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にじゅうなな
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王都ズッカリーニ地区にある世界でも二番目に大きいと言われる白亜のお城、ニュアージュ城。
その主塔にある中規模の謁見の間でミーアは形式的な謁見を終えジュール王子のいる部屋へと案内されていた。
精霊の愛し子に陛下からの依頼と言う体で入城した為ミーアは教会の巫女達が式典等で着る盛装姿で登城している。
隣を見ればこちらも黒を基調にした盛装姿をしたルーカがいる。
今日はいつもはふわふわと自然なウェーブの白銀の髪を後ろに撫でつけた見たことのないよそ行きの姿のルーカがミーアをエスコートしてくれていた。
今も興味津々で貴人の前に姿を見せないはずの侍女や下働きの者達がひっきりなしにルーカを見にやって来ていた。
「こちらでございます。」
先触れを出してもらい訪れた場所は王宮の外れにある精霊水晶が飾られている礼拝堂だった。
ふかふかの絨毯…
「お久しぶりです。ジュール王子殿下、雪の精霊姫ネージュをお連れしましたよ?」
教会から司祭様として派遣され来てくださったエミル様とルーカが一緒に周辺の保護の為防御膜を張る作業に取り掛かる。
ミーアはゆっくりと長い裾を広げる。するとそこに隠れていた小さな光がひょっこりと現れて輝き、膨らみ、形を変えて小さな人型になった。
『ジュール、貴方の呪縛を今カトリ…いえ、ミーアと共に解いてあげますからね?だから、少しだけ痛みに耐えてください…』
辛そうに顔を歪めるネージュはしかし、ミーアにしっかりと頷き印を切る様に手を動かした。
すっ、とジュールの防御繭に触れてそこに現れたあの日のままのジュールの額に小さな印を切る。
とたんにジュールが闇に覆われた。まるでパオラの様に蠢く闇だったがミーアが「闇を祓え」と呟くだけでジュワッと消えていく。
大元の邪黒の蛇を始末した為なんの抵抗も無く闇が晴れ礼拝堂に本来の陽射しが差し込んでいた。
「ジュール王子殿下、ご気分はいかがですか?」
「カトリーヌ嬢……ん?ぁ、いや、違うな。済まない人違いだった様だ。」
ミーアの問いかけにジュールはしっかりと返した。
とても10数年と眠りについていたものとは思えないしっかりした眼差しと口調。
ミーアはネージュと顔を見合わせ二人で頷き安堵の表情を見せた。
ジュールはしばし呆然と辺りを見回す。するとネージュを見つけ破顔した。
「ネージュ、良かった。君が殺されてしまいそうになる夢を何度も見ていたから」
そこで漸く、あれ?とジュールは辺りをまた見回す。
「…私は、なぜこんな場所に?」
そこで彼は目を見開いてミーアを見た。
紫紺の宝石の様に美しい、紫色の瞳、国一番の美少女と評判の公爵家の至宝。あのカトリーヌ・アリプランディーニと婚約出来ると喜んだ。
優しく思慮深いと言った母の評価にホッとした。母は王妃として数回茶会を開きカトリーヌをテストした様だった。
母の話を聞く限りではカトリーヌの性格は私好みと言う事だった。
だから私は婚約披露パーティを楽しみにしていた。
将来両親達のように共に歩み、励ましあい、いつの日か愛し合う夫婦となり共に支え合える存在になれたらいいと…
その婚約者であるカトリーヌの姿が、あの日、あの時の驚愕の表情になり、自分の側から離され取り押さえられ、ジュールはカトリーヌをなんとかして助けなければと思うのにまるで巨大な蛇にでも絡められた様に身動きも喋る事もできず…
しかし、闇にのまれそうになった時ネージュがジュールを助けてくれた。
ネージュのあの時の言葉を思い出す。
『ジュールの未来の花嫁をわたくしは助けられ無かった。でも貴方だけでも、お願い貴方は生きて』
深い眠の中に悲痛に響いたネージュの祈りで私は助かり…
しかし、カトリーヌは?
