この世界で唯一の猫は俺~捕獲対象として賞金掛けられたが、相棒の黒龍(卵)とのんびり旅します

ロゼ

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王都へ

お嬢様再び

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 無視してみようかとも思ったが、何か面倒なことになりそうなので振り返った。

「あなた! そのネックレスはどこで手に入れたの! 場合によってはタダじゃすみませんわよ!」

 俺の首にぶら下がっているシャンテの卵を指さして顔をしかめている。

「どこでって、元々俺のものだけど?」

「嘘おっしゃい! それはニャー様の首にかかっていたものと同じですわ!」

 ニャー様でお分かりだろうが、俺を呼び止めたのは洞窟にいたあの女の子である。

 洞窟にいた時より綺麗な格好をしているが、あの髪色に顔つき、間違うはずがない。

『しっかり覚えられてたとは、参ったな』

『取り上げられるでないぞ?』

 腰に手を当てて仁王立ちで立っている女の子にため息が出そうだ。

「ニャー様? 知らないな」

「ニャー様は天使様の化身ですわ! 何よりも尊く、美しくお強い! 素晴らしい毛並みに柔らかさ、何よりもあの愛くるしさ! 言葉では表現し尽くせない至高の存在! それがニャー様ですわ!」

『至高の存在とな……プクク……』

 聞いていて非常にいたたまれないし恥ずかしい。

『笑うな!』

『プッ……すまん、ククッ、至高、プッ!』

 笑うシャンテは無視することにする。

「そんな存在、駆け出しハンターの俺が知るわけがない。こんなネックレスなんてそこいらでも売ってるしな」

「まぁ! そうなのですか!?」

 反応からして素直な人物のようだ。すぐ信じてくれたようである。

「俺のこれは俺のお手製だが、俺の故郷の町では似たような物が売っていたぞ?」

「そうなのですか? ……いえ、騙されませんわ! そんな珍しい石、めったに見かけませんもの! えぇ、そうですわ!」

 訂正する。素直な人物ではなさそうである。

「ちょっと私に見せてみなさい!」

 シャンテの卵に触れようとした瞬間、バチンと音がして女の子の手が弾かれた。

「キャッ!」

 弾かれた衝撃でその場に尻もちを付いた女の子。

「お嬢様!」

 それを見て駆け付けて来たのはやはり洞窟にいたもう一人の、確かナルシアとか呼ばれていた人物だった。

 洞窟で見た時とは違いメイド服らしき衣装を着ている。

「あなた! お嬢様に何をしたのです!」

「いや、俺は何も」

「嘘おっしゃい!」

 すごく怖い顔で俺を睨んでいるが、本当に俺は何もしていない。したのはシャンテである。

『持ち主以外は触れんとでも言っておけ。そういう代物もあるのでな』

 確かにこの世界には魔具や遺物と呼ばれるものが存在している。

 魔具は人間が魔法をかけた道具だが、遺物はそれとは違い、どの時代のものなのかも不明だと聞く。

 主を勝手に決める遺物も存在しており、そういうとのは他人が触ろうとすると拒絶反応を示したりするらしい。

 生き物でもないはずなのにどうなっているのか実に不思議だ。

「これは遺物なんだ。だから俺以外のものは触れない。こちらの話も聞かずに触ろうとする方が悪い」

「「遺物」」

 遺物と聞いた二人は驚いたように声を上げた。

「遺物持ちとは露知らず、大変申し訳ありません」

 なぜか急に態度まで変わった。

『どういうことだ?』

『遺物に選ばれしものは大抵が後に偉業を成し遂げると言われておるからの』

『んなこたー先に言えよ!』

『知っておるとばかり思っておったわ』

 そんなことを知っていたら「遺物」なんて言うはずがない。遺物に関して知っているのはほんの少しだけだったし、多分聞いたことがあったのだろうが興味もないため覚えてもいなかった。

「あなたにしか触れられない遺物なのでしたら、ニャー様のものとは違いますわね。本当に申し訳ございません」

 深々と頭を下げられ、こちらとしては内心戸惑っているのだが、表情には出さないようにした。

「ではあれも遺物……ニャー様でしたらありうることですわね……」

 何やらブツブツ言い始めたが聞こえていないふりをした。

「あなた方はどちらへ?」

「とりあえず王都に行く予定だ」

「まぁ! 奇遇ですわね! 私も王都の自宅へ戻りますの! よければご一緒しませんか? うちの馬車でしたらお二人くらい全く問題ありませんし」

「いや、いいよ。行きながら狩りもしたいしな」

「まぁ! 狩り! 素敵!」

 何だろう、この子は? 狩りと聞いて目を輝かせ始めたぞ!

「私、ハンターに憧れていますの!」

「お嬢様、またそんなことを! このように危ない目にも遭いましたのに!」

 どうやらラッセルに捕まったのも狩りに関係しているのかもしれない。

「あれは少しばかり油断したからよ! 私には魔法があるのだもの、平気よ!」

「お嬢様の魔法は土魔法! それも戦闘向きではありません! ハンターに憧れを抱くなどおやめください!」

 土魔法は使えるようだが戦闘向きではないのならハンターなんて出来るはずがない。

 ナルシアが疲れ果てた顔をしている。彼女もこのお嬢様に振り回されて苦労した口なのだろう。

「では、こちらの方に私がハンターとしてやっていけるのか判断してもらうっていうのはどうかしら?」

「はぁ? 俺が?」

「ご迷惑になりますから、おやめください」

「ハンターから見て私が使いものにならないと判断されたら諦めるわ! だからダメかしら?」

 上目遣いでそんなことを言われても……。

 その後、すったもんだがあり、結局その子のハンター適性を判断することになってしまった。

『俺、ちゃんとしたハンターじゃねぇのに』

『仕方ないじゃろ。あの娘、絶対に引かんぞ』

『だよなー』

 小麦色の髪の女の子は「リーゼ」というらしい。

 どこかのお嬢様のようだが姓は伏せているので分からないし、聞いたところで多分知らないだろうからどうでもいい。

「では参りましょう!」

 俺が逃げるとでも思っているのか、なぜか俺の腕に自分の腕を絡めて歩き出したリーゼ。

 腕に当たる微かな胸の感触がどうにも落ち着かない。

「この辺りがいいかしら?」

 草原を少しだけ奥に進んだところで立ち止まると、なぜかその場で仁王立ちを始めたリーゼ。

「何してるんだ?」 

「魔物が来るのを待っているのです!」

 したり顔で言われても何と答えれば良いのやら。

 待てど暮らせど魔物など出てくるはずがない。

 だってこっちには地龍と黒龍がいるのだから、並の魔物はそうそう寄ってこないだろう。

「私に恐れを成したのかしら?」

 お気楽なお嬢様は呑気にそんなことを言いながら鼻歌まで歌い出した。
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