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食いしん坊聖女は婚約破棄される。
食いしん坊聖女。
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「さぁ、今日は何を作りましょうか!!」
アウローラ大神殿。
ルシフェール国王城のすぐ隣に位置し、大聖女という地位を授かった者と大聖女に認められた聖女、神官だけが祈りを捧げることが出来る特別な場所。
そんな大神殿の調理場で包丁を片手に持ち、うんうんとうなりながら何を作ろうかと考えている少女がいた。
アンネリーゼ・ラファリエール14歳。
今まで多くの大聖女を輩出してきたラファリエール公爵家の長女にして、歴代聖女の中でもトップクラスと言われているほどの実力者である。
ルシフェール国では珍しい、白金の髪に透き通った白肌。全てのパーツが左右対称で人形のように整った顔立ち。少し垂れ目だからか、儚げな雰囲気を漂わせている。
まぁ、右手に持っているものが包丁でなければの話なのだが…。
「今日のメニューはホーンラビットの照り焼きなんてどうかしら?淡白なお肉だから油は少ないけど、その分甘辛くしたタレと相性抜群なのよ。んふふ…それに、ちょっと焦がしたお醤油の匂いが…最高なのよね。んふふ…」
作る前から味の想像をしているのか、美しい唇の端がキラキラと輝いている。
「はぁ…アンネリーゼ。取りあえず手に持っている包丁を置いてくれないか。緩みきった顔でお前に包丁を振るわれると…怖いんだ。(色々な意味で)」
緩み切った顔のアンネリーゼを見て、呆れた顔をしながらため息を吐く金髪に赤い瞳をした青年。
彼もまた端正な顔立ちをしているが、アンネリーゼのように整いすぎた神秘的な顔ではなく、十人並みの顔という感じで少しばかり安心感がある。
「一々うるさいわね。別に調理場を誰が使おうがその人の勝手でしょー。神殿の食事は聖女や神官の仕事なんだから。」
大神殿に限らず神殿には料理人はいない。そのため、全ての料理を新人神官や新人聖女が担うのだが、アウローラ大神殿だけは少し違った。
「お前は大聖女なんだぞ!?周りの手本となるように…って聞いているのか!?」
大聖女自ら調理場に立ち嬉々として料理をするからだ。
そのため、他の神殿の人達からは食いしん坊聖女なんて呼ばれているほどである。
「はいはい。聞いていますよ…っと。」
聞いているのか聞いていないのか定かではないアンネリーゼは包丁の刃を上に向け、峰の部分をホーンラビット目掛けて勢いよく振り下ろした。
どうやら肉を叩いて柔らかくするつもりらしい。
「別にいいじゃない。美味しい料理を作れることはとても大切だもの。私達は炊き出しすることだってあるんだし。十分お手本となっているわよ!!ねぇ?そう思うでしょ?」
アンネリーゼが周りを見渡せば、顔を青くしながら上下に素早く顔を振る新人たち。
それもそのはずだ。包丁をドン、ドン、ドンと調理台に叩きつける姿はまさに鬼のようで、しかも聖女を象徴とする白いドレスは赤く染まっているのだから…
さらに顔は作り物のように整っているとくれば、もはやホラーでしかない。
中には腕を擦って暖を取ろうとしている者までいる。
しかしそんなことは気にも留めず、料理を続けるアンネリーゼ。ケルネリウスもまた周りを気にせず、話を続ける。
「あーあー。まぁたそんなに汚して。それ落ちないんだぞ?いつも言っているだろうが…。魔物討伐するときはもう少し慎重に行動するようにと…また新調しないといけないじゃないか!!」
…
……
………
「「「「(いや、魔物討伐って聖女がするの!?!?)」」」」
新人たちの心の声が揃った瞬間だった…。
聞こえていないはずの言葉に反応するように「フフッ」と声を上げるアンネリーゼ。
思わず新人達も聞こえていたのではないかとビクッと肩を揺らした。
「んふ。慎重に行動しないから新調しないといけなくなったって…んふふ…面白いわね。」
…
……
………
「「「「(いや、そっちかーい!!!)」」」」
ツボに入ったのか一人で思い出して笑っているアンネリーゼにたちまちツッコミを入れる新人たち。
それでも怖いから言葉に出すものはいない…
まな板にホーンラビットを置き、そのまま料理を続けるアンネリーゼを見ていると、先ほどまで瘴気を放っていたはずのホーンラビットは浄化されたのかキラキラ輝くお肉に早変わりしていく。
「いい艶に弾力ね。新鮮な証拠だわ。」
肉を撫でながらうっとりする姿はまさに宝石を見つけて喜ぶお嬢様のようだ。
その姿を見た新人たちは男女問わず頬を赤くした。
