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初めての、、、〜思考〜
しおりを挟む放課後、中井優は田辺唯に連れられて、食堂の椅子に座っていた。
食堂は、放課後には閉まっていて、売店がまだ空いている。帰宅部や暇を持て余した学生が勉強や話をしていたりする場所になっていた。
俺たちは、たまたま空いていた、一番奥側の席に座った。
俺は少し居心地が悪かったので、田辺唯に聞いた。
「なんか飲み物でも飲むか?」
「奢り?だったらコーラ」
奢りなら飲むのかよと思いながら、コーラとブラックコーヒーを買って持っていく。
それを見るなり田辺唯は、
「ブラックなんて飲めるんだね、すごーい、大人!!」
最後に「笑い」とか入りそうな声で茶化す。
俺はちょっとイラッと来たので、
「子供じゃないから」と言い返した。
すると、彼女の顔が真顔になった。
そして、その顔のまま、聞いてきた。
「ねぇ、だったら大人と子供の線引きってなんなの?」と。
俺はう~んと悩んだが、答えられなかった。
彼女は続けた。
「高校生になったら大人?それとも18才になったら?または成人式を迎えたら?どれも正解じゃないと思うの。年齢じゃなければ、就職したら?とか。それなら、15才でも大人になるよね。」
と、俺に問いかける。
俺は何も言えなくなった。いや、訂正しよう。
俺は考えもしなかったことだった。それは、自分は自分、他人は他人としか考えてなかったからだ。
そして、自分は何のために存在しているのか、今、なんとか生きているだけで、いつ死んでもいいとしか考えていなかったのだ。
黙ってしまった俺に彼女はこう言った。
「優くんは自分のこと大人って思って生きているわけじゃないでしょ?」
続けて、彼女が言う。
「あ、これからは、私のこと唯って読んでね、私は優くんって呼ぶから。」
「いきなり何言ってんだよ、名字ですら呼んだことないのに呼べるか、恥ずかしい。」
俺は抵抗した。
彼女はすかさず茶化してくる。
「何?恥ずかしいの?名前を呼ぶだけなのに?子供だねー。」
さっきまでの真顔から微笑んだ顔に戻った。
俺はふと、自分の言葉を思い返した。
「子供じゃないって言ったのに、子供って言われる、大人でも呼べないやつは呼べないだろ。」
彼女は、答えた。「だから、線引きって何?ってこと。答えはないかもしれないね。」
俺は、頷くしかなかった。
彼女は、沈黙を破るように笑顔で言ってきた。
「ねぇ、早く!!私のこと唯って呼んで。」
「なんでだよ、今言う場所でもないだろ。」
「え、今、言わないと絶対言わないでしょ?だから、催促してるんだけど。」
「言うか、恥ずかしい。」
そう、と彼女は少し悲しそうな顔を浮かべたが、すぐ微笑んだ顔に戻り、言ってきた。
「ま、いっか。いつか呼んでくれるだろうし。そうそう、優くん、明日の放課後も時間ある?
優くんに見てもらいたいものがあるんだ!!」
そう言って彼女は席を立った。
「今日は遅くなったから明日!!」
俺は、予定がなかったので、いいよ。と返事をして、そのまま二人は一緒に駅まで帰ることにした。
歩いている時間は、冷たい春風が二人の間を吹き抜けるくらいに、沈黙に包まれていた。
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