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食いしん坊聖女。荒地を開拓する①~水田づくり~
不穏な空気。
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「アンナたちがセルフィエルに行ってから、もう3ヶ月か……」
ふとカレンダーに目をやると、つい先日まで8月だったはずが、いつの間にか11月に変わっていた。
この3ヶ月間、ダミアンはラファリエール公爵直轄地の貴族たちを集めて会議を開いたり、王都の情報を集めたりと、慌ただしい日々を過ごしていた。
書類仕事を終え、少し休もうと紅茶に手を伸ばすと、先ほど淹れてもらったばかりの紅茶はすっかり冷めていた。
「もう、そんな時期か……」
ルシフェール国全体には四季があるが、ラファリエール公爵領だけは少し事情が異なる。
春や秋といった過ごしやすい季節はほとんど存在せず、暑いか寒いかの二択。そして冬の大半は雪に覆われからだ。
冷めた紅茶を一口飲み、ひと息ついていると、扉を叩く音が聞こえた。
「父上、イアンです。お話があります」
「入れ」
短く許可を出すと、アンネリーゼの兄・イアンが書斎へと入ってきた。
「すみません、お休み中でしたか?」
紅茶のカップに手を添えていたのが見えたのか、イアンは少し眉尻を下げ、申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「いや、そろそろ仕事を再開しようとしていたところだ。で、王都の情報に何か進展はあったか?」
「はい……実は、アンネリーゼが“厄災”だと言われています」
アンネリーゼが王都を離れてから、すでに半年近くが経過していた。
その間に王都は大きく様変わりしていた。
まず一つ目は、魔物の大量発生。
初めのうちはムスクルスやホーンラビットなど、Dランクの小物ばかりだったが、最近ではBランク以上の魔物もちらほら現れている。とはいえ、これまでもBランク以上の魔物が出現していた可能性はある。ただ、アンネリーゼたちが被害が出る前に倒していたため、誰も気づいていなかったのだろう。
そして二つ目は、瘴気汚染。
この半年で王都の瘴気は増加し、生活するのもギリギリの状態になっていた。
それもそのはず――
アンネリーゼと共にいた聖女たちは、皆プロセルピナ神殿へと移っていて、現在アウローラ大神殿に残っている聖女は、レリアのみ。
しかも、エルネストが何も知らずに彼女を大聖女に任命したため、彼女には大聖女としての力がない。
さらに言えば、聖女が使える浄化の力を持っているかも不明で、毎日欠かさず祈りを捧げているかどうかも分からない。
「はぁ……厄災か。アンネリーゼは何もしていないのだがな」
半年間でこれだけの異変が起きれば、厄災と呼ばれるのも無理はない。しかし、それをすべてアンネリーゼのせいにするのは、あまりにも理不尽だ。
そもそもアンネリーゼは、エルネストの命令で王都を追放されたに過ぎない。
「はい。俺もそこが不思議でした。なぜアンネリーゼが厄災などと呼ばれているのか……そこで王都の人々に話を聞いてもらったんです」
ラファリエール公爵家が動いていると知られれば不審がられると思ったイアンは、キャスバルの兄・バルトルト・ガブエーラに頼み、王都で情報収集を行った。
「皆、大聖女が変わったことは知らないようでした。それどころか……この半年、アンネリーゼがアウローラ大神殿に男を連れ込んでいるという噂まで……」
……
………
…………
重たい空気が二人の間に流れる。
たった数秒の沈黙が、まるで数分にも感じられた。
ダミアンも、なんとなく予感はしていた。ただ、実際に話を聞くのと、想像するのとでは訳が違う。心を落ち着けるため、冷めきった紅茶を一気に飲み干した。
「……そうか」
恐らく、アンネリーゼが王都を離れたことを知っているのは、王族とラファリエール公爵領の貴族だけなのだろう。
それ以外の人々は、アンネリーゼが職務を怠り、男遊びをしていると思い込んでいる。
(本当に……何も変わらないんだな、エドワーズよ)
エドワーズ・ルシフェール。
ルシフェール国の国王であり、エルネストの父。そしてダミアンの従兄弟でもある。
