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第四章 決戦の時
乱入者
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正樹は振り切る決断をした。
天使の笑顔を横の暗闇へと追いやり、彼女の思いに答える決断を。
思いのたけを言葉に込めて、今……告白する!
「僕は……灯花さんのことを! あの日からずっと……!」
良い答えだ。望んだ結末がすぐここに転がってくる。
灯花は人を陥れた悪魔の笑みを浮かべ、彼に手を差し伸べようとした。
その時だった。
突然、公園を激しい風が吹き抜けた。
「キャア!」
「なんだ!?」
いきなりの暴風に灯花も正樹も驚いた。
風はすぐに収まった。だが、言いしれない影と不吉な威圧感が公園を覆っていた。
正樹と灯花は空を見上げた。
何かが飛んでいた。すぐに分かった。巨大で壮麗な鳥が空を飛んでいた。
その正体を正樹は知らなかったが、灯花は知っていた。
「ガルーダ! なんで……!?」
その姿に声を震わせてしまう。
ガルーダは天空を守護する王者の鳥だ。その力は強大で、過去には天界に攻め入ろうとした多くの悪魔達を葬ってきたという。
悪魔の幹部ですら勝てないと言われている相手だ。それなりに強いエリートの悪魔とは言っても、階級はまだ普通の悪魔に過ぎない灯花が太刀打ちできる相手では無かった。
出来るのは、せいぜい狙われないように祈ることぐらいだ。
その時、電話の音が鳴った。正樹の電話でも灯花の電話でも無かった。
「あ、もしもし」
天使ならほとんどみんなが持っているエンジェルスマホの音だった。
緊張感の無い声で電話に出たのは天使だった。ミンティシアがここに来ていた。
正樹はびっくりしてしまう。暗闇に追いやった彼女の顔と温もりが再び戻ってきた。
「何で電源を切っておかないのよ!」
優も同じ場所にいた。正樹が見ているのに気づいて、二人は罰が悪そうな顔をした。
「あ、お兄ちゃん。偶然。あたし達もここに散歩に来て」
「散歩に来たんです」
何か言い訳をしているようだったが、二人が無事ならいいかと正樹は安心した。
その時、今度は灯花の電話が鳴った。悪魔ならほとんどみんなが持っているデビルスマホの音だ。
灯花は苛立ちを押し殺しながら少し離れてポケットの電話を取った。
「なんですか。今大変な……悪魔神官長!?」
相手が上司だったので、灯花はすぐに苛立ちを殺して冷静な言葉遣いに戻した。
「はい……はい……今更ガルーダが来るから避難しろと仰られても……」
通話を終えて空を見る。すでに天空を守護する王者の鳥は来ている。しかも何故か公園の上を旋回し始めた。
逃げる場所などどこにも無いように思えた。
一方で、エンジェルスマホで連絡を聞いていたミンティシアはすぐに驚いた顔をした。
「ケルベロス……!? って何?」
誰も答えることは無かった。答える暇も無かった。突然の地響きが公園を襲って、みんなは何とか転ばないように耐えた。
地面に禍々しい魔法陣が描かれ不気味な門が浮上する。そこから三つの首を持つ巨大な地獄の番犬が姿を現した。
ケルベロスは空を見上げ、すぐに地上の天使を見た。
「ガルーダの相手をするのはひとまず後回しだ。まずは天使の始末をつける!」
魔犬の口が開かれ、そこから殺意の赤い光線が迸った。
ガルーダも同じような決断をしていた。
「ケルベロス。魔王の忠実なる僕か。奴はひとまず後回しにして、まずは悪魔トウカ・ヴァイアレート。次世代の幹部候補とも目される危険な悪魔を今のうちに摘んでおくとしよう!」
鳥が吠え、その嘴から悪を滅する聖なる光が発射された。
「え……?」
その輝く視界全体に広がる光に、灯花は動くことも出来なかった。光線が身を焼こうとする。その寸前、
「灯花さん! 危ない!」
正樹が跳び出していた。立ち尽くす灯花の体を抱きしめ、その場から出来るだけ離れるようにジャンプした。
二人は転がって光線を回避した。
「ぐっ!」
正樹の背中が少し焼けたが、悪を滅する光線は人間にはクリティカルヒットしなかった。
正樹の腕の中で灯花は驚いたように目を見開いていた。
