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第四章 決戦の時
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戦いは夕暮れが訪れるまで行われた。
「覚えてろよ!」
「うわ~~~ん!」
戦いに敗れたガルーダとケルベロスは泣いてそれぞれの世界に帰っていった。
正樹も譲治も戦いでボロボロの姿になっていたが、どちらもまだ動く余裕はあった。
「やったね」
「久しぶりに手を焼いた喧嘩だったぜ」
そして、お互いに背を預け合ったあったまま、拳を打ち付け合った。
「またな、坊主」
「うん、またね」
譲治がカオンの元に歩いていく。正樹は優とミンティシアの元に歩いていった。
「ごめんね、心配かけて」
「正樹が本気を出せばどうってことない相手でしょ」
「凄い戦いでした!」
優はさも当然と言った態度で好戦的に答え、ミンティシアは興奮に目をきらきらさせていた。
どちらも正樹が喧嘩で負ける心配はしていなかった。
優の心配は別の場所にあって、その心配の種が近づいてきた。
「あの、正樹さん」
「ごめん、大丈夫だった?」
灯花は柄にもなく緊張しているようだった。あれだけ恐い目にあったのだから当然かと正樹は思った。
あの敵はおそらく天界や魔界の関係者だったのだろう。初恋の人を巻き込んで悪いことをしたと正樹は思っていた。
灯花は少しもじもじと言葉を探して、それを探し当てたかのように目を上げて言った。
「また……会ってくれますか?」
「もちろんだよ。喜んで」
「ありがとうございます!」
灯花は頭を下げて笑顔でお礼を言った。正樹の始めて見る彼女の輝くような笑顔だった。
「正樹さん! 告白! 早く愛のこもった告は……もごもご」
余計なことを言おうとした天使の口は素早く優が封じた。
「今はその時じゃないの。空気読みなさい」
「こくこく」
優の忠告をミンティシアは素直に受け入れた。
自分も何となく今はその時ではない気がする。そんなよく分からない感情を天使自身も感じていた。
夕日に染まる公園を灯花は走り去っていった。
「灯花さんってあんな笑顔も出来るんだな……」
正樹は心からのうっとりした呟きを漏らし、
「あの女……!」
優は立ち向かうべき敵に再び闘志を露わにし、
「正樹さんの愛は見つかるのでしょうか」
ミンティシアはまたこれからの使命に思いを馳せていた。
夕日に染まる歩道を灯花は歩いていく。
彼女が一人になるのを見計らって、メルトは声を掛けに行った。
「大丈夫だった? トウカ」
「ええ、あの男は必ず悪魔の物にしてみせますよ」
「そう? やる気あるわね」
あんな物騒な鳥まで出てきたのに、さすがエリート悪魔のトウカは度胸があるとメルトは思う。
「あたしはあれを……あの怖い顔をした男を何とかいないといけないのかあ」
ケルベロスと殴り合っていた人間の凶暴性を思い出す。
自分はとてもあの男を何とかしたいとは思えない。
止めろと言われたら止めたい気分だった。
メルトが考えていると、トウカがぽつりと呟いた。
「ここは良い場所ですね」
「そう?」
彼女の顔が少し赤く染まって見えたのはきっと夕日のせいで、怒りのせいでは無いとメルトは思いたいところだった。
天界と魔界では再び偉い人達が集まって、それぞれに議論が戦わされていた。
会議は三日三晩に掛けて行われた。
そして、結論が出された。
「人間の力は愛に溢れていて強かった」
「人間の力は我欲にまみれていて強かった」
「「しばらく様子を見よう」」
と。
そうは決まったものの全面的な撤退が出来るはずもない。
天界の選んだ優秀な人間はすでに悪魔に知られているのだから。
完全に手を引くことは相手に付け入れられる危険性があった。
そこで目立たない密かな活動だけを続けることになって。
人間界には表向きは変わらない日常が続いていった。
正樹の家にはいつもの日常の朝が訪れていた。
幼馴染の少女がご飯の用意をしてくれて、気になっている少女が元気に挨拶してくれて、初恋の人が遊びに来る。
そんな変わらない日常だ。
休日の朝、ご飯を食べ終わって、ミンティシアは立ち上がった。
「それじゃあ、正樹さん! 今日は愛を探しにいきましょう!」
「え? 今から?」
「愛はいつだって良いんです! さあ、出かけましょう!」
あるいはそれを見つけたいのは天使自身かもしれない。
ミンティシアが正樹の腕を取って外へ連れ出していく。
正樹は仕方なく引かれるままについていく。
優と灯花は素早く目配せを交し合い、立ち上がった。
「お兄ちゃんが行くなら、あたしも行くよ!」
「ああああ、あくまでも天使の好きにはさせません!」
すぐに二人の後を追いかけた。
今日はよく晴れた良い天気で絶好のお出かけ日和だった。
青い空に白い雲。
天界なんて見えないけど、天使ならここにいる。
正樹の手を掴んで引っ張っている。
気持ちの良い朝に、希望の出会いはすぐに見つかるように思えた。
天使の少女は笑って言った。
「今日こそ愛を見つけましょうね!」
「覚えてろよ!」
「うわ~~~ん!」
戦いに敗れたガルーダとケルベロスは泣いてそれぞれの世界に帰っていった。
正樹も譲治も戦いでボロボロの姿になっていたが、どちらもまだ動く余裕はあった。
「やったね」
「久しぶりに手を焼いた喧嘩だったぜ」
そして、お互いに背を預け合ったあったまま、拳を打ち付け合った。
「またな、坊主」
「うん、またね」
譲治がカオンの元に歩いていく。正樹は優とミンティシアの元に歩いていった。
「ごめんね、心配かけて」
「正樹が本気を出せばどうってことない相手でしょ」
「凄い戦いでした!」
優はさも当然と言った態度で好戦的に答え、ミンティシアは興奮に目をきらきらさせていた。
どちらも正樹が喧嘩で負ける心配はしていなかった。
優の心配は別の場所にあって、その心配の種が近づいてきた。
「あの、正樹さん」
「ごめん、大丈夫だった?」
灯花は柄にもなく緊張しているようだった。あれだけ恐い目にあったのだから当然かと正樹は思った。
あの敵はおそらく天界や魔界の関係者だったのだろう。初恋の人を巻き込んで悪いことをしたと正樹は思っていた。
灯花は少しもじもじと言葉を探して、それを探し当てたかのように目を上げて言った。
「また……会ってくれますか?」
「もちろんだよ。喜んで」
「ありがとうございます!」
灯花は頭を下げて笑顔でお礼を言った。正樹の始めて見る彼女の輝くような笑顔だった。
「正樹さん! 告白! 早く愛のこもった告は……もごもご」
余計なことを言おうとした天使の口は素早く優が封じた。
「今はその時じゃないの。空気読みなさい」
「こくこく」
優の忠告をミンティシアは素直に受け入れた。
自分も何となく今はその時ではない気がする。そんなよく分からない感情を天使自身も感じていた。
夕日に染まる公園を灯花は走り去っていった。
「灯花さんってあんな笑顔も出来るんだな……」
正樹は心からのうっとりした呟きを漏らし、
「あの女……!」
優は立ち向かうべき敵に再び闘志を露わにし、
「正樹さんの愛は見つかるのでしょうか」
ミンティシアはまたこれからの使命に思いを馳せていた。
夕日に染まる歩道を灯花は歩いていく。
彼女が一人になるのを見計らって、メルトは声を掛けに行った。
「大丈夫だった? トウカ」
「ええ、あの男は必ず悪魔の物にしてみせますよ」
「そう? やる気あるわね」
あんな物騒な鳥まで出てきたのに、さすがエリート悪魔のトウカは度胸があるとメルトは思う。
「あたしはあれを……あの怖い顔をした男を何とかいないといけないのかあ」
ケルベロスと殴り合っていた人間の凶暴性を思い出す。
自分はとてもあの男を何とかしたいとは思えない。
止めろと言われたら止めたい気分だった。
メルトが考えていると、トウカがぽつりと呟いた。
「ここは良い場所ですね」
「そう?」
彼女の顔が少し赤く染まって見えたのはきっと夕日のせいで、怒りのせいでは無いとメルトは思いたいところだった。
天界と魔界では再び偉い人達が集まって、それぞれに議論が戦わされていた。
会議は三日三晩に掛けて行われた。
そして、結論が出された。
「人間の力は愛に溢れていて強かった」
「人間の力は我欲にまみれていて強かった」
「「しばらく様子を見よう」」
と。
そうは決まったものの全面的な撤退が出来るはずもない。
天界の選んだ優秀な人間はすでに悪魔に知られているのだから。
完全に手を引くことは相手に付け入れられる危険性があった。
そこで目立たない密かな活動だけを続けることになって。
人間界には表向きは変わらない日常が続いていった。
正樹の家にはいつもの日常の朝が訪れていた。
幼馴染の少女がご飯の用意をしてくれて、気になっている少女が元気に挨拶してくれて、初恋の人が遊びに来る。
そんな変わらない日常だ。
休日の朝、ご飯を食べ終わって、ミンティシアは立ち上がった。
「それじゃあ、正樹さん! 今日は愛を探しにいきましょう!」
「え? 今から?」
「愛はいつだって良いんです! さあ、出かけましょう!」
あるいはそれを見つけたいのは天使自身かもしれない。
ミンティシアが正樹の腕を取って外へ連れ出していく。
正樹は仕方なく引かれるままについていく。
優と灯花は素早く目配せを交し合い、立ち上がった。
「お兄ちゃんが行くなら、あたしも行くよ!」
「ああああ、あくまでも天使の好きにはさせません!」
すぐに二人の後を追いかけた。
今日はよく晴れた良い天気で絶好のお出かけ日和だった。
青い空に白い雲。
天界なんて見えないけど、天使ならここにいる。
正樹の手を掴んで引っ張っている。
気持ちの良い朝に、希望の出会いはすぐに見つかるように思えた。
天使の少女は笑って言った。
「今日こそ愛を見つけましょうね!」
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