天使は愛を囁く

けろよん

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第五章 後日談

灯花と逆襲のモンスター

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 天気の良い朝だった。こんな日は仲の良い恋人と散歩できたら、さぞ楽しいだろうなと思える朝だった。
 そんな朝、灯花は再び公園に来ていた。
 といっても今日は別に正樹を誘ったわけでは無かった。
 朝起きたら、灯花のデビルスマホに挑戦状が届いていたのだ。

『勝負を申し込む。決闘だ。場所は公園、朝○時に待つ。俺は必ずお前に復讐する』

と……

「どこの誰なのでしょうね。このわたしに挑戦しようなんて身の程知らずは」

 灯花はエリートの悪魔だ。その実力は古参の幹部には及ばなくても、並の悪魔の中では上位だと自負していた。
 挑戦状には差出人の名前は無かった。ただ復讐すると書かれていたから、どこかで恨みは買ったのだろう。
 思い当たる節は無かったが。

「まったく、こんな暇があったら、正樹さんとデート……いえ、悪魔の使命を果たしに行きたいんですが……」

 無視をして逃げたと思われても癪に障る。後の事を考えると早く終わらせるのが一番だろう。
 だが、相手の姿が見当たらない。

「逃げたんでしょうか」

 灯花は歩いて探そうとする。だが、すぐにどこかから声がして足を止めた。

「逃げずに来たようだな! トウカ・ヴァイアレート!」
「どこですか! 姿を見せなさい!」

 灯花は周囲に目を走らせるが、相手の姿が見えない。よほど隠れるのが上手い奴なのだろうか。
 慎重に辺りの景色に目を凝らせて探そうとすると、再び声がした。

「ここだよ、ここ!」
「ここ?」
「お前の足元だ!」
「足元? うわっ」

 てっきり、木の陰かどこかに隠れていると思っていたので遠くを探してしまっていた。
 見下ろすと、すぐ足元に青い丸っこい奴がいた。まさに灯台元暗しだった。
 灯花は慌てて飛びのいて距離を取った。
 青い奴は円らな瞳をして見上げてきた。

「俺はお前に殺されたスライム8郎の兄、スライム5郎だ!」
「スライム? ああ」

 灯花はその時になってやっと以前にスライムを踏んだことを思い出した。
 別に悪気があったわけではない。反省はしていない。

「あれは仕方なかったのです。足元にいたから」
「お前に殺された弟の無念、俺が晴らす! 決闘だ!」
「いいでしょう。そこまで言うなら」

 挑まれた決闘だ。スライムぐらいなら灯花の力でどうとでも転がせる。

 バトルだ!

 灯花は鞭を構えてやる気を見せるが、スライムは条件を出してきた。

「だが、スライムの俺がエリート悪魔のお前と普通に戦っても勝ち目は無いだろう。条件を出させてもらうぞ」
「条件?」

 相手は弱者だ。ハンデをくれと言うのなら答えてやるのも強者の務めだろう。
 スライムは言う。

「弟を倒した技を俺にも掛けてみろ。耐えきったら俺の勝ちだ!」
「倒した技……?」

 何か技を使っただろうか。
 灯花は考えた。思い出す前に相手が言った。

「とぼけても無駄だ! 見ていた奴がいるんだぞ! その足で俺の弟を踏み殺したのだろう。さあ、俺にもその技を掛けてみろ!」
「さっさと済ませますか」
「ぐほっ、いきなり!」

 灯花は足を上げると容赦なくスライムを踏んだ。
 もうスライムと話をするのに飽きてきていた。何が楽しくて朝からこんなことをしないといけないのか。早く正樹の家に行きたかった。
 スライムを容赦なく踏む。踏む。踏みつぶそうとねじり込む。だが、スライムはなかなか潰れなかった。
 スライムは強気に叫ぶ。

「どうした、トウカ! その程度か! 弟の苦しみはこんなものじゃなかったはずだ。弟を倒した力を見せてみろよ!」
「うるさいですね。それがお望みなら、くれてあげますか」
「ぐあああああ!」

 灯花はさらに踏む足の力を強めた。
 足の裏で踏まれているスライムが悲鳴を上げる。
 何が楽しくてこんなことをしないといけないのか。早く終わらせてしまおう。
 灯花は冷酷と知られる悪魔だったが、他者の命を奪うことを喜べるほど残忍でも無かった。だが、相手の望みを聞いてやる慈悲ぐらいは持っていた。
 精一杯にスライムを踏む。踏んでやる。

「ん、固いですね」
「どうした、トウカ! エリートと言ってもその程度か! 弟は踏みつぶせても俺は踏みつぶせないようだな!」
「うるさいですよ」

 灯花はさらに容赦なく踏んだ。ぐりぐりとねじり込み、さらに力を入れて一気に踏み抜いた。
 スライムはよく耐えたが、ついにライフが0になった。
 よく頑張ったと褒めるべきだろうが、しょせんはスライムだ。灯花の敵ではない。
 踏みつぶされたスライムの姿が光となって消えていく。

「やっとくたばりましたか……」
「よくやってくれたな、トウカ。だが、復讐はこれで終わりではない。俺の兄弟はまだまだいるぞ。必ず誰かが俺達の無念を晴らすだろう。先に地獄で待っているぞ」
「ええーーー」

 灯花は自分がスライムのような弱者になど負けるわけがないとは思っていたが、面倒な奴に目を付けられたなと思ったのだった。
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