38 / 50
地獄の学期末試験。
エイクシュニル寮の妖精さん。
しおりを挟む
「ねぇねぇ、エイクシュニル寮に妖精さんがいるって聞いたことある?」
「あるわ。なんでも…探し物を見つけてくれたり、壊れたものを直してくれたりするんですって。」
「時にはメモでお悩み相談にも乗ってくれるって噂よ」
「そのおかげで、エイクシュニル寮は今回ウルヴァール競技祭で優勝することができたんですって。」
ウルヴァール競技祭が終わってから数日――
アルファルズ学園では
とある噂で持ちきりだった。
「リルベーラは知ってた?私たちの寮に妖精さんがいるって話……。」
「えぇ、聞いたことあるわよ。」
「へぇ~。会ったことある?」
ヘルミーナの言葉に思わず首を傾げた。
「会ったことあるわよ。」
(そもそもあなたのことを言っているのに何を言っているのかしら。)
ヘルミーナにわかるように返すと、彼女は一瞬目をパチパチと瞬かせてから、キラキラした目でリルベーラを見た。
「へぇぇぇ~リルベーラは会ったことあるのね!妖精さんって小さいの?話す?かわいい?やっぱり羽根とかあるの?」
立て続けに問いかけてくるその様子に、リルベーラはふっと笑った。
(あれだけ衣装係の皆から妖精さんって呼ばれていたのに……本当に自分のことには興味ないのね。)
「ん~…羽根はなかったと思うわ。でも、そうね……」
リルベーラはヘルミーナをちらりと見て一瞬止まると、
「透き通るような白銀の髪と白い肌を持ったとてもきれいな女の子だったわ。」
リルベーラは目の前の彼女を見ながら、妖精について伝える。
その瞬間――
キーンコーンカーンコーン
学園内に予鈴が鳴り響いた。
「いけない……あと五分で授業が始まるわ。急ぎましょ。」
ヘルミーナはもう少し話を聞きたそうだったが、授業に遅れるわけにはいかないと思ったのだろう。
そのまま口を閉じると、急いでリルベーラの後を追った。
***
「ふぅ~何とか間に合ったわね。」
ガラガラガラ――
リルベーラの横に座ると、タイミングよく前の扉が開いた。
「席につけ~。授業を始めるぞ~。」
少し眠そうな顔をしながらのそのそと教壇の前に進むと、教科書をポンッと置く。
「今日はこの世界の歴史について話していく。教科書は~……あまり楽しくないからなぁ。使わない。」
本当に開く気がないのか、そのまま丸めてゴミ箱へと捨てた。
(ヴァーレン先生の歴史の授業か~。面白くて好きなんだよね。)
パッと見は貴族にそぐわない……どこか小汚い雰囲気のギンネル・ヴァーレン。
クラスメイトやリルベーラの顔を見れば、あまり好まれていないのがわかる。
「ヴァーレン先生って。なんであんな格好しているのかしらね。」
リルベーラは扇子を口に当てると、周りに聞こえないような小さな声で耳打ちしてきた。
「ん~。でも似合っていないわけじゃないんだし、いいんじゃない?確かにもう少し整えた方がいいかなとは思うけど。」
(どうしても憎めないのよね~。フェルンお兄様が自分の部屋に閉じこもっているときにそっくりだし。)
ヘルミーナは二番目の兄であるフェルンを思い出しながら、黒板へと目を移した。
コツコツコツ
白いチョークが黒い板の上を走る。
「今日はユグラシルの成り立ちについて説明しよう。」
黒板の上には何度も書いて書き慣れているのか、大きな地図が広がっていた。
「なぜ、四つの国の中央にこのユグラシルがあるのか。これは神話紀元前まで遡る。君たちはこの時代のことをあまり知らないだろうが…またの名を……」
ギンネルは一度そこで区切ると、黒板に向き直って、字を書き足す。
「"原初加護時代"と呼ばれている。」
加護という名前が出た途端、生徒たちの目の色が変わった。
(ん~国によって考え方が違うとは言っていたけど、ここまで差があるなんてね。)
ヘルミーナはぐるっと周りを見渡してから、もう一度前を向いた。
「国によって、加護の考え方は様々だからな。色々な感情を感じることだろう。だが、覚えておいて損することではないから、話は聞いておくように。」
ギンネルの言葉を皮切りに、授業はどんどん進んでいった。
「神話紀元前。ここでは原初加護時代と言おうか。この時代はすべての人、生まれながらに強弱はあれど加護を有していた時代だと言われている。」
(へぇ~加護を全員が持っていたなんて夢みたいね。私も使ってみたかったなぁ~。)
ヘルミーナはギンネルの話を聞きながら、黒板に書いてある字をノートへと写していく。
それから、あっという間に時間が経ち――
キーンコーンカーンコーン
授業を終えるチャイムが鳴り響いた。
