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第9話 異世界の屋敷は一筋縄ではいかない
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その湖には漁船がいくつも出て、漁師が漁をしていた。
湖面に太陽がきらめき、涼しい風が湖面を揺らす。
そのすぐ側にある大きな屋敷。
魔王軍諜報部用の三階建ての保養施設。何十人が泊まれるほどの広さと設備。
四人で住むには十分すぎるほどの屋敷だった。
すぐ側には家庭菜園にできる土地もあり、俺の注文通りだった。
屋敷の中は定期的に掃除に入っているらしく、綺麗だった。
「ノアール様、マモルさん、申し訳ありませんが、少し外でお待ち願いますが、取り急ぎ生活に必要な部分だけ、掃除しますから」
「メイ、わたくしも手伝います」
「いいえ、ノアール様にそんなことはさせられません」
「なあ、二人とももう、王女とメイドの関係じゃなくて良いじゃないか? 普通の親子に戻っても」
メイとノアールは俺の言葉に顔を見合わせた。
「……お母様」
「ノアール」
メイは冷ややかなメイドの顔から、柔らかな母の顔になった。
ノアールも気を張った王女の顔から一人の少女の顔になる。
「もう、二人ともメイドでも王女でもないからな。俺たちの仲間だ」
「ぐずっぐず、よかったニャ。やっぱり家族は一緒が良いニャ」
「おい、なんでお前が泣いているんだよ」
俺は涙と鼻水でグズグズになっているネーラにタオルを渡してやった。
こいつってむちゃくちゃ、涙もろいんじゃないか? 情に厚いのだろう。やはり、ネーラで良かったのかもしれない。俺は自分の選択にほっとする。
しばらくすると屋敷の掃除も終わり、俺たちは自分が選んだ各部屋で休むことになった。
俺は最上階の一番良い部屋を選んだ。そのひと部屋だけで俺が転生前に住んでいたマンションより広いくらいだった。
部屋にはキングサイズのダブルベッド、重厚な机、ふかふかのソファー。壁には等身大の女性の肖像画が掛けられていた。
長いこがね色の髪、おっとりとした感じの優しそうな麗人。日傘を持って爽やかな赤いドレスに身を包み、こちらを流し目で見ていた。
「美人だな」
俺はまじまじと見た後、自然に口からこぼれ落ちた。
「あら、ありがとう。よく言われるわ」
鈴の音のようで、ずっと聞いていたくなるような声。
「いや、本当に美しいわ。ただ、美人過ぎてちょっと引くくらいだわ……って誰だ!?」
そこまで言ってから、初めてこの部屋には俺だけしかいないことに気がつく。
「あなたこそ誰かしら? ここはサラマンディーネ様の管轄のはずですよ。他の三人は魔族かハーフですが、あなたは人間ですよね」
その声は目の前の肖像画から聞こえてきた。
俺は肖像画裏を確認するが、隠し通路なども無かった。
「女性の裏をのぞき込むものではないですよ。殿方は後悔しますよ。とはいえ、このままでは話しづらいですか?」
そう言うと、肖像画の中から女性が出てきた。その女性は肖像画の女性そのままだが、女性の向こうがうっすらと見えるように透けていた。
「幽霊?」
「地縛霊ですわ。この屋敷の守護をしています」
「だったら、俺も少し前まで、自分の家を守っていたぜ。自宅警備隊として」
「あら、あなたもそうですの? 奇遇ですわね。わたし、マリーヌと呼んでくださいな」
「俺は伊江守だ。マモルでいい。サラマンディーネからこの屋敷を譲ってもらった。今日からここの主人は俺だ」
「あら、そうですの? わたしに連絡が来て無いのですが、あの人もうっかりさんですね」
確かにうっかり屋だな。そのおかげで俺が殺されかかったからな。
「ここに入ったって言うことは、鍵はお持ちですよね」
俺はサラマンディーネからもらった鍵を渡す。
「確かにこの鍵は所有権委譲の魔法が掛けられていますね。それではマモルをこの屋敷の主人として登録させていただきますね」
「登録って何するんだ?」
「簡単ですよ。あなたの体液の一部をいただきます」
そう言ってマリーヌは妖艶な表情を浮かべながら、怪しく舌なめずりをする。
え、もしかして……俺の初体験の相手は幽霊?
