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第16話 異世界の魔王軍の結論
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「このままじゃ、キリがないよね」
ベレートはアゴに手を当てて、困ったな~と言う顔をする。
その顔は戦っている途中とは思えなかった。まるで今日のご飯は何にしようかと楽しそうに悩んでいるようだった。
「もう、終わりにしませんか?」
俺はお互いに手詰まりと見せかけて、停戦要求をしてみる。
その本音はせっかく溜まったエネルギーを無駄使いしたくなかったからだ。
「えー! やっとウォーミングアップが終わったとこなのに~。もうちょっと遊ぼうよ」
ベレートの瞳が怪しく光った。
あれでウォーミングアップなのか? 正直、俺はこれ以上、戦いたくはなかった。
「ナビちゃん。これ以上の攻撃をさばききれるか?」
『今回のデーターを解析中につき、これ以上攻撃が激しくなると、対応できない可能性があります』
「だよな~」
俺は念のため、全身シールドに切り替えて、シールド強度も上げておいた。
「それじゃあ、本気で行くよ~」
「こら!」
明るく俺に襲いかかろうとする死神猫を、唸るような低い声が止めた。
金色の長いたてがみに大きな牙。ライオン獣人がベレートを叱りつける。
「会議を欠席するだけならともかく、客人に手を出すとは何事だ!」
「プルーゾン、いや、違うんだよ。ねっ、ほら、そこの勇者君がヒマそうにしていたから、ねっ、ちょっと、遊んでいただけだよ。何だったら左腕の一本くらい取っちゃおうなんて思っていないんだから、許してよ」
おい! 可愛い顔して何を物騒なこと言ってやがる。本気で来られていたら、片手じゃ済まなかっただろう。
助かった。
俺はライオン獣人プルーゾンの乱入に心から感謝する。
「申し訳ありません。マモル殿、ベレートはいつまでたっても子供じみて、我々も手を焼いているのです」
プルーゾンは、ふさふさのたてがみをたなびかせて頭を下げる。
その厳つい顔に似合わず丁寧な態度に俺の緊張がほどける。
「いえいえ、おかげで助かりました」
「どういうことですか?」
俺はエネルギーを溜められ、戦闘データーが取れた上に、こちらは無傷という理想的な状態で終われた。
エネルギーのことは弱点にも当たる。戦闘データーが分析、活用できるのはコンバットスーツの最大の利点である。そのことを魔王軍に知られては、対処されてしまう可能性が高いため、俺はそれを魔王軍に言うつもりは無かった。
「待っている間、緊張していたので、ベレートさんに相手にしていただいて助かりました」
プルーゾンは眼鏡の向こうで目を細めて、俺を見てくる。俺の真意を読み取ろうとしているかのように。
ベレートは脳筋、それもアホみたいに戦闘力ある脳筋。それに比べるとプルーゾンは見た目に反して、頭脳派なのかも知れない。俺がそんなことを考えていると、プルーゾンの顔に変化があった。
その大きな口を開けて、奥にある牙を見せる。
「うわはっはっは。そうですか。ベレートと対峙して、緊張が解けましたか……それは良かった」
そう言って大きく笑い始めた。猛獣が笑う。まるで、今から獲物を美味しくいただこうかとするかのように。
「良かったな、ベレート。お仕置きは無しだ。さあ、マモル殿、魔王様がお呼びです。サラマンディーネとネーラも一緒に来い」
「ふ~、助かった」
プルーゾンのお仕置きがないという言葉にベレートは心底ほっとした顔をして、俺たちの後ろを鼻歌交じりでついてきた。
ちょっと、この人が後ろにいるのって、全く落ち着かないのだけれど。
「ナビちゃん。周辺警戒を怠らないでくれ」
『了解です』
俺は耳に付けているインカムでナビちゃんにお願いしておく。
しかし、その警戒も不要なまま、初めの会議室に戻っていった。
そこでプルーゾンはもちろん、ベレートも先ほどと同じように魔王の両脇に座る。
「お待たせしました。先ほどのマモル殿のご提案内容を、我々で検討した結果をお伝えいたします」
先ほど迎えに来てくれたプルーゾンが口を開く。
司会をしている事と席順からプルーゾン自体かなり位が高いと見える。それがわざわざ俺を迎えに来たのは、会議の場にベレートがいなかったからだろう。ベレートを止められる者がそれほど多くなく、プルーゾンはその数少ない一人と言うことだろう。最低でも、あれ以上のレベルの者がプルーゾンと魔王の二人はいると言うことか。そりゃあ、人間側も勇者なんて呼び出そうと思うだろう。
そして、俺の意見が受け入れられなかった場合、魔王軍は俺を排除しようとするだろう。ベレート一人で手に余るのに、最低でも同じ実力の物があと二人。その上、実力が全く読めない四人サラマンディーネとネーラまで敵に回るかも知れない。
万が一の場合は、さっきベレートから奪い取ったエネルギーを全て使っても逃げるしかない。
俺がそんなことを考えていると、プルーゾンは結果を発表する。
「我が魔王軍はマモル殿の提案を受け入れ、貴国の建国を認めます」
「ありがとうございます」
俺はとりあえず、最悪の事態を避けられて、ほっとする。
