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食いしん坊聖女。荒地を開拓する①~水田づくり~
稲熊オリザールスとの出会い。
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アンネリーゼが混乱していると、熊がこちらに向かってゆっくりと歩いてきた。
どうやら、誰かがいることに気づいたようだ。
(あれ……よく見ると、頭だけじゃなくて背中にも稲ができてるじゃない……えっと……本当、どういうこと?)
熊という生き物を見るのが初めてのケルネリウスは、これが普通だと思っているようで、特に驚いた様子もない。だ
が、アンネリーゼは違った。
だって、熊と稲が合体しているのだ。
一体どうしたらそんなことになるのか。混乱してしまうのも無理はない。
熊を見て怖気づいているとでも思っているのか、ケルネリウスは臨戦態勢に入るよう叫び続ける。
「おい……どうした!? あいつに攻撃されたらひとたまりもないぞ! せめて攻撃を避ける準備はしておいてくれ!!」
…
……
………
目の前の光景があまりにも現実離れしていて、言葉が出ないまま立ち尽くしていると、いつの間にか熊は目の前まで来ていた。
(魔物が出るってだけでファンタジーなんだから、稲と熊が合体してるくらい、ある……のかも)
何とか自分を納得させると、私は相棒の包丁を左右の手に一本ずつ握り、臨戦態勢に入った。
「ごめんなさい! あまりの出来事に少しびっくりしてしまったのよ。もう大丈夫!!」
ケルネリウスに声をかけると、包丁を持ったことで安心したのか、彼もいつでも攻撃できるように構えの姿勢を取った。
“ヴォー!!”
低い声を上げながら手を高く掲げる熊に対し、私は左足を後ろに引き、姿勢を低くしていつでも動けるように備える。
すると――
熊が低い姿勢になり、まるで土下座のようなポーズを取った。
頭の上にできた稲と背中の稲が、ワサッとアンネリーゼの方へ倒れてくる。
「え……? 土下座?」
見た目にそぐわない、日本人らしい仕草に思わず笑ってしまう。
「……ぷっ……」
どうやら、この熊は戦うつもりはないらしい。
「あなた……もしかして、戦いたくないの?」
そう尋ねると、熊は頭を上下に振った。
そのたびに、頭の上の稲がわさわさと揺れるのだから、もうおかしくて仕方がない。
どうやらこの熊、言葉は理解できるようだ。
「そう……あなたは一体、何者なの?」
そう聞くと、熊は少し考えてから地面に何かを書き始めた。
『信じてもらえないかもしれないが、僕は別の世界の人間だったような気がする。いや、もしかしたらこの世界の人間だったのかもしれない……覚えていないんだ』
この世界とは違う言語で、すらすらと文字を書く熊。
しかもその文字は、アンネリーゼにとって見覚えのある――
日本語だった。
それにしても不思議だ。なぜ文字は日本語なのに、アンネリーゼたちが話している言葉が通じるのか。
日本での記憶しかない転生者であれば、日本語しか分からないはずなのに……
少し考えていると、ふとあることに気が付いた。
「ケルネリウス。地図を出してほしいの。お兄様が『何かあったときに見るように』って言っていた地図を!!」
目の前の熊の行動に驚いていたケルネリウスだったが、アンネリーゼの言葉に我に返り、すぐに地図を取り出した。
…
……
………
「やっぱりね…」
地図を開いてみると、アンネリーゼは一人納得したように呟いた。
ケルネリウスと熊は意味が分からないとばかりに同じへと首を傾げる。
それにしても、頭に稲が生えているのは重そうだ…。
「アンナ、どういうことか説明してくれ」
「えぇ…これはまだ私の仮説だから、本当かは分からないけど――この熊さんは、元々人だったのではないかしら」
