39 / 50
地獄の学期末試験。
裁縫室の勉強会。
しおりを挟む
「はぁ~、もうすぐ学期末試験かぁ~……」
エイクシュニル寮、裁縫室――
クララのため息が裁縫室の中に響き渡った。
ウルヴァール競技祭以降、衣装係のメンバーとリルベーラの七人はちょくちょく集まってお茶会を楽しんでいた。
クララの言葉にリルベーラとヘルミーナは首を傾げた。
「クララ先輩。学期末試験ってそんなに大変なんですか?」
クララはリルベーラの方を見るともう一度深く息を吐く。
「大変ってものじゃないわ……筆記はまだいいのよ。でも実技がね~……」
その言葉に先輩たち全員が頷いた。
「私はダンスのテスト追試だったぞ…。たった一回、たった一回つまずいただけなのにさぁ……」
「私も~お茶会のテストで前の人とお菓子が被っただけで追試になったわ。」
「私は音楽……ヴァイオリンとフルートどちらかしか選べないって……ピアノなら弾けたのに……」
(えぇ~ここにいる全員一個は追試ってこと…!?)
先輩たちはそれぞれテーブルの上のお菓子を手に取り、大きく息を吸った。
そして――
「「「「「刺繍は一発合格だったのに~~~」」」」」
ここにいる先輩たちの声が重なった。
《でも、意外ですね。オスカルド先輩は苦手な物なんてないと思ってました。》
今まで黙って聞いていたヘルミーナがノートを書く。
オスカルドはしばらく黙っていると、意を決して話し始めた。
「だってぇ~私、男側のダンス踊れないのよ~ん。」
まさかの話し方に、ヘルミーナだけでなくミライア以外の全員が固まった。
「はは。オスカル皆が驚いてしまったぞ?」
「えぇ~でもぉここのメンバーにはバレてもいいかなぁって思ってぇ~。」
どうやらミライアはオスカルドの正体を知っていたらしい。
(え~っと、初めて出会ったけど、心が乙女ってことなのかな?でもこういうのって自由だもんね。裁縫も上手だし。私にとっては大好きな先輩に変わりないわ。)
《私は、どんなオスカルド先輩でも好きですよ?それにミライア先輩も男勝りですし、お似合いなんじゃないですか?》
ヘルミーナの言葉に二人は頬を紅くした。
二人の様子を見ていたクララたちも、ニヤニヤしている。
「もしかして~…お二人はそういう関係なんですかぁ~?」
「へぇ~お似合いですね!いいと思います。ねぇ~リナリア。」
ユーディットに名を呼ばれた瞬間、リナリアは口をあんぐりと開けて固まった。
「へっ!?!?私?」
「あなた以外、他に誰がいるっていうのよ。」
リナリアの返事にユーディットは首を傾げる。
(そうよね…ここにはリナリアって私しかいないし。)
リナリアはちらりとリルベーラの方を見て、胸の奥が小さく跳ねるのを感じた。
(破いた布は縫うことができる……か。ここはきっと縫い直すチャンスよね。)
「確かにお二人はお似合いだと思うわ、っていうか!考えたんだけどよければ皆で勉強会とか…どうかしら?」
自信がないのか、少しずつ声が小さくなっていく。
しかし――
その心配は杞憂に終わった。
バンッ!!
クララが机を叩くと立ち上がる。
「それ!いいわね!!お互い得意なものを教えあうっていうのはどうかしら!」
クララの言葉に皆が立ち上がる。
「筆記なら教えられるぞ。」
「ダンスなら…」
「ヴァイオリンなら…」
「フルートなら私が教えられるわぁ~」
先輩たちがそれぞれ得意なものを言っていけば、全員の視線がリナリアへと向いた。
「お茶会のマナーなら……な、なんとかなると思う。」
その言葉にここにいた全員の顔がパッと輝いた。
「で、でもあまり期待しないでね。何とかなる程度だから……そ、その……」
今まで輪の中にいるだけだったリナリアが、少し前に出ようとする。その様子を見て、ヘルミーナはクスリと笑った。
その姿を見ていたリルベーラがリナリアに近付いた。
「リナリア先輩。私もお茶会でしたらお手伝いできると思います。ですので……そ、その……」
目線を少し外すと、恥ずかしそうに一言。
「代わりに刺繍を教えてくれませんか?」
二人の間に沈黙が流れる。
すると、リナリアの背を押すように温かな空気が、その場を包んだ。
「う、うん。私でよかったら……」
こうして次の日から、裁縫室では毎日勉強会が開催されることになった。
***
「ここってどうやって解くの?」
「これは、Xを代入してこうすれば…ほら。」