昔からアンネリーゼは食材や料理が絡むと艶っぽい顔をする。その姿をみて自分のことが好きなのではないかと勘違いした人は数知れず…。
「大聖女になったらあんな事も出来るのね…。」
アンネリーゼの様子を見ていた聖女見習いがボソリと呟く。
彼女もまたアンネリーゼに魅せられた1人だった。
見習いの声が聞こえていたのか、ケルネリウスが見習いの肩に手を置いてから首を左右に軽く振った。
「いや、あれが出来るのは、アンネリーゼだけだ。他の者には出来ない。あいつは天才だからな…教えてもらおうと思っても無駄だ。今まで何人もの見習いたちが彼女に魅せられ挑戦したが…数日も経たずに挫折していたからな。」
諦めるように話すケルネリウス。いつも一緒にいるからかやたら説得力があるのは気の所為ではないだろう。
ルシフェール国を含むゴエティア大陸の周りには昔から隣人と言われる魔物や魔人がいる。
隣人と言えば聞こえはいいが、実際はそんなにいいものではない。
魔物や魔人は瘴気を発していて、生物が瘴気を取り込み過ぎれば魔物や魔人に堕ちる可能性がある。そして、一度魔物や魔人堕ちしてしまえば、元に戻ることはなく自分の意思に関係なく人々を襲ってしまうのだ。
そんな時に魔物討伐や魔人討伐を請け負うのが聖女と神官でありながら騎士でもある神官騎士だ。
聖女や神官は被害を受けた街の治癒をメインに行い、炊き出しなどをする。
中聖女になれば神から別のスキルを授かることが出来るが、それぞれスキルは違い同じものを授かることはほとんどない。
そして神官騎士は魔物の討伐へと向かう。神官騎士はスキルの代わりに瘴気に強い強靭な肉体を得る。
聖女や神官にも位が存在していて、聖女は大聖女から始まり中聖女、聖女、聖女見習いと続いていく。神官に関しては大神官、神官騎士、神官、神官見習いとなる。
聖女見習いから聖女へ上がることは毎日祈りを欠かさなければ難しいことではないのだが、大聖女になるのはとても難しい。そのため大聖女は数が少なく、王都や大きな領地に1人ずつ配属されるほどしかいない。
そしてその中の一人がアンネリーゼだ。
さすがに歴代トップクラスの聖女と言うだけあり、その実力は折り紙付きだ。
王都には王侯貴族も多く滞在しているため、大聖女が数名常駐するのが決まりになっているが、アンネリーゼの場合は1人で全てが対応可能。そのお陰で他の所に大聖女を配属できるようになり、以前よりもルシフェール国全体を瘴気から護れるようになっていた。
と、言っても本人はそんなことに気づいてもいなければ興味もないのだが…。
アウローラ大神殿。
ルシフェール国王城のすぐ隣に位置し、大聖女という地位を授かった者と大聖女に認められた聖女、神官だけが祈りを捧げることが出来る特別な場所。
そんな大神殿の調理場で包丁を片手に持ち、うんうんとうなりながら何を作ろうかと考えている少女がいた。
アンネリーゼ・ラファリエール14歳。
今まで多くの大聖女を輩出してきたラファリエール公爵家の長女にして、歴代聖女の中でもトップクラスと言われているほどの実力者である。
ルシフェール国では珍しい、白金の髪に透き通った白肌。全てのパーツが左右対称で人形のように整った顔立ち。少し垂れ目だからか、儚げな雰囲気を漂わせている。
まぁ、右手に持っているものが包丁でなければの話なのだが…。
「今日のメニューはホーンラビットの照り焼きなんてどうかしら?淡白なお肉だから油は少ないけど、その分甘辛くしたタレと相性抜群なのよ。んふふ…それに、ちょっと焦がしたお醤油の匂いが…最高なのよね。んふふ…」
作る前から味の想像をしているのか、美しい唇の端がキラキラと輝いている。
「はぁ…アンネリーゼ。取りあえず手に持っている包丁を置いてくれないか。緩みきった顔でお前に包丁を振るわれると…怖いんだ。(色々な意味で)」
緩み切った顔のアンネリーゼを見て、呆れた顔をしながらため息を吐く金髪に赤い瞳をした青年。
彼もまた端正な顔立ちをしているが、アンネリーゼのように整いすぎた神秘的な顔ではなく、十人並みの顔という感じで少しばかり安心感がある。
「一々うるさいわね。別に調理場を誰が使おうがその人の勝手でしょー。神殿の食事は聖女や神官の仕事なんだから。」
大神殿に限らず神殿には料理人はいない。そのため、全ての料理を新人神官や新人聖女が担うのだが、アウローラ大神殿だけは少し違った。
「お前は大聖女なんだぞ!?周りの手本となるように…って聞いているのか!?」
大聖女自ら調理場に立ち嬉々として料理をするからだ。
そのため、他の神殿の人達からは食いしん坊聖女なんて呼ばれているほどである。
「はいはい。聞いていますよ…っと。」
聞いているのか聞いていないのか定かではないアンネリーゼは包丁の刃を上に向け、峰の部分をホーンラビット目掛けて勢いよく振り下ろした。