アンネリーゼの推測はこうだ。
今では荒地となり何も残っていないこの地は、かつてセルフィエル帝国のウリエール領だった。
そしてウリエール領主の血縁には、時折アンネリーゼのように前世の記憶を持つ子供が生まれる。
「きっと、あなたもウリエール領主の血縁だったのね…」
ウリエール領主は最後までこの地に残ったとされており、逃げ延びたのは血縁の女性だけだったという。
「熊になってしまった理由は分からないけど…何かしらの理由があると思うの。だけど熊になったからこそ、他の人とは違って生き延びることができたのだと思うわ」
この瘴気に満ちた土地で生き残れる人間などいない。もし生きていたとしても、魔物の餌食になっていたことは間違いないだろう。
『そうか…僕は人間だったのか…。もしよかったら、僕を殺さないでくれないか?その代わり、この稲をあげるから』
熊が頭をわさわさと揺らすと、籾がたくさん落ちてきた。どうやら本当にくれるつもりらしい。
攻撃性のない熊を見て、ケルネリウスも安心したのか剣を収める。アンネリーゼもいつの間にか包丁をしまい、瞳をキラキラと輝かせていた。
「もしかして、あなたみたいに言葉が通じる魔物が他にもいるのかしら?そう思ったら、楽しみが増えるわね!あなたは話せないみたいだけど、中には話せる魔物もいるかもしれないし…リースもそう思わない?」
突然話を振られたケルネリウスだったが、元々研究好きな彼は、子供がおもちゃを見つけたときのような瞳で熊を見つめていた。
「あぁ…そうだな。ぜひ研究させてほしい!そのためには…」
ケルネリウスは顎に手を当てて考え込み、何か閃いたのか指をパチンと鳴らした。
「そうだ!君が稲とやらの畑を作るのはどうだい?」
その提案に、アンネリーゼも即座に賛同する。
「いいわね!あなたを“田んぼ隊長”に任命するわ!ちょうど用水路を作ろうと思っていたし、あなたのような用心棒がいてくれるなら、田んぼも安心だもの!」
熊は目に涙を浮かべながら「ヴォーヴォー」と感極まったように泣き出した。
『ありがとう。立派な田んぼを作ってみせるよ』
「こちらこそありがとう。名前がないと不便だから…“オリザールス”というのはどうかしら?“稲熊”でもいいんだけど、どっちがいい?」
「いや、どう見たってオリザールス一択だろう」
ケルネリウスの言葉に、熊――いや、オリザールスは力強く頷いた。
こうして、オリザールスによるおいしい稲作事業が、ここに正式に始まったのだった。
どうやら、誰かがいることに気づいたようだ。
(あれ……よく見ると、頭だけじゃなくて背中にも稲ができてるじゃない……えっと……本当、どういうこと?)
熊という生き物を見るのが初めてのケルネリウスは、これが普通だと思っているようで、特に驚いた様子もない。だ
が、アンネリーゼは違った。
だって、熊と稲が合体しているのだ。
一体どうしたらそんなことになるのか。混乱してしまうのも無理はない。
熊を見て怖気づいているとでも思っているのか、ケルネリウスは臨戦態勢に入るよう叫び続ける。
「おい……どうした!? あいつに攻撃されたらひとたまりもないぞ! せめて攻撃を避ける準備はしておいてくれ!!」
…
……
………
目の前の光景があまりにも現実離れしていて、言葉が出ないまま立ち尽くしていると、いつの間にか熊は目の前まで来ていた。
(魔物が出るってだけでファンタジーなんだから、稲と熊が合体してるくらい、ある……のかも)
何とか自分を納得させると、私は相棒の包丁を左右の手に一本ずつ握り、臨戦態勢に入った。
「ごめんなさい! あまりの出来事に少しびっくりしてしまったのよ。もう大丈夫!!」
ケルネリウスに声をかけると、包丁を持ったことで安心したのか、彼もいつでも攻撃できるように構えの姿勢を取った。
“ヴォー!!”