二人組になって勉強する姿を見ながらヘルミーナは微笑む。
「へぇ~学年によって勉強内容って違うのね。」
ヘルミーナは足をバタバタ揺らしながら、隣に座るリルベーラを見ると、刺繍を指すのに苦戦していた。
「いたっ…。なんでうまくいかないのかしら。」
指にはたくさんの絆創膏が貼られている。
《リルって…不器用だったのね。》
思ったことをノートに書いて見せると、それを見た皆がクスクスと笑った。
「わ、わるかったわね……昔から針仕事は苦手なの…いたっ。」
「あ~だめよ、糸を引っ張りすぎ!それと全然下書き通りに刺繍できていないじゃない!ちょっと貸して!」
リナリアはリルベーラから刺繍枠を奪うと一つ一つ丁寧に糸を取っていく。
「はい、やり直し!これじゃあ試験で合格どころか、追試も通らないわよ。」
まさかのスパルタ指導に、リルベーラは思わず周囲を見回した。
しかし、ここにいるのは衣装係になるほどの腕前の人ばかり。
誰一人としてリルベーラの肩を持ってくれる人はいなかった。
ポンッ――
ヘルミーナはリルベーラの肩を軽くたたくと、首を横に振った。
「ミーナ。あなた一人余裕そうだけど、大丈夫なの?」
ヘルミーナは少し考えてから目の前にある問題をすらすらと解いていく。
「か、か、完璧……」
《昔から本を読んだり勉強するのが好きだったからね。お兄様たちにも教えてもらっていたし!》
自信満々にこたえるヘルミーナだったが、リルベーラ以外にその姿は見えていなかった。
エイクシュニル寮、裁縫室――
クララのため息が裁縫室の中に響き渡った。
ウルヴァール競技祭以降、衣装係のメンバーとリルベーラの七人はちょくちょく集まってお茶会を楽しんでいた。
クララの言葉にリルベーラとヘルミーナは首を傾げた。
「クララ先輩。学期末試験ってそんなに大変なんですか?」
クララはリルベーラの方を見るともう一度深く息を吐く。
「大変ってものじゃないわ……筆記はまだいいのよ。でも実技がね~……」
その言葉に先輩たち全員が頷いた。
「私はダンスのテスト追試だったぞ…。たった一回、たった一回つまずいただけなのにさぁ……」
「私も~お茶会のテストで前の人とお菓子が被っただけで追試になったわ。」
「私は音楽……ヴァイオリンとフルートどちらかしか選べないって……ピアノなら弾けたのに……」
(えぇ~ここにいる全員一個は追試ってこと…!?)
先輩たちはそれぞれテーブルの上のお菓子を手に取り、大きく息を吸った。
そして――
「「「「「刺繍は一発合格だったのに~~~」」」」」
ここにいる先輩たちの声が重なった。
《でも、意外ですね。オスカルド先輩は苦手な物なんてないと思ってました。》
今まで黙って聞いていたヘルミーナがノートを書く。
オスカルドはしばらく黙っていると、意を決して話し始めた。
「だってぇ~私、男側のダンス踊れないのよ~ん。」
まさかの話し方に、ヘルミーナだけでなくミライア以外の全員が固まった。
「はは。オスカル皆が驚いてしまったぞ?」
「えぇ~でもぉここのメンバーにはバレてもいいかなぁって思ってぇ~。」
どうやらミライアはオスカルドの正体を知っていたらしい。
(え~っと、初めて出会ったけど、心が乙女ってことなのかな?でもこういうのって自由だもんね。裁縫も上手だし。私にとっては大好きな先輩に変わりないわ。)
《私は、どんなオスカルド先輩でも好きですよ?それにミライア先輩も男勝りですし、お似合いなんじゃないですか?》
ヘルミーナの言葉に二人は頬を紅くした。
二人の様子を見ていたクララたちも、ニヤニヤしている。
「もしかして~…お二人はそういう関係なんですかぁ~?」
「へぇ~お似合いですね!いいと思います。ねぇ~リナリア。」
ユーディットに名を呼ばれた瞬間、リナリアは口をあんぐりと開けて固まった。
「へっ!?!?私?」
「あなた以外、他に誰がいるっていうのよ。」
リナリアの返事にユーディットは首を傾げる。
(そうよね…ここにはリナリアって私しかいないし。)
リナリアはちらりとリルベーラの方を見て、胸の奥が小さく跳ねるのを感じた。
(破いた布は縫うことができる……か。ここはきっと縫い直すチャンスよね。)
「確かにお二人はお似合いだと思うわ、っていうか!考えたんだけどよければ皆で勉強会とか…どうかしら?」
自信がないのか、少しずつ声が小さくなっていく。
しかし――
その心配は杞憂に終わった。
バンッ!!
