この世界で唯一の猫は俺~捕獲対象として賞金掛けられたが、相棒の黒龍(卵)とのんびり旅します

ロゼ

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旅の始まり

狩りは楽しい

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 パンを食べ、ウサータをカバンに収納し、再び猫の姿になった。

 この姿の方が移動が早いし、ウサータを倒せるくらい強くなったのだから、もっともっと強くなるためにスキルを成長させたいと思ったからだ。

 昼間は大型の魔物は少なく、小型の魔物が姿を表す。

 まぁ、小型といっても猫からしたら十分大きいのだが。

 ウサータはもう難なく倒せるようになった。

 走っている途中に吹き飛ばしたチューチルもあっさり倒せた。

 こうなってくると少々手応えが欲しくなってくる。

『何かいねぇかな?』

『楽しそうだのぉ』

 少し呆れたようにシャンテがそう言ったが無視である。

 倒したチューチルは尻尾が薬になるため、尻尾だけを切り落としてカバンに放り込んだ。

 どういう仕組みなのか分からないが、倒した魔物は一定時間その場に放置しておくと砂のようになり消えていく。

 素材や食材としてその場から移動させるとなぜか消えずに残る。

 そういう世界の仕組みを研究している学者達がいるそうだが、正直小難しすぎて理解出来そうもない。

 チャーチルの肉は癖が強く食材には向かないため、その場に放置しておいたら本当に消えてしまった。

『不思議だよなぁ……何で消えるんだろうな?』

『簡単なことよ。魔物は生命維持のために大地から魔素受け取り、それを循環させて活動しておる。生きておるうちはそのバランスが保たれている故消えることはないが、死ねばそのバランスが崩れる。そうなると大地が魔物の体に残った魔素を回収する。魔素を全て回収された魔物は、その姿すら維持出来なくなり消えていく。それだけのことよ』

『ほぇー……やっぱりシャンテは凄いんだな』

 魔素とは大地が抱え込んでいるエネルギーである。

 植物にも魔素は吸収されるため、それを食べる人間にも少しずつ魔素が蓄積され、成長すると魔法が使えるようになるのだと言われている。

 体内に蓄積された魔素の量が異様に多い生き物が魔物で、稀に人間も魔素の体内量が増えすぎると魔物化することがあるらしい。

 どういう仕組みで魔素が増えていくのかはまだきちんと解明がされていないようで、同じような食生活を送っていたのに片方が魔物化し、片方は魔物化しないなんてことも起こりうるそうだ。

 おっかない世界である。

『そういや、猫って爪研ぎもするんだったよな』

 大きな木を見つけたので爪研ぎをしてみた。

──ガリガリガリ

 単なる爪研ぎなのだが、なぜだろうか、楽しい。

 最初は木の表面に引っ掻き傷のような跡がつくだけだったのだが、ガリガリとしてるうちにその跡が深くなり、周りが木屑だらけになっていた。

 こうなってくると少々試したいことが出来るもので、俺は飛び跳ねてからのクロス切りを試してみた。

 猫の姿だから傍から見たら様にはなっていないだろうが、心の中では二刀流で華麗に切り付ける戦士にでもなったかのような気分である。

 木の幹には深々としたバッテンの傷がついており、思わず『ニャー(おぉ!)』と声が出ていた。

『何をやっておるのやら……』

 シャンテの呆れた声が聞こえたが無視だ。

    ここまでの威力になったのなら実践で使ってみたいのが男心。

 辺りを見渡してみるも、猫の視界は本当に遠くは見えにくく出来ているようでよく分からない。

『スキル解除!』

 人間に戻り辺りを見渡すと、少し離れたところに犬型の魔物「ケルべルース」を見つけた。

 前世の絵本で見たケルベロスに似ている魔物だが、ケルベロスと違うのは、頭が二個しかないことだろう。

 ケルべルースは変わった魔物で、番となるパートナーを見付けるとなぜか合体して、体が一個に首が二個になる不思議な性質を持っている。

 よく見ると顔も違っていて、耳が垂れている方がオスで、ピンとしている方がメスだという。

 合体する前は「ケルベール」と呼ばれており、毛のない灰色の体にクルンと丸まった尻尾からもう一本尻尾が伸びていて、フォルムだけ見たら可愛く見えなくもない。

 しかし、その大きさは大型犬より一回り以上大きく、鋭く伸びた犬歯と、太く固い爪の生えた恐ろしいやつである。

 猫になる前の俺なら迷わず避けているのだが、クロス切りの威力を試してみたい欲求に駆られている今の俺は、次のターゲットをあいつに定めた。

 視界が悪いため徒歩でケルべルースに近付き、目の前で猫に変化すると、早速ケルべルースは唸り声を上げ警戒を示してきた。

「フシャーー!!」と威嚇するが、スキルのレベルが足りないのかあまり効果はなかった。

 ウサータより俊敏なケルべルースを何とかかわしながら攻撃の機会を伺う。

 身を翻しながらもケルべルースの脇腹に猫パンチをお見舞いすると、ケルべルースの体がグラッとよろけた。

 すかさずクロス切りをしてみると、灰色の体に傷がついた。

 木よりは固いケルべルースの体には一度のクロス切りでは致命傷にはならなかったが、威力が上がれば一発で仕留められるようになるかもしれない。

 よろけながらも立ち上がろうとするケルべルースの体を再度クロス切りで切り付ける。

 先程よりも威力の上がったクロス切りは、オスの首に深い傷を負わせた。

 メスが狂ったように牙をむき出し、大きな唸り声を上げている。

 負けじと「フシャーーー!!」と威嚇すると、メスがビクッと反応を示した。

 その隙を見逃すはずもなく、すかさず猫パンチをお見舞いすると、ケルべルースの体が倒れた。

 必死に立ち上がろうとしているが、足にきているのか上手く立ち上がれないようだ。

 そこに駄目押しで猫パンチを二発繰り出すと、ケルべルースは動かなくなった。

『やったー! ケルべルースも倒せたぞぉお!!』

『……楽しそうで何よりだな』

 ケルべルースは犬歯に価値があるため、人間に戻りそれを四本引き抜いた。

 生きている時はビクともしないそうだが、死ぬと呆気なく抜けるようになるのが不思議である。

「狩りって楽しいな!」

『……楽しそうで何よりだ』

 シャンテの声はどこまでも無機質だった。
 
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