低い声を上げながら手を高く掲げる熊に対し、私は左足を後ろに引き、姿勢を低くしていつでも動けるように備える。
すると――
熊が低い姿勢になり、まるで土下座のようなポーズを取った。
頭の上にできた稲と背中の稲が、ワサッとアンネリーゼの方へ倒れてくる。
「え……? 土下座?」
見た目にそぐわない、日本人らしい仕草に思わず笑ってしまう。
「……ぷっ……」
どうやら、この熊は戦うつもりはないらしい。
「あなた……もしかして、戦いたくないの?」
そう尋ねると、熊は頭を上下に振った。
そのたびに、頭の上の稲がわさわさと揺れるのだから、もうおかしくて仕方がない。
どうやらこの熊、言葉は理解できるようだ。
「そう……あなたは一体、何者なの?」
そう聞くと、熊は少し考えてから地面に何かを書き始めた。
『信じてもらえないかもしれないが、僕は別の世界の人間だったような気がする。いや、もしかしたらこの世界の人間だったのかもしれない……覚えていないんだ』
この世界とは違う言語で、すらすらと文字を書く熊。
しかもその文字は、アンネリーゼにとって見覚えのある――
日本語だった。
それにしても不思議だ。なぜ文字は日本語なのに、アンネリーゼたちが話している言葉が通じるのか。
日本での記憶しかない転生者であれば、日本語しか分からないはずなのに……
少し考えていると、ふとあることに気が付いた。
「ケルネリウス。地図を出してほしいの。お兄様が『何かあったときに見るように』って言っていた地図を!!」
目の前の熊の行動に驚いていたケルネリウスだったが、アンネリーゼの言葉に我に返り、すぐに地図を取り出した。
…
……
………
「やっぱりね…」
地図を開いてみると、アンネリーゼは一人納得したように呟いた。
ケルネリウスと熊は意味が分からないとばかりに同じへと首を傾げる。
それにしても、頭に稲が生えているのは重そうだ…。
「アンナ、どういうことか説明してくれ」
「えぇ…これはまだ私の仮説だから、本当かは分からないけど――この熊さんは、元々人だったのではないかしら」
アンネリーゼの推測はこうだ。
今では荒地となり何も残っていないこの地は、かつてセルフィエル帝国のウリエール領だった。
そしてウリエール領主の血縁には、時折アンネリーゼのように前世の記憶を持つ子供が生まれる。
「きっと、あなたもウリエール領主の血縁だったのね…」
ウリエール領主は最後までこの地に残ったとされており、逃げ延びたのは血縁の女性だけだったという。
「熊になってしまった理由は分からないけど…何かしらの理由があると思うの。だけど熊になったからこそ、他の人とは違って生き延びることができたのだと思うわ」
この瘴気に満ちた土地で生き残れる人間などいない。もし生きていたとしても、魔物の餌食になっていたことは間違いないだろう。
『そうか…僕は人間だったのか…。もしよかったら、僕を殺さないでくれないか?その代わり、この稲をあげるから』
熊が頭をわさわさと揺らすと、籾がたくさん落ちてきた。どうやら本当にくれるつもりらしい。
攻撃性のない熊を見て、ケルネリウスも安心したのか剣を収める。アンネリーゼもいつの間にか包丁をしまい、瞳をキラキラと輝かせていた。
「もしかして、あなたみたいに言葉が通じる魔物が他にもいるのかしら?そう思ったら、楽しみが増えるわね!あなたは話せないみたいだけど、中には話せる魔物もいるかもしれないし…リースもそう思わない?」
突然話を振られたケルネリウスだったが、元々研究好きな彼は、子供がおもちゃを見つけたときのような瞳で熊を見つめていた。
「あぁ…そうだな。ぜひ研究させてほしい!そのためには…」
ケルネリウスは顎に手を当てて考え込み、何か閃いたのか指をパチンと鳴らした。
「そうだ!君が稲とやらの畑を作るのはどうだい?」
その提案に、アンネリーゼも即座に賛同する。
「いいわね!あなたを“田んぼ隊長”に任命するわ!ちょうど用水路を作ろうと思っていたし、あなたのような用心棒がいてくれるなら、田んぼも安心だもの!」
熊は目に涙を浮かべながら「ヴォーヴォー」と感極まったように泣き出した。
『ありがとう。立派な田んぼを作ってみせるよ』
「こちらこそありがとう。名前がないと不便だから…“オリザールス”というのはどうかしら?“稲熊”でもいいんだけど、どっちがいい?」
「いや、どう見たってオリザールス一択だろう」
ケルネリウスの言葉に、熊――いや、オリザールスは力強く頷いた。
こうして、オリザールスによるおいしい稲作事業が、ここに正式に始まったのだった。
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