クララが机を叩くと立ち上がる。
「それ!いいわね!!お互い得意なものを教えあうっていうのはどうかしら!」
クララの言葉に皆が立ち上がる。
「筆記なら教えられるぞ。」
「ダンスなら…」
「ヴァイオリンなら…」
「フルートなら私が教えられるわぁ~」
先輩たちがそれぞれ得意なものを言っていけば、全員の視線がリナリアへと向いた。
「お茶会のマナーなら……な、なんとかなると思う。」
その言葉にここにいた全員の顔がパッと輝いた。
「で、でもあまり期待しないでね。何とかなる程度だから……そ、その……」
今まで輪の中にいるだけだったリナリアが、少し前に出ようとする。その様子を見て、ヘルミーナはクスリと笑った。
その姿を見ていたリルベーラがリナリアに近付いた。
「リナリア先輩。私もお茶会でしたらお手伝いできると思います。ですので……そ、その……」
目線を少し外すと、恥ずかしそうに一言。
「代わりに刺繍を教えてくれませんか?」
二人の間に沈黙が流れる。
すると、リナリアの背を押すように温かな空気が、その場を包んだ。
「う、うん。私でよかったら……」
こうして次の日から、裁縫室では毎日勉強会が開催されることになった。
***
「ここってどうやって解くの?」
「これは、Xを代入してこうすれば…ほら。」
二人組になって勉強する姿を見ながらヘルミーナは微笑む。
「へぇ~学年によって勉強内容って違うのね。」
ヘルミーナは足をバタバタ揺らしながら、隣に座るリルベーラを見ると、刺繍を指すのに苦戦していた。
「いたっ…。なんでうまくいかないのかしら。」
指にはたくさんの絆創膏が貼られている。
《リルって…不器用だったのね。》
思ったことをノートに書いて見せると、それを見た皆がクスクスと笑った。
「わ、わるかったわね……昔から針仕事は苦手なの…いたっ。」
「あ~だめよ、糸を引っ張りすぎ!それと全然下書き通りに刺繍できていないじゃない!ちょっと貸して!」
リナリアはリルベーラから刺繍枠を奪うと一つ一つ丁寧に糸を取っていく。
「はい、やり直し!これじゃあ試験で合格どころか、追試も通らないわよ。」
まさかのスパルタ指導に、リルベーラは思わず周囲を見回した。
しかし、ここにいるのは衣装係になるほどの腕前の人ばかり。
誰一人としてリルベーラの肩を持ってくれる人はいなかった。
ポンッ――
ヘルミーナはリルベーラの肩を軽くたたくと、首を横に振った。
「ミーナ。あなた一人余裕そうだけど、大丈夫なの?」
ヘルミーナは少し考えてから目の前にある問題をすらすらと解いていく。
「か、か、完璧……」
《昔から本を読んだり勉強するのが好きだったからね。お兄様たちにも教えてもらっていたし!》
自信満々にこたえるヘルミーナだったが、リルベーラ以外にその姿は見えていなかった。
82
あなたにおすすめの小説
王太子に理不尽に婚約破棄されたので辺境を改革したら、王都に戻ってきてくれと言われました
水上
恋愛
【全18話完結】
「君は中身まで腐っている」と婚約破棄されたエリアナ。
そんな彼女は成り行きで辺境へ嫁ぐことに。
自身の知識と技術で辺境を改革するエリアナ。
そんな彼女を、白い結婚のはずなのに「膝枕は合理的だ」と甘やかす夫。
一方、エリアナを追放した王都では、彼女の不在の影響が出始めて……。
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』
アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた
【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。
カクヨム版の
分割投稿となりますので
一話が長かったり短かったりしています。
『お前を愛する事はない』なんて言ってないでしょうね?
あんど もあ
ファンタジー
政略結婚で妻を娶った息子に、母親は穏やかに、だが厳しく訊ねる。
「『お前を愛する事は無い』なんて言ってないでしょうね?」
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章をゆっくり更新中です。書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
落ちこぼれ公爵令息の真実
三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。
設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。
投稿している他の作品との関連はありません。
カクヨムにも公開しています。
ラウリーは夢を見ない
ひづき
ファンタジー
公爵家に生まれたラウリーは失敗作だと両親に評価された。
ラウリーの婚約者は男爵家の跡取り息子で、不良物件を押し付けられたとご立腹。お前に使わせる金は一切ないと言う。
父である公爵は、ラウリーの婚約者の言い分を汲んで清貧を覚えさせるためにラウリーへの予算を半分に削れと言い出した。
「───お嬢様を餓死でもさせるおつもりですか?」
ないものを削れだなんて無理難題、大変ね。と、ラウリーは他人事である。
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
【完結】灰かぶりの花嫁は、塔の中
白雨 音
恋愛
父親の再婚により、家族から小間使いとして扱われてきた、伯爵令嬢のコレット。
思いがけず結婚が決まるが、義姉クリスティナと偽る様に言われる。
愛を求めるコレットは、結婚に望みを託し、クリスティナとして夫となるアラード卿の館へ
向かうのだが、その先で、この結婚が偽りと知らされる。
アラード卿は、彼女を妻とは見ておらず、曰く付きの塔に閉じ込め、放置した。
そんな彼女を、唯一気遣ってくれたのは、自分よりも年上の義理の息子ランメルトだった___
異世界恋愛 《完結しました》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる