泣き虫転生少女と銀の猫

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最終章

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ダイニングの暖炉がぱちぱちと音を立て炎が揺れる。

少しだけ。ちょっとだけ。

そう思ってこっそりと恐る恐る手を伸ばす。

大きな白銀の耳がピクリと動くと大きな身体が揺れた。

ルーカの青に金色の縁取りの瞳が揺れさ迷うとミーアを捉えた。
大きな白銀の猫は実は白虎と言う聖獣で生まれついての聖獣では無いため耳は猫の耳のままなのだとか。
ミーアはソファーに眠るルーカの耳をこっそりと撫でてみた。

途端にガシッとミーアの手が捕まれ心臓が飛び出るくらいびっくりした。
「ご、ごめんなさい!」
「ミーア、さっきもしかして、尻尾にも触った?」
剣呑な空気の中にゆらゆらとルーカの中の何かが揺れている様な感情の乱れを察知して叱られてしまうと理解した。

ひぇーっ、ルーカさんのオーラがなんか怖い!

ルーカが手を伸ばしミーアをソファーに引っ張りこみ押し倒す。肉食獣が獲物でも仕留め今まさに喉笛に喰らいつきそうなギラついた眼差しに焦燥感を募らせる。

逃げるにはどうしたらいい?と左右に目を走らせると噛み付く程に低い声で「逃がしたりすると思う?」と言って首筋を舐めて吸って齧り付いた。
「ひっ、んん?」
じたばたする身体に電流が走った。
爪先まで通り過ぎた電流に痺れた様に惚けていると耳たぶを含まれ中に舌が這うと意味の無い声が出た。
待て待てルーカさんよ。私は未だに成人前なねですが?
え?幼女趣味とかで?
なんて考えるも、ふとリア婆ちゃんの話を今更ながらに思い出していた。
獣人の耳や尻尾には神経が通っていて特に魔力の強い獣人は伴侶にと決めた相手にしか決して触らせない。
なぜって?そうだねぇ。まだミーアには早い話だけど、子作りのオネダリみたいな、催促するような意味合いになるからだよ。

なぜ催促なのかは不明だが尻尾を触ったミーアが悪かった可能性が高いぞ?と戦々恐々とルーカを見つめた。

蕩けた顔でミーアの耳からするすると降りていつの間にか太腿を抱えて舐めたりしてくる。
ひぃ!ぺろぺろ舐めないで!

どうしよう。どうしたらいいのー!
「ミーア、ミーアが食べたい。」

ルーカが尖った歯を見せつける。
「だ、だだだダメです」
ミーアは 必死に食い下がった。
本能が本気で仕事をしている。
このままだと本気で物理的に喰われてしまうと。

どうしてこうなった…


冒険者のお仕事は長期休暇にしようとルーカが言った。

「この長期休暇の間にミーアのご両親の墓参りに行こう。そして帰りにミーアを育ててくれたリア婆ちゃんの墓にも。ミーア前からお婆さんの墓参りに行きたいって言ってたよね?」

「はぁ、それはそうなんですが。なぜルーカさんまで?」
「ちゃんとしときたくってさ」

そう言って墓参りに行って来たのだ。
行きは辻馬車で途中乗合馬車にと乗り継ぎして街の外れに到着したがもう泊まる家も無いし田舎で宿泊する場所も少ないから日帰りにして早朝に出発してお墓参りを二人でやった。

帰りはルーカの瞬間移動で帰ったけれど半日は馬車に揺られ遠距離の瞬間移動で帰りついた途端に疲れて二人でソファーに座り寝こけてしまったのだ。

「待ってルーカさん」
「無理、ミーアは知らなかったんだよね?尻尾はオスの性感帯と少しだけ繋がってるんだ。はぁ。」

重くくぐもった声が熱を帯びている。そう感じた瞬間に逃げ出しそうになった。

「ミーアが好きだよ。だから全部俺にちょうだい?」
「…ぁ、ずるいよ。ルーカさん…」

真っ赤な顔をして震え声になったミーアを意地悪く、やらしい笑顔でルーカが追い詰めて唇を奪った。
「でも、俺が好き、って顔に書いてある。」
「…ルーカさんのバカ!でも、本当に大好きなの。」

不貞腐れたミーアの告白がお気に召したらしい、ルーカが満足そうに目を細めた。
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