「正樹さん! どうして……」
「だって、大切な人を守るのは当然でしょ」
「……っ!」
灯花の中で不意に何かが高鳴る音がした。その正体を掴む前に、正樹は灯花の体を離して立ち上がっていた。
危機はまだ去ってはいない。怪鳥は再び旋回し、攻撃の構えに入ろうとしていた。
一方でケルベロスの光線も飛んでいた。天使に向かって突き進む。
その先にはまだ何が起こったのか分からないでいるカオンが立っていた。
カオンはスマホを手に取ったまま慌てていた。
「え? ガルーダが来て、ケルベロスも来たって……え?」
「ん? 危ねえ!」
「キャアア!」
譲治は光線に気が付くなり、とっさにカオンを押し倒していた。すぐ頭上を殺意をもった赤い光線が通り過ぎていく。
譲治はすぐ下に組み敷いたカオンに訊ねた。
「大丈夫だったか?」
「はい……」
「あの野郎!!」
立ち上がった譲治の行動は早かった。光線を放ったのがでかい黒い犬だってことはすぐに分かった。
それにさっき光線を落としてきた鳥がいることにも気づいていた。
おそらくさっきの電話であったガルーダとケルベロスなのだろうが、それ以上のことは分からない。
モンスターに話をしても通じないだろう。だから譲治はすぐ傍にいる人間に訊いた。正樹に向かって、
「おい、なんだあいつらは」
そう訊ねてくる恐い顔の人間を、正樹は知らなかったが灯花は知っていた。
だが、リアルで見るとさらに恐くてしかも怒っていて、さすがの灯花もびっくりして近くにいる正樹にすがりついてしまった。
正樹は震えている彼女の手をそっと優しく握ってから、彼に向かって言った。
「分からない。だが、僕の大切な人を傷つけようとした」
「だな。それだけ分かれば十分か」
お互いの敵はそれぞれにいる。
正樹と譲治はお互いに背中を預けて立った。それぞれに自分の立ち向かう敵を睨み据える。
その殺気にガルーダとケルベロスは驚いたが、攻撃を止めることはしなかった。
「人間め、悪魔の……!」
「天使の味方をするのか!」
「「消し飛ぶがいい!!」」
ガルーダが空を羽ばたいて嘴を開いて急降下し、ケルベロスが猛然と地を蹴ってダッシュした。
「消し飛ぶのはお前だ!!」
「吠えるな、犬っころが!!」
正樹の拳がガルーダの横面をぶちのめし、譲治の拳がケルベロスの鼻をぶっ叩いた。
人間と天使と悪魔が見ている前で、激しい戦いが始まった。
正樹はガルーダを空へは逃がさなかった。飛ぼうとした相手の尻尾を掴んで地へ叩き付けた。敵の狙いを知ったガルーダも爪と翼と嘴で応戦するようになった。
「人間如きが地上なら我に勝てると思ったか!」
「関係ないな。思いを掛けてお前を殴るだけだ!」
「良かろう。その思いに受けて立つ!」
ガルーダの爪と正樹の拳が激突する。互角と思えたが、すぐにガルーダの爪は後ろに弾かれた。
「なに!?」
正樹の拳が再び迫る。ガルーダは翼で防御し、吠えた。
殴られたケルベロスは後方に下がったが、倒れることはしなかった。その瞳の殺意が膨れ上がった。
「人間風情が、魔王様の信頼厚い我に挑もうとはな」
「違うな」
「なに?」
「お前風情が人間様に挑んだんだ!」
譲治の拳がケルベロスに迫る。ケルベロスの複数の顔が吠えるが、譲治は怯まなかった。
跳び退く場所の地面が抉られる。譲治は強く敵を睨んだ。
「逃げたな」
「避けただけだ。我を挑発するなど100年早い!」
吠えるケルベロスが光線を放つ。譲治は臆せずに向かっていった。
優は「あーあ、正樹を怒らせちゃった」と呆れ顔でこれからのことを考え始め、
ミンティシアは「どっちも頑張ってください!」とみんなに応援を送り、
カオンは「どうしよう、みっちゃん」と何も出来ずにあたふたし、
灯花は「あれ、ケルベロス様……」魔王の信頼厚い幹部が人間にぶちのめされていくのをただ呆然と見つつ、正樹の方も気にして、
こっそり様子を伺っていたメルトは「ここからは出ていかない方がいいわよね……?」もっと気配を消して動かないようにした。
戦いは長期戦の様相を呈してきた。
天使や悪魔をも震えさせる二匹の大型の獣を相手に、二人の人間はよく戦っていた。
あるいはそれは愛のなせる技なのだろうか。
ミンティシアは興奮しながらみんなと一緒に応援した。