「は、はじめてなんで、優しくしてください」
俺はそう言ってそっと目を閉じた。
そっと、頬に触れられる冷たい指先。それは頬からスーと唇に移動すると、優しく口の中に侵入してくる。
俺は軽く口を開けると、そのしなやかな指先は俺の舌を優しくなでる。ただそれだけなのに、背中に快感が走る。
ああ、これからどんな快感が待ち受けているのだろうか?
「はい、お疲れ様でした。登録終了です」
「へ?」
「ですから、登録終了しました。なるべく優しくしましたから痛くなかったでしょう」
「あれ? 体液は? めくるめく快感は?」
「めくるめく快感なんて知りませんが、体液は先ほど指で取らせていただきましたよ」
「え、あれで終わり?」
「終わりです」
俺は膝から崩れ落ちた。幽霊でもこんな美人とできるなんてラッキーと胸躍らせていたのに! 男の純情を返しやがれ!
「それではわたしは絵に戻りますね」
そう言って、絵に戻ってしまった。
そうして、俺はハタと気がついた。マリーヌがこの絵から部屋を見ているってことは、オナニー一つできないのでは? まずい。部屋を変えよう。いや、待てよ。さっきマリーヌはノアールたちのことも言っていたな。もしかして、この屋敷内はマリーヌの監視下?
「あ、それから、エッチなことするときは言ってくださいね。目をつむっておきますから」
絵から顔だけ出してウインクする。
やっぱり、この屋敷失敗だ~! お金貯めて、出て行かないと……せっかくメイさんが何でも言うことを聞いてくれるって言っているんだから。
俺がそう決意したとき、ドアがノックされた。
湖面に太陽がきらめき、涼しい風が湖面を揺らす。
そのすぐ側にある大きな屋敷。
魔王軍諜報部用の三階建ての保養施設。何十人が泊まれるほどの広さと設備。
四人で住むには十分すぎるほどの屋敷だった。
すぐ側には家庭菜園にできる土地もあり、俺の注文通りだった。
屋敷の中は定期的に掃除に入っているらしく、綺麗だった。
「ノアール様、マモルさん、申し訳ありませんが、少し外でお待ち願いますが、取り急ぎ生活に必要な部分だけ、掃除しますから」
「メイ、わたくしも手伝います」
「いいえ、ノアール様にそんなことはさせられません」
「なあ、二人とももう、王女とメイドの関係じゃなくて良いじゃないか? 普通の親子に戻っても」
メイとノアールは俺の言葉に顔を見合わせた。
「……お母様」
「ノアール」
メイは冷ややかなメイドの顔から、柔らかな母の顔になった。
ノアールも気を張った王女の顔から一人の少女の顔になる。
「もう、二人ともメイドでも王女でもないからな。俺たちの仲間だ」
「ぐずっぐず、よかったニャ。やっぱり家族は一緒が良いニャ」
「おい、なんでお前が泣いているんだよ」
俺は涙と鼻水でグズグズになっているネーラにタオルを渡してやった。
こいつってむちゃくちゃ、涙もろいんじゃないか? 情に厚いのだろう。やはり、ネーラで良かったのかもしれない。俺は自分の選択にほっとする。
しばらくすると屋敷の掃除も終わり、俺たちは自分が選んだ各部屋で休むことになった。
俺は最上階の一番良い部屋を選んだ。そのひと部屋だけで俺が転生前に住んでいたマンションより広いくらいだった。
部屋にはキングサイズのダブルベッド、重厚な机、ふかふかのソファー。壁には等身大の女性の肖像画が掛けられていた。
長いこがね色の髪、おっとりとした感じの優しそうな麗人。日傘を持って爽やかな赤いドレスに身を包み、こちらを流し目で見ていた。
「美人だな」
俺はまじまじと見た後、自然に口からこぼれ落ちた。