どうやら肉を叩いて柔らかくするつもりらしい。
「別にいいじゃない。美味しい料理を作れることはとても大切だもの。私達は炊き出しすることだってあるんだし。十分お手本となっているわよ!!ねぇ?そう思うでしょ?」
アンネリーゼが周りを見渡せば、顔を青くしながら上下に素早く顔を振る新人たち。
それもそのはずだ。包丁をドン、ドン、ドンと調理台に叩きつける姿はまさに鬼のようで、しかも聖女を象徴とする白いドレスは赤く染まっているのだから…
さらに顔は作り物のように整っているとくれば、もはやホラーでしかない。
中には腕を擦って暖を取ろうとしている者までいる。
しかしそんなことは気にも留めず、料理を続けるアンネリーゼ。ケルネリウスもまた周りを気にせず、話を続ける。
「あーあー。まぁたそんなに汚して。それ落ちないんだぞ?いつも言っているだろうが…。魔物討伐するときはもう少し慎重に行動するようにと…また新調しないといけないじゃないか!!」
…
……
………
「「「「(いや、魔物討伐って聖女がするの!?!?)」」」」
新人たちの心の声が揃った瞬間だった…。
聞こえていないはずの言葉に反応するように「フフッ」と声を上げるアンネリーゼ。
思わず新人達も聞こえていたのではないかとビクッと肩を揺らした。
「んふ。慎重に行動しないから新調しないといけなくなったって…んふふ…面白いわね。」
…
……
………
「「「「(いや、そっちかーい!!!)」」」」
ツボに入ったのか一人で思い出して笑っているアンネリーゼにたちまちツッコミを入れる新人たち。
それでも怖いから言葉に出すものはいない…
まな板にホーンラビットを置き、そのまま料理を続けるアンネリーゼを見ていると、先ほどまで瘴気を放っていたはずのホーンラビットは浄化されたのかキラキラ輝くお肉に早変わりしていく。
「いい艶に弾力ね。新鮮な証拠だわ。」
肉を撫でながらうっとりする姿はまさに宝石を見つけて喜ぶお嬢様のようだ。
その姿を見た新人たちは男女問わず頬を赤くした。
昔からアンネリーゼは食材や料理が絡むと艶っぽい顔をする。その姿をみて自分のことが好きなのではないかと勘違いした人は数知れず…。
「大聖女になったらあんな事も出来るのね…。」
アンネリーゼの様子を見ていた聖女見習いがボソリと呟く。
彼女もまたアンネリーゼに魅せられた1人だった。
見習いの声が聞こえていたのか、ケルネリウスが見習いの肩に手を置いてから首を左右に軽く振った。
「いや、あれが出来るのは、アンネリーゼだけだ。他の者には出来ない。あいつは天才だからな…教えてもらおうと思っても無駄だ。今まで何人もの見習いたちが彼女に魅せられ挑戦したが…数日も経たずに挫折していたからな。」
諦めるように話すケルネリウス。いつも一緒にいるからかやたら説得力があるのは気の所為ではないだろう。
ルシフェール国を含むゴエティア大陸の周りには昔から隣人と言われる魔物や魔人がいる。
隣人と言えば聞こえはいいが、実際はそんなにいいものではない。
魔物や魔人は瘴気を発していて、生物が瘴気を取り込み過ぎれば魔物や魔人に堕ちる可能性がある。そして、一度魔物や魔人堕ちしてしまえば、元に戻ることはなく自分の意思に関係なく人々を襲ってしまうのだ。
そんな時に魔物討伐や魔人討伐を請け負うのが聖女と神官でありながら騎士でもある神官騎士だ。
聖女や神官は被害を受けた街の治癒をメインに行い、炊き出しなどをする。
中聖女になれば神から別のスキルを授かることが出来るが、それぞれスキルは違い同じものを授かることはほとんどない。
そして神官騎士は魔物の討伐へと向かう。神官騎士はスキルの代わりに瘴気に強い強靭な肉体を得る。
聖女や神官にも位が存在していて、聖女は大聖女から始まり中聖女、聖女、聖女見習いと続いていく。神官に関しては大神官、神官騎士、神官、神官見習いとなる。
聖女見習いから聖女へ上がることは毎日祈りを欠かさなければ難しいことではないのだが、大聖女になるのはとても難しい。そのため大聖女は数が少なく、王都や大きな領地に1人ずつ配属されるほどしかいない。
そしてその中の一人がアンネリーゼだ。
さすがに歴代トップクラスの聖女と言うだけあり、その実力は折り紙付きだ。
王都には王侯貴族も多く滞在しているため、大聖女が数名常駐するのが決まりになっているが、アンネリーゼの場合は1人で全てが対応可能。そのお陰で他の所に大聖女を配属できるようになり、以前よりもルシフェール国全体を瘴気から護れるようになっていた。
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