「正樹さん! 頑張ってください!」
「任せろ!」
「おのれ! 人間があああ!」
ボコボコにされたガルーダがついに正樹の手を逃れて天空に飛び立った。
ケルベロスの方はどうでも良かった。正樹の敵は空にいる。
優とミンティシアと灯花の視線は揃ってそっちへ向かった。
正樹は素早くミンティシアに向かって叫んだ。
「ミンティシア!」
「はい! 分かっています!」
呼ばれた天使はすぐに翼を広げて、正樹の体を掴んで空へと飛んだ。
「あの子、天使だったんですか?」
「そう、あたし達のところに来た天使だよ」
灯花と優はまぶしく空を見上げた。
地上では譲治の猛攻にケルベロスが放とうとする攻撃を潰されながら後退していた。
カオンはおっかなびっくりしながら見ているだけだった。
ガルーダとの距離が縮まっていく。巨大な天空の鳥はびっくりして迫ってくる正樹と天使を見た。
「ミンティシア! お前、裏切る気か!」
「愛を……愛を感じるんです!」
「愛だと!?」
「行ってください!」
自分は何を分かっているのか。訊かれれば困ってしまうが、感じる物はあった。
ミンティシアは感じるままに行動し、正樹の体をガルーダに向かって放り投げた。
この感覚は不思議だった。自分まで人間と一体になったようにミンティシアには感じられた。
「不思議ですね、この感じ!」
後は応援するだけだった。自分の信じる者を。
「やってください、正樹さん!」
「おう!」
正樹は拳を握って固めて振りかぶる。ガルーダは迷ってしまった。この愛の戦士を撃退していいのかと。
戦う者には致命的な隙だった。
「お前をぶん殴る!!」
正樹の拳は突撃した勢いのままに、ガルーダの腹に深くえぐり込まれた。
怪鳥が落ちていく。
正樹も落ちようとしたが、すぐにミンティシアが旋回して受け止めた。
「お疲れさまです、正樹さん」
「ありがとう。だが、まだだ!」
地上ではガルーダがよろめきながらも立ち上がった。
「戦士よ! ことここに至っては我が誇りにかけてお前を倒す!」
鳥が空に向かって吠える。正樹は体を掴んでいるミンティシアの手を軽く叩いて言った。
「悪いけど、今度はあそこまで頼む」
「はい! 任されました!」
天使が飛翔する。その身に愛を感じる人間を運んで。
天使の笑顔を横の暗闇へと追いやり、彼女の思いに答える決断を。
思いのたけを言葉に込めて、今……告白する!
「僕は……灯花さんのことを! あの日からずっと……!」
良い答えだ。望んだ結末がすぐここに転がってくる。
灯花は人を陥れた悪魔の笑みを浮かべ、彼に手を差し伸べようとした。
その時だった。
突然、公園を激しい風が吹き抜けた。
「キャア!」
「なんだ!?」
いきなりの暴風に灯花も正樹も驚いた。
風はすぐに収まった。だが、言いしれない影と不吉な威圧感が公園を覆っていた。
正樹と灯花は空を見上げた。
何かが飛んでいた。すぐに分かった。巨大で壮麗な鳥が空を飛んでいた。
その正体を正樹は知らなかったが、灯花は知っていた。
「ガルーダ! なんで……!?」
その姿に声を震わせてしまう。
ガルーダは天空を守護する王者の鳥だ。その力は強大で、過去には天界に攻め入ろうとした多くの悪魔達を葬ってきたという。
悪魔の幹部ですら勝てないと言われている相手だ。それなりに強いエリートの悪魔とは言っても、階級はまだ普通の悪魔に過ぎない灯花が太刀打ちできる相手では無かった。
出来るのは、せいぜい狙われないように祈ることぐらいだ。
その時、電話の音が鳴った。正樹の電話でも灯花の電話でも無かった。
「あ、もしもし」
天使ならほとんどみんなが持っているエンジェルスマホの音だった。
緊張感の無い声で電話に出たのは天使だった。ミンティシアがここに来ていた。
正樹はびっくりしてしまう。暗闇に追いやった彼女の顔と温もりが再び戻ってきた。
「何で電源を切っておかないのよ!」
優も同じ場所にいた。正樹が見ているのに気づいて、二人は罰が悪そうな顔をした。
「あ、お兄ちゃん。偶然。あたし達もここに散歩に来て」
「散歩に来たんです」
何か言い訳をしているようだったが、二人が無事ならいいかと正樹は安心した。
その時、今度は灯花の電話が鳴った。悪魔ならほとんどみんなが持っているデビルスマホの音だ。
灯花は苛立ちを押し殺しながら少し離れてポケットの電話を取った。
「なんですか。今大変な……悪魔神官長!?」
相手が上司だったので、灯花はすぐに苛立ちを殺して冷静な言葉遣いに戻した。
「はい……はい……今更ガルーダが来るから避難しろと仰られても……」
通話を終えて空を見る。すでに天空を守護する王者の鳥は来ている。しかも何故か公園の上を旋回し始めた。
逃げる場所などどこにも無いように思えた。
一方で、エンジェルスマホで連絡を聞いていたミンティシアはすぐに驚いた顔をした。
「ケルベロス……!? って何?」
誰も答えることは無かった。答える暇も無かった。突然の地響きが公園を襲って、みんなは何とか転ばないように耐えた。
地面に禍々しい魔法陣が描かれ不気味な門が浮上する。そこから三つの首を持つ巨大な地獄の番犬が姿を現した。
ケルベロスは空を見上げ、すぐに地上の天使を見た。
「ガルーダの相手をするのはひとまず後回しだ。まずは天使の始末をつける!」
魔犬の口が開かれ、そこから殺意の赤い光線が迸った。
ガルーダも同じような決断をしていた。
「ケルベロス。魔王の忠実なる僕か。奴はひとまず後回しにして、まずは悪魔トウカ・ヴァイアレート。次世代の幹部候補とも目される危険な悪魔を今のうちに摘んでおくとしよう!」
鳥が吠え、その嘴から悪を滅する聖なる光が発射された。
「え……?」
その輝く視界全体に広がる光に、灯花は動くことも出来なかった。光線が身を焼こうとする。その寸前、
「灯花さん! 危ない!」
正樹が跳び出していた。立ち尽くす灯花の体を抱きしめ、その場から出来るだけ離れるようにジャンプした。
二人は転がって光線を回避した。
「ぐっ!」
正樹の背中が少し焼けたが、悪を滅する光線は人間にはクリティカルヒットしなかった。
正樹の腕の中で灯花は驚いたように目を見開いていた。
「正樹さん! どうして……」
「だって、大切な人を守るのは当然でしょ」
「……っ!」
灯花の中で不意に何かが高鳴る音がした。その正体を掴む前に、正樹は灯花の体を離して立ち上がっていた。
危機はまだ去ってはいない。怪鳥は再び旋回し、攻撃の構えに入ろうとしていた。
一方でケルベロスの光線も飛んでいた。天使に向かって突き進む。
その先にはまだ何が起こったのか分からないでいるカオンが立っていた。
カオンはスマホを手に取ったまま慌てていた。
「え? ガルーダが来て、ケルベロスも来たって……え?」
「ん? 危ねえ!」
「キャアア!」
譲治は光線に気が付くなり、とっさにカオンを押し倒していた。すぐ頭上を殺意をもった赤い光線が通り過ぎていく。
譲治はすぐ下に組み敷いたカオンに訊ねた。
「大丈夫だったか?」
「はい……」
「あの野郎!!」
立ち上がった譲治の行動は早かった。光線を放ったのがでかい黒い犬だってことはすぐに分かった。
それにさっき光線を落としてきた鳥がいることにも気づいていた。
おそらくさっきの電話であったガルーダとケルベロスなのだろうが、それ以上のことは分からない。
モンスターに話をしても通じないだろう。だから譲治はすぐ傍にいる人間に訊いた。正樹に向かって、
「おい、なんだあいつらは」
そう訊ねてくる恐い顔の人間を、正樹は知らなかったが灯花は知っていた。
だが、リアルで見るとさらに恐くてしかも怒っていて、さすがの灯花もびっくりして近くにいる正樹にすがりついてしまった。
正樹は震えている彼女の手をそっと優しく握ってから、彼に向かって言った。
「分からない。だが、僕の大切な人を傷つけようとした」
「だな。それだけ分かれば十分か」
お互いの敵はそれぞれにいる。
正樹と譲治はお互いに背中を預けて立った。それぞれに自分の立ち向かう敵を睨み据える。
その殺気にガルーダとケルベロスは驚いたが、攻撃を止めることはしなかった。
「人間め、悪魔の……!」
「天使の味方をするのか!」
「「消し飛ぶがいい!!」」
ガルーダが空を羽ばたいて嘴を開いて急降下し、ケルベロスが猛然と地を蹴ってダッシュした。
「消し飛ぶのはお前だ!!」
「吠えるな、犬っころが!!」
正樹の拳がガルーダの横面をぶちのめし、譲治の拳がケルベロスの鼻をぶっ叩いた。
人間と天使と悪魔が見ている前で、激しい戦いが始まった。
正樹はガルーダを空へは逃がさなかった。飛ぼうとした相手の尻尾を掴んで地へ叩き付けた。敵の狙いを知ったガルーダも爪と翼と嘴で応戦するようになった。
「人間如きが地上なら我に勝てると思ったか!」
「関係ないな。思いを掛けてお前を殴るだけだ!」
「良かろう。その思いに受けて立つ!」
ガルーダの爪と正樹の拳が激突する。互角と思えたが、すぐにガルーダの爪は後ろに弾かれた。
「なに!?」
正樹の拳が再び迫る。ガルーダは翼で防御し、吠えた。
殴られたケルベロスは後方に下がったが、倒れることはしなかった。その瞳の殺意が膨れ上がった。
「人間風情が、魔王様の信頼厚い我に挑もうとはな」
「違うな」
「なに?」
「お前風情が人間様に挑んだんだ!」
譲治の拳がケルベロスに迫る。ケルベロスの複数の顔が吠えるが、譲治は怯まなかった。
跳び退く場所の地面が抉られる。譲治は強く敵を睨んだ。
「逃げたな」
「避けただけだ。我を挑発するなど100年早い!」
吠えるケルベロスが光線を放つ。譲治は臆せずに向かっていった。
優は「あーあ、正樹を怒らせちゃった」と呆れ顔でこれからのことを考え始め、
ミンティシアは「どっちも頑張ってください!」とみんなに応援を送り、
カオンは「どうしよう、みっちゃん」と何も出来ずにあたふたし、
灯花は「あれ、ケルベロス様……」魔王の信頼厚い幹部が人間にぶちのめされていくのをただ呆然と見つつ、正樹の方も気にして、
こっそり様子を伺っていたメルトは「ここからは出ていかない方がいいわよね……?」もっと気配を消して動かないようにした。
戦いは長期戦の様相を呈してきた。
天使や悪魔をも震えさせる二匹の大型の獣を相手に、二人の人間はよく戦っていた。
あるいはそれは愛のなせる技なのだろうか。
ミンティシアは興奮しながらみんなと一緒に応援した。
「正樹さん! 頑張ってください!」
「任せろ!」
「おのれ! 人間があああ!」
ボコボコにされたガルーダがついに正樹の手を逃れて天空に飛び立った。
ケルベロスの方はどうでも良かった。正樹の敵は空にいる。
優とミンティシアと灯花の視線は揃ってそっちへ向かった。
正樹は素早くミンティシアに向かって叫んだ。
「ミンティシア!」
「はい! 分かっています!」
呼ばれた天使はすぐに翼を広げて、正樹の体を掴んで空へと飛んだ。
「あの子、天使だったんですか?」
「そう、あたし達のところに来た天使だよ」
灯花と優はまぶしく空を見上げた。
地上では譲治の猛攻にケルベロスが放とうとする攻撃を潰されながら後退していた。
カオンはおっかなびっくりしながら見ているだけだった。
ガルーダとの距離が縮まっていく。巨大な天空の鳥はびっくりして迫ってくる正樹と天使を見た。
「ミンティシア! お前、裏切る気か!」
「愛を……愛を感じるんです!」
「愛だと!?」
「行ってください!」
自分は何を分かっているのか。訊かれれば困ってしまうが、感じる物はあった。
ミンティシアは感じるままに行動し、正樹の体をガルーダに向かって放り投げた。
この感覚は不思議だった。自分まで人間と一体になったようにミンティシアには感じられた。
「不思議ですね、この感じ!」
後は応援するだけだった。自分の信じる者を。
「やってください、正樹さん!」
「おう!」
正樹は拳を握って固めて振りかぶる。ガルーダは迷ってしまった。この愛の戦士を撃退していいのかと。
戦う者には致命的な隙だった。
「お前をぶん殴る!!」
正樹の拳は突撃した勢いのままに、ガルーダの腹に深くえぐり込まれた。
怪鳥が落ちていく。
正樹も落ちようとしたが、すぐにミンティシアが旋回して受け止めた。
「お疲れさまです、正樹さん」
「ありがとう。だが、まだだ!」
地上ではガルーダがよろめきながらも立ち上がった。
「戦士よ! ことここに至っては我が誇りにかけてお前を倒す!」
鳥が空に向かって吠える。正樹は体を掴んでいるミンティシアの手を軽く叩いて言った。
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