荒地に配属された食いしん坊聖女。いつの間にかラスボス認定されていたようです。

ゆずこしょう

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食いしん坊聖女。荒地を開拓する①~水田づくり~

用水路を作ろう!

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「じゃあ、まずは田んぼ作りからだけど……一番の問題は水だと思うの。」


田んぼを作るには大量の水が必要だ。しかも、ここは荒地セルフィエル。


水源ひとつ取っても、瘴気に汚染されている。


では、どうすればいいのか。


『僕にとってはそんなに違いが分からないけどな……そんなにこの地は瘴気に汚染されているのかい?』


オリザールスは私の説明を聞いても、あまり腑に落ちていないようだった。


それも無理はない。だって、オリザールスは魔物なのだから。


「えぇ……ここは人が生きるには難しいと言われているわ。私たちが生きていられるのは、瘴気に耐性があるからよ。」


なぜ自分たちに瘴気への耐性があるのか、ここに来ることになった経緯などを簡単に説明すると、話を聞いていたオリザールスはまた涙を流した。


『そんな……ひどいじゃないか。濡れ衣もいいところだ。この世界にもいるんだな、クズなやつが……』


オリザールスの言葉に、何か過去にあったのだろうと感じたが、話が逸れてしまうと先に進めなくなるため、そのまま続ける。


「ふふ……どこにだって存在するわ。でも私は、ここに来られてよかったと思ってるの。自由に生活できるし、オリザールス、あなたにも会えた。それにね……んふふ……美味しい魔物がたくさんいるんだもの!こんなに幸せなことはないわ!」


「美味しい魔物」と言われた瞬間、先ほどまで元気に揺れていたオリザールスの頭の稲が一気にしおれた。


(……気持ちは分かるぞ、オリザールス)


ケルネリウスが肩をポンポンと叩くと、オリザールスは彼の方を見て頷いた。


そして、そんなことは気にせず、アンネリーゼは話を続ける。


「でね、話を戻すけど……ここに用水路を作ろうと思うの!」


用水路とは、雨や川の水をためておく場所。それを生活用水や農業用水として循環させる仕組みだ。


「用水路?」


ケルネリウスの問いに、アンネリーゼはこくりと頷き、地面に絵を描きながら説明を始める。


「そう!今までは井戸水を使っていたでしょ?畑くらいならそれでも間に合っていたけど、水田まで作るとなると、井戸水だけじゃ足りないわ。だから、水田や農作物の水は用水路で賄うの。しかも穴にはうってつけの場所あるじゃない?」


川の近くに、大きな水槽のようなものを作り、そこに水をためるのだが、穴を初めから掘るにはかなりの時間を要する。


そこで思い浮かんだのが…



「もしかして…クラーブンがいた穴か?」



「そう!……大正解!!クラーブンがいた穴を使うの!!」


クラーブンがいたのは、ここから少し上流に上った川の分岐点あたり。そこを川と繋げて水が流れ込むようにすれば、自然と水がたまっていく仕組みだ。


「確かに、川の分岐点の近くだったな…」


50メートル四方に広がるたくさんの穴。それらを繋げれば、十分な貯水スペースになる。


「そう!しかも、毎回かなり深くまで潜っていたから、ある程度の深さもあるはずよ!」


ハサミだけを出して、体は潜ったまま。中を覗いてもクラーブンの姿が見えなかったことから、深さも申し分ない。
それなら、用水路として使うのも問題ないだろう。


「あとは、水を浄化できるかだけど……そこは私に任せてほしいの」


クラーブンを倒したときに得た魔石は20個。大きさも十分。


浄化にどれくらいかかるかは未知数だが、クラーブンを食べてからすでに3ヶ月が経っている。ある程度は浄化が進んでいるはずだ。


ケルネリウスも、アンネリーゼの意図を理解したのか、「わかった」と頷いた。


そして、役割分担の話へと移る。


「オリザールスには田んぼを作ってほしいの。田植えができるくらいまで稲を育ててちょうだい。一人じゃ大変だと思うから、信用できる人を呼ぶわ!」


『わかった。でも……いいのかい?僕のことを他の人に話してしまって』


「大丈夫よ!そこは安心して!!」


親指を立ててウィンクするアンネリーゼは、自信に満ち溢れていた。その姿を見て、オリザールスも安心したのか、しおれていた稲がまたゆさゆさと揺れ始めた。


どうやらこの熊は、気持ちをすべて稲で表現するようだ。


その姿を見たアンネリーゼは一人「わかりやすくていいわね…」と思っていたのだった。



***



そしてそれから数ヶ月――

何とか用水路が完成し、田んぼに水を流せるよう水車も設置された。


だが、ひとつだけうまくいっていないことがあった。


それは、水の浄化だった。


アンネリーゼは魔石を使って水の浄化を試みていた。


クラーブンから得た魔石は20個。瘴気の浄化には十分なはずだった。


しかし――


「……おかしいわね。瘴気は吸っているはずなのに、なかなか浄化されないわ…」


魔石を見る限り、機能はしている。だが、それ以上に瘴気が溜まる速度が異常に速かった。


通常、瘴気をまとった魔石は紫色をしている。浄化が進むと、ガラスのように透明になる。


そのため、魔石の交換時期は色を見ればすぐに分かるのだが――


普段なら1ヶ月は持つはずの魔石が、3日と経たずに紫色へと変化していく。


(瘴気が多すぎるということかしら……それとも、この川に瘴気を放っている“何か”がいるのか…)


なかなか浄化されない水を不審に思い、川を覗き込んだその時――


水底から、ぬるりと黒い影が現れた。


それは、全長15メートルを超える巨大な鰻だった。


体は瘴気の膜に覆われ、目は赤く光り、口元には鋭い牙が並んでいる。


「えっ!? 鰻じゃない!!」


普通なら、巨大な魔物を見た人間は恐怖で逃げ出すところだろう。


だが、アンネリーゼは逆だった。


目をぎらつかせ、舌をぺろりと舐める。


(んふふ……今晩のご飯はあれで決まりね!!)


そう言って、鰻用の大きな目打ちと、鰻裂き包丁を取り出したのだった。
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