ウリエーラ家には前世の記憶を持つ者が時折生まれるが、ラファリエール家にも同様に、治癒や浄化の力を持って生まれる者がいる。
ダミアンの父は双子で生まれ、妹はその力を持っていた。
それを知ったルシフェール王家は、妹をアウローラ大神殿に閉じ込め、無理やり王族と結婚させた。
そして生まれたのが、エドワーズというわけだ。
歳も近く、何かと比べられて育った二人だが、エドワーズは常にダミアンに突っかかり、何かあれば彼のせいにするなど、様々な嫌がらせをしてきた。
今回の件も、その延長線上にあるのだろう。
「そろそろ限界だな……このまま放っておいても、ルシフェール国はやがて滅びるだろうが、その前にラファリエール公爵家は独立しておきたいところだ」
アンネリーゼがアウローラ大神殿にいた頃は、人質のような立場だったが、今は違う。
「そうですね……それにしても王族は、何も知らずにアンナを手放したんですね。思わず『ざまぁみろ!』と心の中で叫んでしまいましたよ。ハハハ」
イアンの言葉に、ダミアンも「確かにな……」と笑う。
実はアンネリーゼには前世の記憶だけでなく、浄化の力も備わっていた。
だが、本人はその力を持っていることを知らない。
というのも、毎日神殿で祈りを捧げていれば、自然と浄化の力が身につくからだ。
そのため、力の存在を知っているのは家族だけ。もしかすると、毎日一緒に暮らしているキャスバルたちは気づいているかもしれない。
アンネリーゼ自身は、「毎日祈っていたから大聖女になれたのね」くらいにしか思っていない。
他の大聖女と比べて力が強すぎることも、「特性よね」と気にも留めていないだろう。
だからこそ、当然なのだ。
アンネリーゼがいなくなれば、王都が瘴気に覆われるのは――
「さて、王家に手紙を書くとするか……」
先ほどまで重たい表情をしていたダミアンだったが、手紙を書き始めると、少し晴れやかな顔つきになっていた。
***
一方…その頃の王都では…
「な、なぜなんだ!!一体どうなっている!?なんでここにSランクの魔物が現れる!!」
ムルクルスが進化したラットキングが現れていた…
「大聖女は何しているんだ!!早く呼んでこい…」
そしてそんな事を知らないアンネリーゼは
「お米を食べたいから作りましょう!!」
と言って一人田んぼ作りに精を出していた。
ふとカレンダーに目をやると、つい先日まで8月だったはずが、いつの間にか11月に変わっていた。
この3ヶ月間、ダミアンはラファリエール公爵直轄地の貴族たちを集めて会議を開いたり、王都の情報を集めたりと、慌ただしい日々を過ごしていた。
書類仕事を終え、少し休もうと紅茶に手を伸ばすと、先ほど淹れてもらったばかりの紅茶はすっかり冷めていた。
「もう、そんな時期か……」
ルシフェール国全体には四季があるが、ラファリエール公爵領だけは少し事情が異なる。
春や秋といった過ごしやすい季節はほとんど存在せず、暑いか寒いかの二択。そして冬の大半は雪に覆われからだ。
冷めた紅茶を一口飲み、ひと息ついていると、扉を叩く音が聞こえた。
「父上、イアンです。お話があります」
「入れ」
短く許可を出すと、アンネリーゼの兄・イアンが書斎へと入ってきた。
「すみません、お休み中でしたか?」
紅茶のカップに手を添えていたのが見えたのか、イアンは少し眉尻を下げ、申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「いや、そろそろ仕事を再開しようとしていたところだ。で、王都の情報に何か進展はあったか?」
「はい……実は、アンネリーゼが“厄災”だと言われています」
アンネリーゼが王都を離れてから、すでに半年近くが経過していた。
その間に王都は大きく様変わりしていた。
まず一つ目は、魔物の大量発生。
初めのうちはムスクルスやホーンラビットなど、Dランクの小物ばかりだったが、最近ではBランク以上の魔物もちらほら現れている。とはいえ、これまでもBランク以上の魔物が出現していた可能性はある。ただ、アンネリーゼたちが被害が出る前に倒していたため、誰も気づいていなかったのだろう。
そして二つ目は、瘴気汚染。
この半年で王都の瘴気は増加し、生活するのもギリギリの状態になっていた。
それもそのはず――
アンネリーゼと共にいた聖女たちは、皆プロセルピナ神殿へと移っていて、現在アウローラ大神殿に残っている聖女は、レリアのみ。
しかも、エルネストが何も知らずに彼女を大聖女に任命したため、彼女には大聖女としての力がない。
さらに言えば、聖女が使える浄化の力を持っているかも不明で、毎日欠かさず祈りを捧げているかどうかも分からない。
「はぁ……厄災か。アンネリーゼは何もしていないのだがな」
半年間でこれだけの異変が起きれば、厄災と呼ばれるのも無理はない。しかし、それをすべてアンネリーゼのせいにするのは、あまりにも理不尽だ。
そもそもアンネリーゼは、エルネストの命令で王都を追放されたに過ぎない。
「はい。俺もそこが不思議でした。なぜアンネリーゼが厄災などと呼ばれているのか……そこで王都の人々に話を聞いてもらったんです」
ラファリエール公爵家が動いていると知られれば不審がられると思ったイアンは、キャスバルの兄・バルトルト・ガブエーラに頼み、王都で情報収集を行った。
「皆、大聖女が変わったことは知らないようでした。それどころか……この半年、アンネリーゼがアウローラ大神殿に男を連れ込んでいるという噂まで……」
……
………
…………
重たい空気が二人の間に流れる。
たった数秒の沈黙が、まるで数分にも感じられた。
ダミアンも、なんとなく予感はしていた。ただ、実際に話を聞くのと、想像するのとでは訳が違う。心を落ち着けるため、冷めきった紅茶を一気に飲み干した。
「……そうか」
恐らく、アンネリーゼが王都を離れたことを知っているのは、王族とラファリエール公爵領の貴族だけなのだろう。
それ以外の人々は、アンネリーゼが職務を怠り、男遊びをしていると思い込んでいる。
(本当に……何も変わらないんだな、エドワーズよ)
エドワーズ・ルシフェール。
ルシフェール国の国王であり、エルネストの父。そしてダミアンの従兄弟でもある。
ウリエーラ家には前世の記憶を持つ者が時折生まれるが、ラファリエール家にも同様に、治癒や浄化の力を持って生まれる者がいる。
ダミアンの父は双子で生まれ、妹はその力を持っていた。
それを知ったルシフェール王家は、妹をアウローラ大神殿に閉じ込め、無理やり王族と結婚させた。
そして生まれたのが、エドワーズというわけだ。
歳も近く、何かと比べられて育った二人だが、エドワーズは常にダミアンに突っかかり、何かあれば彼のせいにするなど、様々な嫌がらせをしてきた。
今回の件も、その延長線上にあるのだろう。
「そろそろ限界だな……このまま放っておいても、ルシフェール国はやがて滅びるだろうが、その前にラファリエール公爵家は独立しておきたいところだ」
アンネリーゼがアウローラ大神殿にいた頃は、人質のような立場だったが、今は違う。
「そうですね……それにしても王族は、何も知らずにアンナを手放したんですね。思わず『ざまぁみろ!』と心の中で叫んでしまいましたよ。ハハハ」
イアンの言葉に、ダミアンも「確かにな……」と笑う。
実はアンネリーゼには前世の記憶だけでなく、浄化の力も備わっていた。
だが、本人はその力を持っていることを知らない。
というのも、毎日神殿で祈りを捧げていれば、自然と浄化の力が身につくからだ。
そのため、力の存在を知っているのは家族だけ。もしかすると、毎日一緒に暮らしているキャスバルたちは気づいているかもしれない。
アンネリーゼ自身は、「毎日祈っていたから大聖女になれたのね」くらいにしか思っていない。
他の大聖女と比べて力が強すぎることも、「特性よね」と気にも留めていないだろう。
だからこそ、当然なのだ。
アンネリーゼがいなくなれば、王都が瘴気に覆われるのは――
「さて、王家に手紙を書くとするか……」
先ほどまで重たい表情をしていたダミアンだったが、手紙を書き始めると、少し晴れやかな顔つきになっていた。
***
一方…その頃の王都では…
「な、なぜなんだ!!一体どうなっている!?なんでここにSランクの魔物が現れる!!」
ムルクルスが進化したラットキングが現れていた…
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