平凡な主人公が異世界に転生してチート勇者な人生を送るかと思ったら

けろよん

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新生編

第10話 公太郎 VS フィオレ

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 村長の家の前のちょっとした広場で、公太郎とフィオレは向かい合って対峙した。
 周囲には何事が起こるのかと興味をもったのか村人達が集まってきていた。
 フィオレは周囲に目を走らせてすぐに村人達が集まってきていた理由に気が付いた。
 右手を見ればファイタンの体が民家の板の壁を突き破ってそこに刺さっているのが見えた。左手を見ればマホルスの体が果物の入った籠をぶちまけてそこに入っているのが見えた。
 なるほど。気になって見にも来るだろう。フィオレは村人達に謝罪した。

「申し訳ありません。これが終わったら城に連絡して弁償します」
「すぐに終わって連絡しに行くことになるさ。お前の惨めな敗北の報告と一緒にな!」

 公太郎は双剣を抜いた。

「さあ、お前も抜けよ! その背の剣は飾りじゃないんだろう!?」

 公太郎の挑戦的な態度にフィオレは優雅な笑みを返しただけだった。

「確かに飾りではありませんが、一般人の方を相手に使うようなものでもありません」
「一般人だと!? この世界の主人公であるこの公太郎様を一般人だとおお!」
「そうだ。いっそのこと両手も使わないで相手をしましょうか。少しは戦いが楽しめるかもしれませんよ」
「上等だ! 楽しむ間もなく終わらせてやるぜ!」

 公太郎は突撃する。1.5倍×3の威力、さらに3倍の速度を乗せた半チートの攻撃だ。
 その攻撃をフィオレは避けた。

「ふふーん、なかなか楽しい攻撃ですね」
「この野郎、何を俺の攻撃をかわしてやがる! 素直に当たれ!」
「嫌ですよ」

 公太郎のさらなる攻撃をフィオレは避ける。さらに後退するかと見せかけて前に突っ込んできた。
 公太郎はつい警戒して防御の体勢を取ってしまう。次の瞬間、公太郎の中で世界が回った。

「なに!?」

 一回転した後に背に感じる衝撃。そこで初めて公太郎は自分が足を引っ掛けられて地面に転ばされたのだということに気が付いた。フィオレの余裕ぶった顔が白い空を背景にして見下ろしてくる。

「そこに寝ないでくれませんか? 踏みたくなるんだけど」
「なめやがって!」

 公太郎はすぐに跳躍して距離を取る。息を荒げてきた公太郎に対して、フィオレはまだ全然涼しい顔だった。約束通り剣を抜いてもいなければ両手を使ってすらいなかった。

「まだ向かって来られますか? わたしはまだピンピンしているわよ」

 その様子からはこの戦いを楽しんでいる姿さえ伺えた。

「くそったれが! あいつ、一体何者なんだ……」

 その疑問に答えたのは、ちっこい少女の姿をした神様だった。

「彼女はきっとチート能力者ですよ」
「チート能力者だあ?」

 表情を歪める公太郎に対して、神様は嬉し気だった。

「良かったですね、公太郎。これはチャンスですよ」
「何がどうチャンスなんだ?」

 何か起死回生のアイデアでもあるのかと期待して公太郎は神様に訊ねた。だが、神様の答えは彼の期待していたものとは正反対に違っていた。

「彼女のご機嫌をとって側に置いてもらうんですよ。彼女に力を与えたのが神様なら、きっといつか様子を見に来るはずです」
「この俺にあいつの機嫌を取れだと?」
「そうです。さあ、早く剣を置いてそこに土下座して彼女にあやまるんです。そして、部下にしてもらうようにお願いするんです」
「ふざけんじゃねえぞ。この俺があいつの機嫌なんて取ってたまるかーーー!!」

 公太郎の怒りは爆発した。

「おや、まだやる気でいるのかな? 掛かってきたければいつでもどうぞ」

 公太郎はフィオレの安い挑発には乗らなかった。代わりに宣言する。

「いいか? この物語の主人公はこの俺だ」
「はいはい」
「お前は姫だ」
「そうですよ」
「だったら、お姫様らしくしてたらどうなんだよ!」
「何が言いたいんですか?」
「いいか? お姫様ってのはな、俺に頼って救われて結婚して生涯めでたく暮らしてハッピーエンドになるものなんだよ! お前のような奴が……ん、なんだ?」

 フィオレは珍しく顔を赤くしておろおろしていた。周囲の野次馬がざわざわとなっている。

「え、それってつまり。え? え!?」
「あん?」
「あ、愛の告白ですか!? 結婚なんて考えたこともなかったー!」

 その言葉に公太郎はすぐに事情を理解した。周囲の野次馬から拍手が上がった。

「ちげーよ! そういう意味ちげーよ! なんで俺がお前に愛の告白なんてするんだよ! 意味分かんねえよ!」
「そうだよね。変だと思った。じゃあ、戦いの続きをするか」

 フィオレは若干落胆した様子で剣を抜いて両手を添えた。

「ん?」
「え?」

 二人はしばらく見つめあう。そして、フィオレは自分の間違いに気が付いた。

「しまった。ついうっかり抜いちゃった」

 そこを見逃す公太郎ではなかった。すぐに攻撃へと打って出る。

「どうした? 剣も両手も使わないんじゃなかったのか? 随分と余裕がないじゃないか、お姫様よう。あっはっはっ!」

 直後、笑っていた公太郎を貫いたのは少女の真剣な眼差し、そして叩きつけられたのは重い剣の平だった。公太郎の意識が吹っ飛ばされて落ちていく。

「サービス期間は終わったのよ。おやすみ、公太郎ちゃん」

 そして、剣が鞘に納められる音を最後に、公太郎の意識は闇に沈んでいった。
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