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食いしん坊聖女。荒地を開拓する①~水田づくり~
お米が食べたい!!
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「住の部分に関し「住の部分に関しては、だいぶ整ってきたわね」
アンネリーゼたちがプロセルピナ神殿に来てから、早くも3ヶ月が経とうとしていた。
この3ヶ月で上下水道は完成し、神殿の修繕もほぼ終わり、住環境はかなり整ってきている。
来たばかりの頃は、あまりにボロボロで住める状態ではなかったため、一番きれいな部屋にすし詰め状態で雑魚寝していたが、今ではそれも解消され、2人1部屋、もしくは1人1部屋が割り当てられるようになっていた。
「畑の野菜も、そろそろ食べ頃よね…」
エリザベッタに頼んで、神殿の裏に小麦や枝豆、その他いくつかの野菜の苗を植えたが、順調に育ち、もうすぐ収穫できるところまで来ていた。
小麦が収穫できれば、主食であるパンやパスタには困らないし、枝豆が育てば大豆が作れる。そうすれば味噌や醤油なども、今まで通り作ることができるだろう。
(こういう時は便利よね、業務用冷蔵庫って…時間を早めたりできるんだから)
初めは「食材の時間を早めたり止めたりできるって、何の意味があるの?」と思っていたアンネリーゼだったが、前世の記憶を頼りに答えを導き出した。
時間を早められるということは、食材を早く腐らせることができるということ。つまり、発酵食品が作れるということだ。発酵食品といえば、チーズ、納豆、味噌、醤油、お酒…と、頭の中で連想ゲームを繰り広げた。
そして試しに作ってみたのがチーズだった。
温度調節もでき、発酵時間を早めてくれる業務用冷蔵庫は、思っていた以上に役に立った。
チーズの種類によって発酵期間は異なるが、1ヶ月かかるものも、1年かかるものも、すべて1時間で作ることができた。
それを知ったアンネリーゼは、いろいろ試してみて、味噌や醤油を作ることにも成功していた。
だが、そんなアンネリーゼにも一つだけ不満があった。
「う~…お米が食べたいわね~」
この世界に来てから14年。未だにお米に出会っていない。
初めの頃はパンもカチカチで食べられたものではなかったが、それは酵母菌を作ることでなんとか解決した。
だが…やはり元日本人。
どうしてもお米が恋しくなってしまうものだ。
「セルフィエルに稲があったりしないかしらね」
稲さえあればなんとかなるのだが…そう簡単に見つかるものではないことは分かっている。
「ん…?稲とはなんだ?」
「ん~…麦に少し似てるんだけど…」
……
………
…………
「…って、なんでいるのよ!?びっくりしたじゃない!!」
ずっと執務室に一人だったので、気にせず独り言を話していたつもりが、知らない間にケルネリウスが入ってきていたらしい。
「いや、何度かノックして声もかけたんだが、反応がなくてな。何かあったんじゃないかと思って入ってきたが…ど
うやら心配するようなことはなかったようだ」
ふっと口角を上げながら髪をかき上げるケルネリウスを見て、「様になってるなぁ」と思うアンネリーゼ。
まぁ、かっこいい兄がいると、トキメキのひとつもないのだが…。
「そう…全然気づかなかったわ」
「で?稲とはなんなんだ?きっとアンナのことだ、食べる物なんだろ?」
さすが相棒。よく分かっていらっしゃる。
「稲はね、小麦に似てるんだけど、粉にはしないで粒のまま食べるの。そのままだと固くて食べられないんだけど、
とある方法で調理すると…んふふ…」
白米を想像しながら話していると、味を思い出して思わずニヤけてしまう。
その姿を見たケルネリウスは、首を横に振りながら小さくため息をついた。
「…はぁ。で…調理するとなんだ?」
昔からアンネリーゼは、ご飯の話になると途中で変な笑いを出して話が止まる。
恐らく…一人で想像しては、想像の中で味を楽しんでいるのだろう。
今もまさにその状態だ。
「ふ…ふふ…。んふふ…ごめんね。それでどこまで話したかしら…んーっと。そう!甘くてすごく美味しいのよ!!」
どこまで話したか分からなくなると、適当に話を終わらせる。
だが、ケルネリウスはそれ以上話を聞こうとはしなかった。
なぜなら…聞いたところで、それ以上は話そうとしないからだ。
「…そうか。それは少し興味があるな。じゃあ、今日もその稲とやらを探しにセラフィエルを歩いてみるか!!」
執務室に缶詰状態では気が滅入るだろうと、ストレス発散がてら魔物討伐に誘えば、アンネリーゼは満面の笑みを浮かべる。
「そうね!!それはいいわ。ついでにこの辺にある植物も見ていきましょう」
荒地といっても更地とは違う。
そのため、場所によっては木々が鬱蒼と生い茂っているところがほとんどだ。