「あら、ありがとう。よく言われるわ」
鈴の音のようで、ずっと聞いていたくなるような声。
「いや、本当に美しいわ。ただ、美人過ぎてちょっと引くくらいだわ……って誰だ!?」
そこまで言ってから、初めてこの部屋には俺だけしかいないことに気がつく。
「あなたこそ誰かしら? ここはサラマンディーネ様の管轄のはずですよ。他の三人は魔族かハーフですが、あなたは人間ですよね」
その声は目の前の肖像画から聞こえてきた。
俺は肖像画裏を確認するが、隠し通路なども無かった。
「女性の裏をのぞき込むものではないですよ。殿方は後悔しますよ。とはいえ、このままでは話しづらいですか?」
そう言うと、肖像画の中から女性が出てきた。その女性は肖像画の女性そのままだが、女性の向こうがうっすらと見えるように透けていた。
「幽霊?」
「地縛霊ですわ。この屋敷の守護をしています」
「だったら、俺も少し前まで、自分の家を守っていたぜ。自宅警備隊として」
「あら、あなたもそうですの? 奇遇ですわね。わたし、マリーヌと呼んでくださいな」
「俺は伊江守だ。マモルでいい。サラマンディーネからこの屋敷を譲ってもらった。今日からここの主人は俺だ」
「あら、そうですの? わたしに連絡が来て無いのですが、あの人もうっかりさんですね」
確かにうっかり屋だな。そのおかげで俺が殺されかかったからな。
「ここに入ったって言うことは、鍵はお持ちですよね」
俺はサラマンディーネからもらった鍵を渡す。
「確かにこの鍵は所有権委譲の魔法が掛けられていますね。それではマモルをこの屋敷の主人として登録させていただきますね」
「登録って何するんだ?」
「簡単ですよ。あなたの体液の一部をいただきます」
そう言ってマリーヌは妖艶な表情を浮かべながら、怪しく舌なめずりをする。
え、もしかして……俺の初体験の相手は幽霊?
「は、はじめてなんで、優しくしてください」
俺はそう言ってそっと目を閉じた。
そっと、頬に触れられる冷たい指先。それは頬からスーと唇に移動すると、優しく口の中に侵入してくる。
俺は軽く口を開けると、そのしなやかな指先は俺の舌を優しくなでる。ただそれだけなのに、背中に快感が走る。
ああ、これからどんな快感が待ち受けているのだろうか?
「はい、お疲れ様でした。登録終了です」
「へ?」
「ですから、登録終了しました。なるべく優しくしましたから痛くなかったでしょう」
「あれ? 体液は? めくるめく快感は?」
「めくるめく快感なんて知りませんが、体液は先ほど指で取らせていただきましたよ」
「え、あれで終わり?」
「終わりです」
俺は膝から崩れ落ちた。幽霊でもこんな美人とできるなんてラッキーと胸躍らせていたのに! 男の純情を返しやがれ!
「それではわたしは絵に戻りますね」
そう言って、絵に戻ってしまった。
そうして、俺はハタと気がついた。マリーヌがこの絵から部屋を見ているってことは、オナニー一つできないのでは? まずい。部屋を変えよう。いや、待てよ。さっきマリーヌはノアールたちのことも言っていたな。もしかして、この屋敷内はマリーヌの監視下?
「あ、それから、エッチなことするときは言ってくださいね。目をつむっておきますから」
絵から顔だけ出してウインクする。
やっぱり、この屋敷失敗だ~! お金貯めて、出て行かないと……せっかくメイさんが何でも言うことを聞いてくれるって言っているんだから。
俺がそう決意したとき、ドアがノックされた。
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