに夢中になるのは控えよう……・。
 いやでも九五さんに会っちゃったら硬直しちゃうだろー。
 それは仕方ないよ。
 うん。

 全然懲りてねぇな、あたし。

 まぁ、これからは人を巻き込むのはやめよう。うん。

 すると、ガラガラという音と共に九五さんが救急箱を持ってやってきた。


 おっふ!九五さん!!!ヤバイ!にやける!!!



「救急箱持ってきたよ~」


 九五さんは軽い感じに救急箱を上げて近づいてくる。


 近づいてくるーーーーーー!!!!!!!


「ほらほら、階段で悪いけど座って」


 私たちが立っていると、九五さんが、座って。と、促してくれる。

「すみません、ほんと」

 鈴と私は座る。

 私は九五さんをガン見していた。


 やべぇ……本物の九五さんだ。


 ゲームの、画面で、何で攻略できないのーーーー!!!!!


 と、ジタバタもがいでた九五さんだ……イケオジ……。


 はぁ……白髪混じりの短髪かっこいい……。

 シワのあるお顔も素敵です!息子さんに少し似てますね!あ、息子さんが似てるのか!

 丸い眼鏡が素敵なんだよな~~~~!!!!神主さんなのに!!!

 そしてなんといっても、あご髭……無精ひげっぽい、短い少し白髪混じりのあご髭が


 た ま ら な い ~~~~~~~~!!!!!!


 ジョリジョリして!!!ジョリジョリして!!!!


 などと思いながらガン見していると、


「で、そっちのお嬢さんはオジサンに何か興味があるのかな?女子高生に手を出すのは少しいけないんだけどな~」


 あっはっは。と、笑いながら鈴の手当をしている九五さんは言う。

 え!?てか鈴手当してもらってんの!?
 え!?

 あ、それより答えなきゃ!

 私は慌てて答える。

「あの……・神薙くんのお父さん……かな?って思って」

 と、咄嗟に嘘をつく。わかってるけど。

「お、七斗知ってんの?同級生?」

 はい、君は終了。と、言いながら今度は私の方へやってくる。

「うわー、君、凄い血だらけだね。大丈夫?」
「え?あ、はい!大丈夫です!」
「……ははは!元気でよろしい!」

 九五さんはそう言って、



 私の


 頭に



 手を



 乗せた。





(おああああああああああああああああああああ!!!!!!)




 必死に叫びだしたいのを堪えて意識を飛ばした。

「じゃあ、膝からやるよ、しみるからねー」

 なんか足に痛み感じてたけどそんなもの意識を飛ばすのに必死でほぼ感じてないも同然だった。


 なんとか心をしずませていたら、私の両膝には、ガーゼがぺたりと貼られていた。

「あとは左手だね」
「あ……はい」

 さっき、マジマジと見ていたせいもあり、時間が経過したおかげもあり、だいぶ私は九五さんに慣れてきた。

 でも間近で見るイケオジマジイケオジ。尊いよー。涙出る。

「で、七斗の同級生?」

 九五さんが聞いてくる。

「あ!はい!同じクラスです!」

 私は慌てて答える。

「へーそうか。あいつ暗いから友達いないだろ」
「え……えーっと」

 私は鈴を見る。

「そんなことないですよ。毎日みんなでお昼ご飯屋上で食べてるみたいですし。」

 あー……鈴、それは……。

「……そう」

 九五さんは少し低い声で返す。

「で!でも、一凛っていう女子と仲いいんですよ!付き合うのも時間の問題かなー。」

 私は慌ててフォローする。

「そうか……仲良くやってんのか……」

 ふっと……九五さんはどこか嬉しそうな表情をした……。


 九五さん……七斗くんのこと心配してるんだな……。


 これは七斗くんエンドに向けて私も頑張るしかないな!


 あ!でも!



 そこで私はまだ見ぬ最推しのことを思い出した……・。



 そう……隠しキャラである最推しこそ、私的に一凛と最も幸せになってほしい彼なのだ……。


 そして私はいつの間にか鈴と一凛を心の中でも呼び捨てで呼んでいる……。
 慣れって恐ろしい。
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