中には、まっさらな状態で何も生えていないような場所もあるが…。
二人で外に出ると、いつも行ったことのない方向へと歩き出した。
「今日はこっちに行ってみましょうか。この辺りは全部見たし、明日からは馬で遠出してみるのもありかもしれないわね」
人が歩ける距離には限度があるし、時間もかかる。
この辺りを知らずに馬で出かけてしまえば、馬を怪我させてしまいかねない。だからこそ、歩いて探索していた二人だったが、だいぶ土地勘にも慣れてきていた。
「あぁ、そうだな。そろそろ道も分かってきたし、いいんじゃないか?」
ケルネリウスもアンネリーゼの意見に賛成のようで、頷いた。
そして、二人で歩き始めてから1時間――
そろそろ折り返そうとしていた時、少し離れた場所から「ヴォー!!」という重低音が鳴り響いた。
「リース…聞こえた?」
「あぁ、バッチリ聞こえた。行ってみるか?」
アンネリーゼが首を縦に振ると、ケルネリウスは剣を鞘から抜き、いつでも戦えるように構えながら、ゆっくりと前へ進んでいく。
慎重に進んでいくと、先ほどよりも近い位置から「ヴォーッ」という鳴き声と、川のせせらぎのような音が聞こえてきた。
「近いわね…」
川沿いを上流に向かって歩いていくと、見覚えのあるような小さなキラキラと黄金に光る粒が流れてきた。
(えっ…これって、もしかして…)
一瞬、金かと思ったが、金であれば沈むはずだし、流れてくることはないだろう。試しに川に入って粒をすくってみると、それは見事な黄金色をした、米になる前の籾だった。
「うわっ!!まさかお米ちゅあんに会えるなんて!!ちょっとリース、見てちょうだい?この黄金に光り輝いている
のが、お米になる前の籾よ!!こんなところで出会えるなんて……ほんっとうに王都から追放されて良かったわ!」
興奮冷めやらぬまま、籾が流れてくる方へと歩いていくと、川の中に2メートルは超えるだろう大きな熊が立っていた。
しかも、その熊の頭には、なぜだか……稲が実っている。
…
……
………
「えっ!?うそッ!!稲って熊の頭にできるの!?」
思わず大きな声を出して驚いてしまったせいか、熊がこちらを振り返った。
そう――そこにいたのは、まさかの稲ではなく、頭に稲を生やした熊だったのだ。
(えっ!?どういうこと!?熊は熊で、稲は田んぼにできるはずで……えぇぇぇ、ちょっと分からないんだけど~!!)
ケルネリウスが臨戦態勢を取ろうと剣を握り直している間、アンネリーゼの頭の中は、まったく別のことでいっぱいになっていたのだった…。
アンネリーゼたちがプロセルピナ神殿に来てから、早くも3ヶ月が経とうとしていた。
この3ヶ月で上下水道は完成し、神殿の修繕もほぼ終わり、住環境はかなり整ってきている。
来たばかりの頃は、あまりにボロボロで住める状態ではなかったため、一番きれいな部屋にすし詰め状態で雑魚寝していたが、今ではそれも解消され、2人1部屋、もしくは1人1部屋が割り当てられるようになっていた。
「畑の野菜も、そろそろ食べ頃よね…」
エリザベッタに頼んで、神殿の裏に小麦や枝豆、その他いくつかの野菜の苗を植えたが、順調に育ち、もうすぐ収穫できるところまで来ていた。
小麦が収穫できれば、主食であるパンやパスタには困らないし、枝豆が育てば大豆が作れる。そうすれば味噌や醤油なども、今まで通り作ることができるだろう。
(こういう時は便利よね、業務用冷蔵庫って…時間を早めたりできるんだから)
初めは「食材の時間を早めたり止めたりできるって、何の意味があるの?」と思っていたアンネリーゼだったが、前世の記憶を頼りに答えを導き出した。
時間を早められるということは、食材を早く腐らせることができるということ。つまり、発酵食品が作れるということだ。発酵食品といえば、チーズ、納豆、味噌、醤油、お酒…と、頭の中で連想ゲームを繰り広げた。
そして試しに作ってみたのがチーズだった。
温度調節もでき、発酵時間を早めてくれる業務用冷蔵庫は、思っていた以上に役に立った。
チーズの種類によって発酵期間は異なるが、1ヶ月かかるものも、1年かかるものも、すべて1時間で作ることができた。
それを知ったアンネリーゼは、いろいろ試してみて、味噌や醤油を作ることにも成功していた。
だが、そんなアンネリーゼにも一つだけ不満があった。
「う~…お米が食べたいわね~」
この世界に来てから14年。未だにお米に出会っていない。
初めの頃はパンもカチカチで食べられたものではなかったが、それは酵母菌を作ることでなんとか解決した。
だが…やはり元日本人。
どうしてもお米が恋しくなってしまうものだ。
「セルフィエルに稲があったりしないかしらね」
稲さえあればなんとかなるのだが…そう簡単に見つかるものではないことは分かっている。
「ん…?稲とはなんだ?」
「ん~…麦に少し似てるんだけど…」
……
………
…………
「…って、なんでいるのよ!?びっくりしたじゃない!!」
ずっと執務室に一人だったので、気にせず独り言を話していたつもりが、知らない間にケルネリウスが入ってきていたらしい。
「いや、何度かノックして声もかけたんだが、反応がなくてな。何かあったんじゃないかと思って入ってきたが…ど
うやら心配するようなことはなかったようだ」
ふっと口角を上げながら髪をかき上げるケルネリウスを見て、「様になってるなぁ」と思うアンネリーゼ。
まぁ、かっこいい兄がいると、トキメキのひとつもないのだが…。
「そう…全然気づかなかったわ」
「で?稲とはなんなんだ?きっとアンナのことだ、食べる物なんだろ?」
さすが相棒。よく分かっていらっしゃる。
「稲はね、小麦に似てるんだけど、粉にはしないで粒のまま食べるの。そのままだと固くて食べられないんだけど、
とある方法で調理すると…んふふ…」
白米を想像しながら話していると、味を思い出して思わずニヤけてしまう。
その姿を見たケルネリウスは、首を横に振りながら小さくため息をついた。
「…はぁ。で…調理するとなんだ?」
昔からアンネリーゼは、ご飯の話になると途中で変な笑いを出して話が止まる。
恐らく…一人で想像しては、想像の中で味を楽しんでいるのだろう。
今もまさにその状態だ。
「ふ…ふふ…。んふふ…ごめんね。それでどこまで話したかしら…んーっと。そう!甘くてすごく美味しいのよ!!」
どこまで話したか分からなくなると、適当に話を終わらせる。
だが、ケルネリウスはそれ以上話を聞こうとはしなかった。
なぜなら…聞いたところで、それ以上は話そうとしないからだ。
「…そうか。それは少し興味があるな。じゃあ、今日もその稲とやらを探しにセラフィエルを歩いてみるか!!」
執務室に缶詰状態では気が滅入るだろうと、ストレス発散がてら魔物討伐に誘えば、アンネリーゼは満面の笑みを浮かべる。
「そうね!!それはいいわ。ついでにこの辺にある植物も見ていきましょう」
荒地といっても更地とは違う。
そのため、場所によっては木々が鬱蒼と生い茂っているところがほとんどだ。
中には、まっさらな状態で何も生えていないような場所もあるが…。
二人で外に出ると、いつも行ったことのない方向へと歩き出した。
「今日はこっちに行ってみましょうか。この辺りは全部見たし、明日からは馬で遠出してみるのもありかもしれないわね」
人が歩ける距離には限度があるし、時間もかかる。
この辺りを知らずに馬で出かけてしまえば、馬を怪我させてしまいかねない。だからこそ、歩いて探索していた二人だったが、だいぶ土地勘にも慣れてきていた。
「あぁ、そうだな。そろそろ道も分かってきたし、いいんじゃないか?」
ケルネリウスもアンネリーゼの意見に賛成のようで、頷いた。
そして、二人で歩き始めてから1時間――
そろそろ折り返そうとしていた時、少し離れた場所から「ヴォー!!」という重低音が鳴り響いた。
「リース…聞こえた?」
「あぁ、バッチリ聞こえた。行ってみるか?」
アンネリーゼが首を縦に振ると、ケルネリウスは剣を鞘から抜き、いつでも戦えるように構えながら、ゆっくりと前へ進んでいく。
慎重に進んでいくと、先ほどよりも近い位置から「ヴォーッ」という鳴き声と、川のせせらぎのような音が聞こえてきた。
「近いわね…」
川沿いを上流に向かって歩いていくと、見覚えのあるような小さなキラキラと黄金に光る粒が流れてきた。
(えっ…これって、もしかして…)
一瞬、金かと思ったが、金であれば沈むはずだし、流れてくることはないだろう。試しに川に入って粒をすくってみると、それは見事な黄金色をした、米になる前の籾だった。
「うわっ!!まさかお米ちゅあんに会えるなんて!!ちょっとリース、見てちょうだい?この黄金に光り輝いている
のが、お米になる前の籾よ!!こんなところで出会えるなんて……ほんっとうに王都から追放されて良かったわ!」
興奮冷めやらぬまま、籾が流れてくる方へと歩いていくと、川の中に2メートルは超えるだろう大きな熊が立っていた。
しかも、その熊の頭には、なぜだか……稲が実っている。
…
……
………
「えっ!?うそッ!!稲って熊の頭にできるの!?」
思わず大きな声を出して驚いてしまったせいか、熊がこちらを振り返った。
そう――そこにいたのは、まさかの稲ではなく、頭に稲を生やした熊だったのだ。
(えっ!?どういうこと!?熊は熊で、稲は田んぼにできるはずで……えぇぇぇ、ちょっと分からないんだけど~!!)
ケルネリウスが臨戦態勢を取ろうと剣を握り直している間、アンネリーゼの頭の中は、まったく別のことでいっぱいになっていたのだった…。
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