36 / 52
第36話 異世界のバーベキュー
しおりを挟む
メイの首輪を外し魔王城から戻った俺達は疲れをとるために、しばらく屋敷でゆっくりして鋭気を養うことにした。
今日は天気も良かったので、屋敷の庭でバーベキューをすることにしたのだった。
バーベキューコンロに炭をおこし、肉や野菜、魚を焼いていた。
俺は酒のつまみにと、燻製にも挑戦してみた。
薫桜と言われるこの世界特有の香りの強い木のチップを使って、ゆで卵をいぶしてみる。
鼻の良すぎるネーラには不評だったが、ノアールとアイリーンには面白い味だと好評だった。
「ネーラ、魚もいぶしてやろうか? そうだ! 干物にするとまた味が変わるぞ、美味さが凝縮するからな」
「干物は良いけど、燻製はいやだニャ。それよりマモルはお酒控えるニャ! なんか酔っ払った勢いで支店長に愛の告白したって聞いたニャ!」
「はぁ? 誰だ? そんなこと言っているのは?」
「支店長が言ってたって、部長から聞いたニャ」
ベレートかサラマンディーネがこのデマの元か。今度会ったらきつく言っておこう。
そんな風に俺たちがにこやかにバーベキューを楽しんでいると、背の高い女性が声をかけてきた。
「こんにちは」
ふわりとしたワンピースに身を包んで、手には特に何も持っていなかった。真っ赤な長い髪の毛、少し気が強そうな顔立ちはにっこりと笑顔で話かけてきた。
「どなたですか? ここは私有地ですよ」
俺とネーラが、怪しんでいると、ノアールが声をかけた。
「すみません、どうやら道に迷ったみたいですの」
「そうですか、じゃあ、わかりやすい所までお送りしましょうか?」
「え!? あなたが、ですか?」
女性の言わんとする所は分かる。家の周りはマリーヌの結界があるため安全ではあるが、一歩森の中に入れば野生の動物が多くいる。
確かにノアールを行かせるのは俺も不安だ。多少、酒は入っているが、俺が行った方がマシだろう。
「いいよ、俺が送るよ。村の近くまでで良いだろう」
「すみません。お願いします」
女性は安心したような顔になった。
「わたくしも一緒に行きますわ」
俺の言葉にノアールも反応する。
しかし、やっと訪れた穏やかな親子の時間。
ひと息つけたが、勇者はまだ、三人も残っている。その後は王国取りも残っている。
少しでもこの時間を大事にさせてあげたい。
「大丈夫だ、すぐ戻ってくるから、メイさんに存分に甘えていな」
俺はそう言ってノアールの真っ黒な頭の上にぽんと手を置いた。
「あ、甘えてなんて……」
そう言いながらも照れて笑っていた。歳相応の笑顔を見せる。
そんなノアールと焼き魚に夢中なネーラ、いそいそとお肉を焼いているメイを置いて俺は女性を連れて、村への道を案内することにした。
しばらく歩いた所で俺はふと気がついた。
「そう言えば、お名前を聞いていなかったですね」
「ああ、そうでしたね。名前を言っていませんでしたね」
そう言って女性は俺の背中にぶつかった。
痛っ!!
俺の背中に激痛が走り、瞬間的に叫んだ。
「蒸着!」
反射的にコンバットスーツを装着する。
刺された?
焼けるような痛み。血が流れるイヤな感覚。
「ナビちゃん。止血をお願い」
『了解。セーフティモードに移行します』
コンバットスーツは俺の傷口を止血し始めた。
「何者だ? あんた、なんでこんなことをする」
「自己紹介がまだでしたね。オレの名前は神無月炎夏。まあ、火の勇者と言った方がわかりやすいだろう」
そう言った女性の姿はどんどん変わり、短い真っ赤な髪の毛を立たせた神経質そうな二十代の細身の男になった。
俺はその男に見覚えがあった。確かに俺があの王の前で殺された時、イヤらしく笑っていた男だ。
水の勇者のように単騎で俺を殺しに来たのか。治療が終わるまで、時間稼ぎをしなければ……。
「すごいよね、それ。それがあればレベルなんて関係なさそうだ。それってどうやって手に入れるの? どんなイベント?」
俺が時間稼ぎをしようと話しかけるよりも先に、炎夏から話しかけてきた。
なんで、この好機に仕掛けてこない? イベントって何だ? まあ、いい傷が治るまでこいつの話に乗ってやろう。
「これは、勇者召喚されたときにもらったんだよ。イベントってどういうことだ?」
「なんだ、キャラメイキングの時のボーナスアイテムか。それりゃ~いくら探しても見当たらないはずだ」
あいた~と頭を抱える炎夏の言葉に俺は違和感を覚える。
「キャラメイキングってどういうことだ?」
「あれ? キミも気がついていない派か~」
炎夏はあのイヤらしそうな笑顔で答えた。
「どういうことだ?」
「どういうことって、この世界はゲームの世界だろう」
何を当たり前のことに気がつかないんだ? このぼんくらは? と思っている顔で炎夏が俺に答えたのだった。
今日は天気も良かったので、屋敷の庭でバーベキューをすることにしたのだった。
バーベキューコンロに炭をおこし、肉や野菜、魚を焼いていた。