「彼女は……死んだ?」
ジュールは彼女と同じ色味の紫紺の瞳を見ながらポツリと言葉を零した。
その主塔にある中規模の謁見の間でミーアは形式的な謁見を終えジュール王子のいる部屋へと案内されていた。
精霊の愛し子に陛下からの依頼と言う体で入城した為ミーアは教会の巫女達が式典等で着る盛装姿で登城している。
隣を見ればこちらも黒を基調にした盛装姿をしたルーカがいる。
今日はいつもはふわふわと自然なウェーブの白銀の髪を後ろに撫でつけた見たことのないよそ行きの姿のルーカがミーアをエスコートしてくれていた。
今も興味津々で貴人の前に姿を見せないはずの侍女や下働きの者達がひっきりなしにルーカを見にやって来ていた。
「こちらでございます。」
先触れを出してもらい訪れた場所は王宮の外れにある精霊水晶が飾られている礼拝堂だった。
ふかふかの絨毯…
「お久しぶりです。ジュール王子殿下、雪の精霊姫ネージュをお連れしましたよ?」
教会から司祭様として派遣され来てくださったエミル様とルーカが一緒に周辺の保護の為防御膜を張る作業に取り掛かる。
ミーアはゆっくりと長い裾を広げる。するとそこに隠れていた小さな光がひょっこりと現れて輝き、膨らみ、形を変えて小さな人型になった。
『ジュール、貴方の呪縛を今カトリ…いえ、ミーアと共に解いてあげますからね?だから、少しだけ痛みに耐えてください…』
辛そうに顔を歪めるネージュはしかし、ミーアにしっかりと頷き印を切る様に手を動かした。
すっ、とジュールの防御繭に触れてそこに現れたあの日のままのジュールの額に小さな印を切る。
とたんにジュールが闇に覆われた。まるでパオラの様に蠢く闇だったがミーアが「闇を祓え」と呟くだけでジュワッと消えていく。
大元の邪黒の蛇を始末した為なんの抵抗も無く闇が晴れ礼拝堂に本来の陽射しが差し込んでいた。
「ジュール王子殿下、ご気分はいかがですか?」
「カトリーヌ嬢……ん?ぁ、いや、違うな。済まない人違いだった様だ。」
ミーアの問いかけにジュールはしっかりと返した。
とても10数年と眠りについていたものとは思えないしっかりした眼差しと口調。
ミーアはネージュと顔を見合わせ二人で頷き安堵の表情を見せた。
ジュールはしばし呆然と辺りを見回す。するとネージュを見つけ破顔した。
「ネージュ、良かった。君が殺されてしまいそうになる夢を何度も見ていたから」
そこで漸く、あれ?とジュールは辺りをまた見回す。
「…私は、なぜこんな場所に?」
そこで彼は目を見開いてミーアを見た。
紫紺の宝石の様に美しい、紫色の瞳、国一番の美少女と評判の公爵家の至宝。あのカトリーヌ・アリプランディーニと婚約出来ると喜んだ。
優しく思慮深いと言った母の評価にホッとした。母は王妃として数回茶会を開きカトリーヌをテストした様だった。
母の話を聞く限りではカトリーヌの性格は私好みと言う事だった。
だから私は婚約披露パーティを楽しみにしていた。
将来両親達のように共に歩み、励ましあい、いつの日か愛し合う夫婦となり共に支え合える存在になれたらいいと…
その婚約者であるカトリーヌの姿が、あの日、あの時の驚愕の表情になり、自分の側から離され取り押さえられ、ジュールはカトリーヌをなんとかして助けなければと思うのにまるで巨大な蛇にでも絡められた様に身動きも喋る事もできず…
しかし、闇にのまれそうになった時ネージュがジュールを助けてくれた。
ネージュのあの時の言葉を思い出す。
『ジュールの未来の花嫁をわたくしは助けられ無かった。でも貴方だけでも、お願い貴方は生きて』
深い眠の中に悲痛に響いたネージュの祈りで私は助かり…
しかし、カトリーヌは?
「彼女は……死んだ?」
ジュールは彼女と同じ色味の紫紺の瞳を見ながらポツリと言葉を零した。
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