「ただし、条件があります」
ほっとする俺の顔を見ながら、プルーゾンは言葉を続けた。
ベレートはアゴに手を当てて、困ったな~と言う顔をする。
その顔は戦っている途中とは思えなかった。まるで今日のご飯は何にしようかと楽しそうに悩んでいるようだった。
「もう、終わりにしませんか?」
俺はお互いに手詰まりと見せかけて、停戦要求をしてみる。
その本音はせっかく溜まったエネルギーを無駄使いしたくなかったからだ。
「えー! やっとウォーミングアップが終わったとこなのに~。もうちょっと遊ぼうよ」
ベレートの瞳が怪しく光った。
あれでウォーミングアップなのか? 正直、俺はこれ以上、戦いたくはなかった。
「ナビちゃん。これ以上の攻撃をさばききれるか?」
『今回のデーターを解析中につき、これ以上攻撃が激しくなると、対応できない可能性があります』
「だよな~」
俺は念のため、全身シールドに切り替えて、シールド強度も上げておいた。
「それじゃあ、本気で行くよ~」
「こら!」
明るく俺に襲いかかろうとする死神猫を、唸るような低い声が止めた。
金色の長いたてがみに大きな牙。ライオン獣人がベレートを叱りつける。
「会議を欠席するだけならともかく、客人に手を出すとは何事だ!」
「プルーゾン、いや、違うんだよ。ねっ、ほら、そこの勇者君がヒマそうにしていたから、ねっ、ちょっと、遊んでいただけだよ。何だったら左腕の一本くらい取っちゃおうなんて思っていないんだから、許してよ」
おい! 可愛い顔して何を物騒なこと言ってやがる。本気で来られていたら、片手じゃ済まなかっただろう。
助かった。
俺はライオン獣人プルーゾンの乱入に心から感謝する。
「申し訳ありません。マモル殿、ベレートはいつまでたっても子供じみて、我々も手を焼いているのです」
プルーゾンは、ふさふさのたてがみをたなびかせて頭を下げる。
その厳つい顔に似合わず丁寧な態度に俺の緊張がほどける。
「いえいえ、おかげで助かりました」
「どういうことですか?」
俺はエネルギーを溜められ、戦闘データーが取れた上に、こちらは無傷という理想的な状態で終われた。
エネルギーのことは弱点にも当たる。戦闘データーが分析、活用できるのはコンバットスーツの最大の利点である。そのことを魔王軍に知られては、対処されてしまう可能性が高いため、俺はそれを魔王軍に言うつもりは無かった。
「待っている間、緊張していたので、ベレートさんに相手にしていただいて助かりました」
プルーゾンは眼鏡の向こうで目を細めて、俺を見てくる。俺の真意を読み取ろうとしているかのように。
ベレートは脳筋、それもアホみたいに戦闘力ある脳筋。それに比べるとプルーゾンは見た目に反して、頭脳派なのかも知れない。俺がそんなことを考えていると、プルーゾンの顔に変化があった。
その大きな口を開けて、奥にある牙を見せる。
「うわはっはっは。そうですか。ベレートと対峙して、緊張が解けましたか……それは良かった」
そう言って大きく笑い始めた。猛獣が笑う。まるで、今から獲物を美味しくいただこうかとするかのように。
「良かったな、ベレート。お仕置きは無しだ。さあ、マモル殿、魔王様がお呼びです。サラマンディーネとネーラも一緒に来い」
「ふ~、助かった」
プルーゾンのお仕置きがないという言葉にベレートは心底ほっとした顔をして、俺たちの後ろを鼻歌交じりでついてきた。
ちょっと、この人が後ろにいるのって、全く落ち着かないのだけれど。
「ナビちゃん。周辺警戒を怠らないでくれ」
『了解です』
俺は耳に付けているインカムでナビちゃんにお願いしておく。
しかし、その警戒も不要なまま、初めの会議室に戻っていった。
そこでプルーゾンはもちろん、ベレートも先ほどと同じように魔王の両脇に座る。
「お待たせしました。先ほどのマモル殿のご提案内容を、我々で検討した結果をお伝えいたします」
先ほど迎えに来てくれたプルーゾンが口を開く。
司会をしている事と席順からプルーゾン自体かなり位が高いと見える。それがわざわざ俺を迎えに来たのは、会議の場にベレートがいなかったからだろう。ベレートを止められる者がそれほど多くなく、プルーゾンはその数少ない一人と言うことだろう。最低でも、あれ以上のレベルの者がプルーゾンと魔王の二人はいると言うことか。そりゃあ、人間側も勇者なんて呼び出そうと思うだろう。
そして、俺の意見が受け入れられなかった場合、魔王軍は俺を排除しようとするだろう。ベレート一人で手に余るのに、最低でも同じ実力の物があと二人。その上、実力が全く読めない四人サラマンディーネとネーラまで敵に回るかも知れない。
万が一の場合は、さっきベレートから奪い取ったエネルギーを全て使っても逃げるしかない。
俺がそんなことを考えていると、プルーゾンは結果を発表する。
「我が魔王軍はマモル殿の提案を受け入れ、貴国の建国を認めます」
「ありがとうございます」
俺はとりあえず、最悪の事態を避けられて、ほっとする。
「ただし、条件があります」
ほっとする俺の顔を見ながら、プルーゾンは言葉を続けた。
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