俺は酒のつまみにと、燻製にも挑戦してみた。
薫桜と言われるこの世界特有の香りの強い木のチップを使って、ゆで卵をいぶしてみる。
鼻の良すぎるネーラには不評だったが、ノアールとアイリーンには面白い味だと好評だった。
「ネーラ、魚もいぶしてやろうか? そうだ! 干物にするとまた味が変わるぞ、美味さが凝縮するからな」
「干物は良いけど、燻製はいやだニャ。それよりマモルはお酒控えるニャ! なんか酔っ払った勢いで支店長に愛の告白したって聞いたニャ!」
「はぁ? 誰だ? そんなこと言っているのは?」
「支店長が言ってたって、部長から聞いたニャ」
ベレートかサラマンディーネがこのデマの元か。今度会ったらきつく言っておこう。
そんな風に俺たちがにこやかにバーベキューを楽しんでいると、背の高い女性が声をかけてきた。
「こんにちは」
ふわりとしたワンピースに身を包んで、手には特に何も持っていなかった。真っ赤な長い髪の毛、少し気が強そうな顔立ちはにっこりと笑顔で話かけてきた。
「どなたですか? ここは私有地ですよ」
俺とネーラが、怪しんでいると、ノアールが声をかけた。
「すみません、どうやら道に迷ったみたいですの」
「そうですか、じゃあ、わかりやすい所までお送りしましょうか?」
「え!? あなたが、ですか?」
女性の言わんとする所は分かる。家の周りはマリーヌの結界があるため安全ではあるが、一歩森の中に入れば野生の動物が多くいる。
確かにノアールを行かせるのは俺も不安だ。多少、酒は入っているが、俺が行った方がマシだろう。
「いいよ、俺が送るよ。村の近くまでで良いだろう」
「すみません。お願いします」
女性は安心したような顔になった。
「わたくしも一緒に行きますわ」
俺の言葉にノアールも反応する。
しかし、やっと訪れた穏やかな親子の時間。
ひと息つけたが、勇者はまだ、三人も残っている。その後は王国取りも残っている。
少しでもこの時間を大事にさせてあげたい。
「大丈夫だ、すぐ戻ってくるから、メイさんに存分に甘えていな」
俺はそう言ってノアールの真っ黒な頭の上にぽんと手を置いた。
「あ、甘えてなんて……」
そう言いながらも照れて笑っていた。歳相応の笑顔を見せる。
そんなノアールと焼き魚に夢中なネーラ、いそいそとお肉を焼いているメイを置いて俺は女性を連れて、村への道を案内することにした。
しばらく歩いた所で俺はふと気がついた。
「そう言えば、お名前を聞いていなかったですね」
「ああ、そうでしたね。名前を言っていませんでしたね」
そう言って女性は俺の背中にぶつかった。
痛っ!!
俺の背中に激痛が走り、瞬間的に叫んだ。
「蒸着!」
反射的にコンバットスーツを装着する。
刺された?
焼けるような痛み。血が流れるイヤな感覚。
「ナビちゃん。止血をお願い」
『了解。セーフティモードに移行します』
コンバットスーツは俺の傷口を止血し始めた。
「何者だ? あんた、なんでこんなことをする」
「自己紹介がまだでしたね。オレの名前は神無月炎夏。まあ、火の勇者と言った方がわかりやすいだろう」
そう言った女性の姿はどんどん変わり、短い真っ赤な髪の毛を立たせた神経質そうな二十代の細身の男になった。
俺はその男に見覚えがあった。確かに俺があの王の前で殺された時、イヤらしく笑っていた男だ。
水の勇者のように単騎で俺を殺しに来たのか。治療が終わるまで、時間稼ぎをしなければ……。
「すごいよね、それ。それがあればレベルなんて関係なさそうだ。それってどうやって手に入れるの? どんなイベント?」
俺が時間稼ぎをしようと話しかけるよりも先に、炎夏から話しかけてきた。
なんで、この好機に仕掛けてこない? イベントって何だ? まあ、いい傷が治るまでこいつの話に乗ってやろう。
「これは、勇者召喚されたときにもらったんだよ。イベントってどういうことだ?」
「なんだ、キャラメイキングの時のボーナスアイテムか。それりゃ~いくら探しても見当たらないはずだ」
あいた~と頭を抱える炎夏の言葉に俺は違和感を覚える。
「キャラメイキングってどういうことだ?」
「あれ? キミも気がついていない派か~」
炎夏はあのイヤらしそうな笑顔で答えた。
「どういうことだ?」
「どういうことって、この世界はゲームの世界だろう」
何を当たり前のことに気がつかないんだ? このぼんくらは? と思っている顔で炎夏が俺に答えたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜
加瀬 一葉
ファンタジー
王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。
実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?
過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる