二度目の人生は無難に引きこもりたい

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「流石はミーナさん!今、3位ですわ」
はしゃいだ声を出したのはエイミーと言う茶髪に赤緑の不思議な色彩を持つ子爵家の令嬢だ。その隣りに立つ赤毛に緑の瞳を持つ背の高い令嬢、ダニエラ。

ミーナはやはり人気の令嬢らしく一緒に活動する事になったエイミー達が連絡板に書かれた指名票を見ながら言った。

「でも一番はスザンヌさんだわ。次がアマンダさん。まったく、騎士様達はあんな方達のどこがよろしいのかしら?」

「エイミーったら!ダメよ!そんな本当の事を」

いや、たぶん貴方もそんな大声で言ってはダメよ?ダニエラさん。

内心そう思うが、あははとクリスティナもミーナも苦笑いを浮かべた。

スザンヌやアマンダ達はそれはそれは気の強い美人さん達だ。積極的に騎士様達に自己アピールをするし、男性の前ではとても可愛らしい。男性受けがとても良いのだ。まぁ、その代わりに女性受けはすこぶる悪いのだけど。

「わたくし、クリスティナさんのお名前がこんなに少ないなんて思ってもいませんでしたわ」
「本当ね」
エイミーの言葉にダニエラもこっそりと会話をし、頷いている。

ミーナがチラリと隣りで目を瞬いているクリスティナを見てふふっと笑った。

「クリスティナはね。今まで初めて行った7歳の魔力測定の儀式以降、ずーっと、すっぽかし…いえ、、欠席していたみたいよ」

しれっと正解を口にしたミーナに、クリスティナは驚く。

「…え?なぜミーナがそれを知ってるの?」

ふふふっと笑ったミーナが種明かしをする様に話し出した。

実はミーナの良く話題に登っていた幼馴染君はあの、ライナス様だった。
ミーナの家は子爵家で、ライナス様の暮らす辺境伯領の手前に位置する長閑な田舎領地らしい。

ライナスの父である辺境伯とミーナの父は友人だった為、幼い頃から交流があり良く遊んだそうだ。
ライナスが格闘トーナメントに出場すると家族から聞き、ソワソワして勝利の女神は誰にするのかどうにかして聞き出そうと手紙を書いたらしい。

「知らなかった!ミーナって好きな人が居たのね…」
「えっ!?…す、好き…!?そ、そんな、こと、は」

顔を真っ赤にするミーナがものすごく可愛い。
しかもその相手がライナスだなんて…
既に16歳になっているミーナは最近婚約の申し入れが殺到中だと聞いていたが未だに誰にも首を縦に振らないまま、会うことすらしていないと言うので少しばかり不思議に思っていたのだ。

「ま、まぁわたくしの事は良いのよ!」

ミーナが珍しく慌てている。クリスティナ達はにまにまと笑った。美少女の恥じらう姿ってなんて可愛らしいのかしら。

「それでね、その…ライナスが手紙の返事をくれて。先週、お仕事がおやすみだから雲のアイスクリーム屋さんに連れてってやるよって。それで、その時にお前の下手くそな刺繍は仕方ないから俺がもらってやるって…あ!待って!今のは関係ない話しでしたわ!!」

「まぁ!羨ましいですわ!恋のお話しですわ!」

先程よりも更に真っ赤になり、狼狽えるミーナを見て、きゃあきゃあと騒ぐ私達にミーナがうるうるした眼差しで睨んでくる。
思わずつつきたくなる可愛さで、恥じらって悶えるミーナは、咳払いをして何とか先を話し出した。

「それでね?『私の友人は物凄く可愛らしいからライナスなんかその子を見た途端に私の刺繍なんてポイと捨てて、その子に夢中になってしまうのではなくて?』と言ったら彼は『ふぅーん、ちなみになんて名前の子なの?』と聞いて来ましたの。
それで、クリスティナの名前を出すとライナスは『あぁ、妖精姫か。』と、知っている風だったわ。」

「…妖精姫?」
誰の事?まさか、私!?
驚く私の隣で確かに、とエイミー達が頷く。
私は幻の生物認定でもされている気分になって、何とも言えない顔になった。

「ライナスが教えてくれたのよ。クリスティナはライナスの友人のいとこで、滅多に魔力測定の儀式に出てこない子だったんだって。そのライナスの友人曰く、毎回すっぽかしてる。って、そう聞いたの。それから……面白い話も聞いたのよ?」
そう言ってミーナがニヤリと笑った。

「クリスティナ、あなた。ヴィスカルディ公爵家のマクシミリアン様とただならぬ雰囲気になっていた。って本当?」

ニヤニヤと、先程までの愛らしく恥じらう、恋する乙女の顔をどこかに落として来てしまったらしいミーナが笑いながら私ににじり寄る。

「それで、どうなの?クリスティナにも恋のお相手がいるの?」
なんて楽しそうに聞いてくる。

「違いますわ!誤解よ。一度ダグラス達と…あっ、ダグラスはわたくしのいとこでヴィーティー侯爵家の次男なの。今はライナス様と同じく騎士をしているのだけど。
それで、そのダグラス達と一緒に雲のアイスクリーム屋さんに行ったことがあるのよ。
本当はダグラスの兄のテオお兄様とわたくしの二人で行ったのだけど。
その時たまたまダグラスとマクシミリアン様やライナス様に偶然お会いして、それなら一緒どうだって、テオお兄様が誘ったみたいで。
だから、たまたまご一緒しただけなのよ」

クリスティナは必死に説明した。
柱の影から誰かが聞いていることにも気付かずに。

「凄いわ!皆様キラキライケメンランキング上位の方ばかりじゃない!」
キラキラ、なんですって?
クリスティナは目を瞬きダニエラを見た。
だ、ダメだ、目がギラギラしてる。興奮し過ぎて怖いわ。

「ダニエラ、落ち着いて」
間髪入れずにダニエラに突っ込むエイミーも瞳は好奇心いっぱいに輝いている。

「そうだったの、あのマクシミリアン様がクリスティナにをしたんじゃないかって話してたんだけど」

一目惚れ、と強調して、むふふっと笑うミーナはにんまりとした人の悪い笑みを私の後ろに視線を向けていた。
クリスティナは気になって振り返るが人の姿はない。


「…ふふっ。あー、スッキリしたわ」

「え?なにが??」

「いいえ」

にっこり楽しげに笑うミーナは凛として綺麗なのに可愛らしくて。女の私から見てもとても魅力的だ。最近は特に、かなり女性らしい体型になっていて、歩くだけで男性はミーナに釘付けになる程だ。

こんなミーナを見ればライナスは物凄く焦るのではないかしら?盛大に焦って、必死こいて求婚すれば良いと思う。

女性の16歳は大切な一つの節目だ。

社交界デビューをする年であり、そのデビューを飾る舞踏会や夜会、パーティーなどで見初められ求婚者が現れたり。
逆に魅力的な令息に出会い恋に落ちる場合もある。
マクシミリアンも先月16歳を迎えたはず…

あぁ、どうしてマクシミリアンの事を考えてしまうのだろう。

「あ、そろそろ行かなくては遅れてしまいますわ!」
エイミーの声にダニエラとミーナが頷く。
「あら、そうね。」
「早く行かなくては!騎士様達に挨拶するのだもの。身嗜みを整えたりしなくては…」

ふふっと四人で笑い、私達は集合場所へと向かった。





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