「なんだ、もう時間か……。」
ギンネルは集中すると時間を気にすることがなくなるのか、チャイムの音でパッと生徒たちの顔を見た。
「今日の授業はここまでにしよう。」
その言葉と同時に黒板に書いた文字をきれいに消していく。
黒板消しを戻して手をパンパンッと叩くと、ギンネルはニヒルな笑みを浮かべた。
「あぁ~これだけ伝えておく。今日の授業内容は次のテストに出るからな。」
その言葉を聞いた瞬間――
ガタガタガタッ
教室にいた生徒たちが一斉に立ち上がった。
「せ、先生。ヴァーレン先生!て、テストってどういうことですか!?」
誰かが、ギンネルに質問をするが、ギンネルはそれに答えることなく教室を出ていく。
その場に残ったのは、絶望という名の悲鳴だけだった……。
「あるわ。なんでも…探し物を見つけてくれたり、壊れたものを直してくれたりするんですって。」
「時にはメモでお悩み相談にも乗ってくれるって噂よ」
「そのおかげで、エイクシュニル寮は今回ウルヴァール競技祭で優勝することができたんですって。」
ウルヴァール競技祭が終わってから数日――
アルファルズ学園では
とある噂で持ちきりだった。
「リルベーラは知ってた?私たちの寮に妖精さんがいるって話……。」
「えぇ、聞いたことあるわよ。」
「へぇ~。会ったことある?」
ヘルミーナの言葉に思わず首を傾げた。
「会ったことあるわよ。」
(そもそもあなたのことを言っているのに何を言っているのかしら。)
ヘルミーナにわかるように返すと、彼女は一瞬目をパチパチと瞬かせてから、キラキラした目でリルベーラを見た。
「へぇぇぇ~リルベーラは会ったことあるのね!妖精さんって小さいの?話す?かわいい?やっぱり羽根とかあるの?」
立て続けに問いかけてくるその様子に、リルベーラはふっと笑った。
(あれだけ衣装係の皆から妖精さんって呼ばれていたのに……本当に自分のことには興味ないのね。)
「ん~…羽根はなかったと思うわ。でも、そうね……」
リルベーラはヘルミーナをちらりと見て一瞬止まると、
「透き通るような白銀の髪と白い肌を持ったとてもきれいな女の子だったわ。」
リルベーラは目の前の彼女を見ながら、妖精について伝える。
その瞬間――
キーンコーンカーンコーン
学園内に予鈴が鳴り響いた。
「いけない……あと五分で授業が始まるわ。急ぎましょ。」
ヘルミーナはもう少し話を聞きたそうだったが、授業に遅れるわけにはいかないと思ったのだろう。
そのまま口を閉じると、急いでリルベーラの後を追った。
***
「ふぅ~何とか間に合ったわね。」
ガラガラガラ――
リルベーラの横に座ると、タイミングよく前の扉が開いた。
「席につけ~。授業を始めるぞ~。」
少し眠そうな顔をしながらのそのそと教壇の前に進むと、教科書をポンッと置く。
「今日はこの世界の歴史について話していく。教科書は~……あまり楽しくないからなぁ。使わない。」
本当に開く気がないのか、そのまま丸めてゴミ箱へと捨てた。
(ヴァーレン先生の歴史の授業か~。面白くて好きなんだよね。)
パッと見は貴族にそぐわない……どこか小汚い雰囲気のギンネル・ヴァーレン。
クラスメイトやリルベーラの顔を見れば、あまり好まれていないのがわかる。
「ヴァーレン先生って。なんであんな格好しているのかしらね。」
リルベーラは扇子を口に当てると、周りに聞こえないような小さな声で耳打ちしてきた。
「ん~。でも似合っていないわけじゃないんだし、いいんじゃない?確かにもう少し整えた方がいいかなとは思うけど。」
(どうしても憎めないのよね~。フェルンお兄様が自分の部屋に閉じこもっているときにそっくりだし。)
ヘルミーナは二番目の兄であるフェルンを思い出しながら、黒板へと目を移した。
コツコツコツ
白いチョークが黒い板の上を走る。
「今日はユグラシルの成り立ちについて説明しよう。」
黒板の上には何度も書いて書き慣れているのか、大きな地図が広がっていた。
「なぜ、四つの国の中央にこのユグラシルがあるのか。これは神話紀元前まで遡る。君たちはこの時代のことをあまり知らないだろうが…またの名を……」
ギンネルは一度そこで区切ると、黒板に向き直って、字を書き足す。
「"原初加護時代"と呼ばれている。」
加護という名前が出た途端、生徒たちの目の色が変わった。
(ん~国によって考え方が違うとは言っていたけど、ここまで差があるなんてね。)
ヘルミーナはぐるっと周りを見渡してから、もう一度前を向いた。
「国によって、加護の考え方は様々だからな。色々な感情を感じることだろう。だが、覚えておいて損することではないから、話は聞いておくように。」
ギンネルの言葉を皮切りに、授業はどんどん進んでいった。
「神話紀元前。ここでは原初加護時代と言おうか。この時代はすべての人、生まれながらに強弱はあれど加護を有していた時代だと言われている。」
(へぇ~加護を全員が持っていたなんて夢みたいね。私も使ってみたかったなぁ~。)
ヘルミーナはギンネルの話を聞きながら、黒板に書いてある字をノートへと写していく。
それから、あっという間に時間が経ち――
キーンコーンカーンコーン
授業を終えるチャイムが鳴り響いた。
「なんだ、もう時間か……。」
ギンネルは集中すると時間を気にすることがなくなるのか、チャイムの音でパッと生徒たちの顔を見た。
「今日の授業はここまでにしよう。」
その言葉と同時に黒板に書いた文字をきれいに消していく。
黒板消しを戻して手をパンパンッと叩くと、ギンネルはニヒルな笑みを浮かべた。
「あぁ~これだけ伝えておく。今日の授業内容は次のテストに出るからな。」
その言葉を聞いた瞬間――
ガタガタガタッ
教室にいた生徒たちが一斉に立ち上がった。
「せ、先生。ヴァーレン先生!て、テストってどういうことですか!?」
誰かが、ギンネルに質問をするが、ギンネルはそれに答えることなく教室を出ていく。
その場に残ったのは、絶望という名の悲鳴だけだった……。
72
あなたにおすすめの小説
王太子に理不尽に婚約破棄されたので辺境を改革したら、王都に戻ってきてくれと言われました
水上
恋愛
【全18話完結】
「君は中身まで腐っている」と婚約破棄されたエリアナ。
そんな彼女は成り行きで辺境へ嫁ぐことに。
自身の知識と技術で辺境を改革するエリアナ。
そんな彼女を、白い結婚のはずなのに「膝枕は合理的だ」と甘やかす夫。
一方、エリアナを追放した王都では、彼女の不在の影響が出始めて……。
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』
アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた
【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。
カクヨム版の
分割投稿となりますので
一話が長かったり短かったりしています。
『お前を愛する事はない』なんて言ってないでしょうね?
あんど もあ
ファンタジー
政略結婚で妻を娶った息子に、母親は穏やかに、だが厳しく訊ねる。
「『お前を愛する事は無い』なんて言ってないでしょうね?」
落ちこぼれ公爵令息の真実
三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。
設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。
投稿している他の作品との関連はありません。
カクヨムにも公開しています。
ラウリーは夢を見ない
ひづき
ファンタジー
公爵家に生まれたラウリーは失敗作だと両親に評価された。
ラウリーの婚約者は男爵家の跡取り息子で、不良物件を押し付けられたとご立腹。お前に使わせる金は一切ないと言う。
父である公爵は、ラウリーの婚約者の言い分を汲んで清貧を覚えさせるためにラウリーへの予算を半分に削れと言い出した。
「───お嬢様を餓死でもさせるおつもりですか?」
ないものを削れだなんて無理難題、大変ね。と、ラウリーは他人事である。
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章をゆっくり更新中です。書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】灰かぶりの花嫁は、塔の中
白雨 音
恋愛
父親の再婚により、家族から小間使いとして扱われてきた、伯爵令嬢のコレット。
思いがけず結婚が決まるが、義姉クリスティナと偽る様に言われる。
愛を求めるコレットは、結婚に望みを託し、クリスティナとして夫となるアラード卿の館へ
向かうのだが、その先で、この結婚が偽りと知らされる。
アラード卿は、彼女を妻とは見ておらず、曰く付きの塔に閉じ込め、放置した。
そんな彼女を、唯一気遣ってくれたのは、自分よりも年上の義理の息子ランメルトだった___
異世界恋愛 《完結しました》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる